研究課題/領域番号 |
23K05243
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小林 括平 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (40244587)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 植物ウイルス病 / CBP60ファミリー転写因子 / 植物免疫 / 病徴発現 / 重症化 / 細胞死 / 病害発症 / 転写ネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
ウイルスが引き起こす植物病害では,葉の緑色が薄くなったり,黄色くなったりする症状が現れる.これまでの研究から,これらの症状の一部は,植物が病原体から身を守るための「植物免疫」が暴走するために重症化している考えられた.本研究は,ウイルス病の発症に関わる遺伝子のネットワークを明らかにし,その情報を活用して「ウイルス感染しても症状を示さずに収穫が可能な新しい作物」を作り出すための基礎となるものである.
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研究実績の概要 |
本研究では,植物免疫の主要な制御因子として知られるSARD1とCBP60gを含むCBP60ファミリー転写調節因子に注目し,その転写制御ネットワークを解析することによって,植物免疫を損ねることなく,退緑発症に至る経路を遮断することは可能か否かを明らかにする.これら転写因子については,これまでシロイヌナズナにおいて詳細な研究が報告されてきたが,他の植物種におけるそれらの機能については明らかでない.本研究では,これまで多様な病害発症モデルを作出してきたタバコを主な材料とし,これら転写因子の植物免疫における役割を明らかにするとともに,病害発症への関与を解析する. 今年度は,CBP60ファミリー転写調節因子が合成制御に関わると考えられているサリチル酸が病害発症に及ぼす影響を解析し,サリチル酸が病害発症またはその重症化に関与していることを明らかにした.また,SARD1とCBP60gの発現抑制タバコおよび誘導型過剰発現タバコを作出し,これら転写因子が植物ウイルス抵抗性において重要な役割を果たすことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サリチル酸(SA)は,植物の病害応答を含む多様なストレスに対する植物の応答に関与する植物ホルモンである.シロイヌナズナでは,SARD1とCBP60gが発現制御するイソコリスミ酸合成酵素が律速酵素として知られているが,タバコでは,フェニルプロパノイド経路の関与が指摘されているが,その合成経路はいまだ明確ではない.また,タバコにおいてSARD1とCBP60gがSAによって発現誘導されることもすでに確認している.本研究で用いている発症モデルタバコでは,発症を誘導してから8時間後にSAの蓄積が誘導される.そこで,病害発症におけるSARD1とCBP60gの機能解析に先立ち,SA分解酵素遺伝子発現タバコおよびSAシグナル伝達阻害剤を用いて,SAが病害の発症や重症化に果たす役割を解析した.ウイルス抵抗性遺伝子を持つタバコにSA分解酵素遺伝子を導入し,ウイルス抵抗性に対する影響を検討した結果,ウイルス抵抗性の減弱を確認したが,SA蓄積量の減少は認められなかった.発症モデルタバコにおいてもSA分解酵素によるSAの減少は認められなかったが,一部の個体で症状が軽減されることを見出した.SAシグナル伝達阻害剤によっても症状は軽減をされた.このことからSAが病害発症,特にその重症化に関与していると考えられた. SARD1とCBP60gの発現抑制タバコでは,ウイルス抵抗性が著しく低下しており,ウイルスによる全身感染が認められた.このことからこれら転写因子はタバコにおいて病害抵抗性を正に制御していることが示された.しかし,これら転写因子を薬剤処理によって過剰発現するタバコにおいては,抵抗性の増強は認められなかった.ウイルス感染によってこれら転写因子の発現が迅速に誘導されることから,野生型タバコにおいては,ウイルス抵抗性に必要十分な量のこれら転写因子が感染時に発現していることが示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
SARD1とCBP60gの発現抑制タバコにおいて,植物ウイルス抵抗性の減弱が認められたことから,同じ発現抑制系を発症モデルタバコの導入し,これら転写因子が病害の発症・重症化に果たす役割を明らかにする.また,これまで完遂できていないこれら転写因子の遺伝子破壊に取り組み,発症・重症化への貢献度を明らかにする.また,これら転写因子の誘導型過剰発現系では,機能強化は認められなかったが,これはこれらと協調的に機能する他の因子の欠如による可能性も考えられる.エピトープタグを融合したSARD1とCBP60gの誘導発現は確認済みなので,これら誘導過剰発現タバコを用いてこれら転写因子と相互作用する他の因子の探索に取り組む.また,クロマチン免疫沈降による標的遺伝子の探索も実施する.
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