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サリチル酸合成の中間体化合物の構造と輸送機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K05238
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分39040:植物保護科学関連
研究機関信州大学

研究代表者

加藤 新平  信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (10533614)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
キーワード病害抵抗性 / サリチル酸 / ペルオキシソーム / 中間体化合物 / 輸送機構
研究開始時の研究の概要

サリチル酸 (SA) は植物の病害抵抗反応を制御する植物ホルモンである。研究代表者らはこれまでにタバコのSA合成に必要な酵素を5種類同定し、そのうちの4種類がペルオキシソームに局在することを明らかにしてきた。本研究では、SA合成の中間体化合物を明らかにするため、1) 各酵素遺伝子の発現を抑制した際に蓄積量が増加する化合物を同定するとともに、2) 各酵素の組換えタンパク質を作製し、その基質特異性を解析する。また、5種類の酵素遺伝子と同様の発現パターンを示す輸送体遺伝子の機能を解析することにより、SA合成の中間体をペルオキシソーム内外に輸送する輸送体を同定する。

研究実績の概要

遺伝子の発現抑制および過剰発現が容易なベンサミアナタバコを主な実験材料に用いて、以下の2つの小課題を実施した。
1. サリチル酸 (SA) 合成の中間体化合物の同定
我々が同定したSA合成に必要な5種類の酵素遺伝子 (CNL、CHD、KAT、HSR201、HSR203J) の発現をウイルス誘導性遺伝子発現抑制 (VIGS) で抑制すると、病原体ストレスに応答したSA蓄積量が減少する。この時、各酵素の基質化合物の蓄積量は反対に増加すると予想される。そのような基質化合物の同定は、1) SA合成が強力かつ特異的に活性化されるほど、2) VIGSによるSA蓄積量の減少が顕著であるほど容易になると期待された。5種類の酵素遺伝子の発現はCBP60型の転写因子により制御されており、CBP60の過剰発現はSAの蓄積を誘導する。また、CBP60はカルモジュリン (CaM) により活性化され、CaMの共発現はCBP60によるSA蓄積を増強する。そこで、CBP60とCaMを融合させた人工転写因子を作製したところ、本人工転写因子の過剰発現は莫大なSA蓄積を誘導した。ゲノムデータの解析より、CNLとKATには1つ、CHDには5つのホモログ遺伝子が存在することが明らかになった。CNLとそのホモログの両方の発現をVIGSで抑制したところ、病原体ストレスに応答したSA蓄積がCNL単独を抑制した場合よりも顕著に減少した。並行して、酵素の基質特異性をin vitroで解析するため、N末端にHisタグが付加されたHSR203Jの組換えタンパク質を作製・精製した。

2. SA合成の中間体化合物をペルオキシソーム内外に輸送する輸送体の遺伝子同定
SA合成に必要な5種類の酵素遺伝子と相関して発現するタバコの遺伝子群の中には、輸送体をコードすると予想される遺伝子が8種類存在する。これら8種類の遺伝子のベンサミアナのホモログ遺伝子を同定し、ホモログ遺伝子の発現が病原体ストレスにより誘導されることを確認した。また、VIGSに用いるウイルスベクターを構築した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

小課題1では、SA合成を強力に活性化する人工転写因子を作製することに成功した。また、ゲノムデータより各酵素遺伝子のホモログ遺伝子を同定し、CNLとそのホモログの両方を抑制すると、CNL単独を抑制するよりも顕著に病原体ストレスに応答したSA蓄積が減少することを明らかにした。これらの成果はCNLおよび残り4種の酵素の基質化合物を明らかにするのに有用である。並行して、酵素の基質特異性の解析に必要なHSR203Jの組換えタンパク質を作製・精製することに成功した。CNL、CHDおよびKATの組換えタンパク質は、既に作製・精製に成功しているため、残りはHSR201のみである。

小課題2では、5種類の酵素遺伝子と相関して発現する8種類の輸送体をコードすると予想されるタバコの遺伝子のホモログをベンサミアナタバコから同定した。また、ベンサミアナのホモログ遺伝子の発現が病原体ストレスにより誘導されることを確認し、VIGSに用いるウイルスベクターを構築した。
以上のことを総合し、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

1. SA合成の中間体化合物の同定
CNLとそのホモログの両方をVIGSで抑制した植物の葉に人工転写因子を発現させ、対照植物よりも蓄積量が増加する化合物をHPLCで探索する。CNLとそのホモログを抑制した植物で面積が増加するピークが同定された場合は、ピークに含まれる化合物をPDAやMS/MSを用いて同定する。CHDおよびKATについては、ホモログ遺伝子がSA合成に関与するか調べる。ホモログ遺伝子がSA合成に関与することが明らかになった場合は、両方の遺伝子を抑制できるウイルスベクターを作製する。HSR201については、基質特異性を調べるための組換えタンパク質を作製・精製する必要があるが、N末端とC末端のどちらにHisタグを付加してもその活性が激減することが報告されている。そのため、組換えタンパク質の発現・精製方法を検討する。並行して、精製した各酵素の組換えタンパク質を用いてその基質特異性を調べる。

2. SA合成の中間体化合物をペルオキシソーム内外に輸送する輸送体の遺伝子同定
作製したウイルスベクターを用いて各輸送体遺伝子の発現をVIGSで抑制し、病原体ストレスに応答したSA蓄積におよぼす影響を明らかにする。SA合成に必要な輸送体遺伝子が同定された場合は、そのタンパク質の細胞内局在や輸送する化合物について詳細に解析する。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] The Peroxisomal β-Oxidative Pathway and Benzyl Alcohol <i>O</i>-Benzoyltransferase HSR201 Cooperatively Contribute to the Biosynthesis of Salicylic Acid2023

    • 著者名/発表者名
      Kotera Yu、Komori Hirotomo、Tasaki Kosuke、Takagi Kumiko、Imano Sayaka、Katou Shinpei
    • 雑誌名

      Plant And Cell Physiology

      巻: 64 号: 7 ページ: 758-770

    • DOI

      10.1093/pcp/pcad034

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] ペルオキシソームのβ酸化系遺伝子ファミリーの遺伝子発現および細胞内局在解析2024

    • 著者名/発表者名
      村田和美、田崎光佑、加藤新平
    • 学会等名
      令和6年度日本植物病理学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ベンサミアナタバコにおいてタバコ野火病菌の感染により引き起こされる上位非接種葉の白色化の解析2024

    • 著者名/発表者名
      中尾有那、竹本大吾、加藤新平
    • 学会等名
      令和6年度日本植物病理学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] HSR201のペルオキシソーム局在のサリチル酸合成における重要性2024

    • 著者名/発表者名
      淺井良佳、小寺由、加藤新平
    • 学会等名
      令和6年度日本植物病理学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] タバコのサリチル酸合成機構2023

    • 著者名/発表者名
      加藤新平、小寺由、田崎光佑、小守啓友、今野沙弥香、髙木公美子
    • 学会等名
      令和5年度 (第57回) 植物感染生理談話会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] サリチル酸合成関連遺伝子ホモログの遺伝子発現および細胞内局在解析2023

    • 著者名/発表者名
      村田和美、田崎光佑、加藤新平
    • 学会等名
      令和5年度 (第57回) 植物感染生理談話会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 5菌株のタバコ野火病菌とベンサミアナタバコの相互作用の比較解析2023

    • 著者名/発表者名
      中尾有那、加藤新平
    • 学会等名
      令和5年度 (第57回) 植物感染生理談話会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] サリチル酸合成に関わるHSR203Jの転写制御機構及び酵素活性制御機構の解析2023

    • 著者名/発表者名
      長田桃歩、石黒夏帆、加藤新平
    • 学会等名
      令和5年度 (第57回) 植物感染生理談話会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 信州大学学術情報オンラインシステム SOAR

    • URL

      https://soar-rd.shinshu-u.ac.jp/search/detail.html?systemId=HmAejFkV&lang=ja

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 信州大学農学部 植物病理学研究室ホームページ

    • URL

      https://shinpei93.wixsite.com/plantpathology

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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