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オス化因子 doublesex の分子進化速度の亢進は性行動の多様性を生み出すか?

研究課題

研究課題/領域番号 23K05255
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分39050:昆虫科学関連
研究機関総合研究大学院大学

研究代表者

渡邊 崇之  総合研究大学院大学, 統合進化科学研究センター, 助教 (70547851)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
キーワード性的二型 / コオロギ / 性行動 / doubesex 遺伝子 / オス型神経回路 / 求愛歌
研究開始時の研究の概要

オスの昆虫が見せるダンスや求愛歌などのオス特異的な行動はオス特異的な神経回路によって制御されると考えられている。求愛行動は種特異性が高いことから、オス特異的な神経回路には大きな種差が存在することが予想できる。本研究では オス化因子である doublesex 遺伝子の分子進化が著しく亢進しているコオロギを材料に、比較/機能ゲノム学、神経行動学的視点から、求愛行動の種特異性の進化メカニズムを解明する。

研究実績の概要

本研究では、コオロギ科昆虫においてオス化因子 doublesex 遺伝子が X 染色体に転座し、その結果 doublesex 遺伝子の分子進化が著しく亢進したことが、コオロギの性特異的行動パターンの多様性が生み出されたのではないか?という仮説を、比較/機能ゲノム学、神経行動学的視点から検証することを目的としている。今年度は、コオロギ doublesex 遺伝子の種特異的エンハンサー領域の探索と、コオロギ doublesex 遺伝子の遺伝子破壊系統の樹立に取り組んだ。前者については、フタホシコオロギ胸部神経節群を対象とした ATAC-seq 解析と doublesex 遺伝子上流配列の種間比較により、フタホシコオロギ doublesex 遺伝子の転写開始点上流 7-8 kbp 領域が doublesex 遺伝子の発現調節に特に重要であろうという結論に至った。一方、後者について、フタホシコオロギを材料に CRISPR/Cas9 法を利用して doublesex null 突然変異系統の作出に成功した。その結果、オスの性染色体構成をもつ突然変異個体が、形態的にはメス化することが確認できた。しかし、この “メス化したオス” 個体の性的指向はオスと同様であったことから、doublesex 遺伝子はオス化因子として機能するものの、脳・神経回路の性差はdoublesex 遺伝子以外の未知の性決定因子の支配下で制御されている、ということが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究は「コオロギにおける doublesex 遺伝子の分子進化速度の亢進は、オス型神経回路の種間多様性を生み出し、求愛歌などのオス特異的行動の多様性を生み出す原動力となった」という作業仮説を検証することを目的としていたが、今年度の研究成果により本研究の主たる仮説について、否定的なものではあるがはっきりとした結論が得られた。また、昆虫神経系の性決定システムについて、これまで知られていない新しいメカニズムが存在することが明らかになったことは非常に重要な成果であると考えている。

今後の研究の推進方策

今年度の研究成果から、コオロギの脳・神経回路の性差はdoublesex 遺伝子以外の未知の性決定因子の支配下で制御されている、ということが明らかとなった。この結果を受けて、本研究の方向性を「コオロギ脳の性差を生み出す未知の性決定因子の同定」へと大幅に修正する。次年度は、昆虫の doublesex 遺伝子の性特異的遺伝子産物を生み出すメカニズムと考えられる性特異的スプライシングについて、コオロギ脳における機能解析を行う予定である。コオロギ脳の性特異的スプライシング因子である transformer 遺伝子に着目し、transformer 遺伝子に依存した性決定システムがコオロギ脳に存在するか否かをゲノム編集法を活用して検証する。もし、transformer 遺伝子の遺伝子破壊により、コオロギ脳・行動の性決定システムが完全に破綻するのであれば、未知の性決定因子はtransformer下流でスプライシング制御を受けるはずである。脳内発現遺伝子の性特異的スプライシングを調査し、未知の性決定因子の探索を進めたい。また、doublesex 遺伝子を発現する神経回路について、性特異的な形態的特徴を示すか否かを、doublesex-gal4 系統を樹立して検証する。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [学会発表] Transcriptomic and phylogenetic analyses for the periplanone receptor gene family in the antennae of Blattidae cockroaches2023

    • 著者名/発表者名
      1.Takayuki Watanabe, Hiroshi Nishino, Kosuke Tateishi, Hidehiro Watanabe, Makoto Mizunami
    • 学会等名
      International Conference for Blattodea Research 2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Functional elucidation of two sex pheromones in the American cockroach; from receptions to behaviors2023

    • 著者名/発表者名
      2.Kosuke Tateishi, Takayuki Watanabe, Mana Domae, Hiroshi Nishino, Makoto Mizunami, Hidehiro Watanabe
    • 学会等名
      International Conference for Blattodea Research 2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 昆虫嗅覚系進化学研究への誘い ~ゴキブリ科昆虫性フェロモン受容機構を題材に~2023

    • 著者名/発表者名
      渡邊崇之
    • 学会等名
      日本比較生理生化学会 第45回大阪大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Watanabe1Mechanoreceptors for hygrosensation in the American cockroach2023

    • 著者名/発表者名
      Yuri Aizawa, Takayuki Watanabe, Hidehiro Watanabe
    • 学会等名
      日本比較生理生化学会 第45回大阪大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 昆虫脳神経進化発生学研究に向けた「コオロギ神経遺伝学」の構築2023

    • 著者名/発表者名
      渡邊崇之
    • 学会等名
      日本比較生理生化学会 第45回大阪大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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