研究課題/領域番号 |
23K05262
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
北條 優 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, ポスドク研究員 (80569898)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | キノコシロアリ / 社会行動 / オオシロアリタケ / 栽培共生 / 共生 / RNAseq / 子実体 |
研究開始時の研究の概要 |
キノコシロアリ類は、自ら栽培する担子菌(オオシロアリタケ)と共生している。両者はお互いになくては生存できない関係であるが、キノコシロアリの新しい女王や王が創設した巣(コロニー)でオオシロアリタケとの共生を開始するためには、コロニー創設後に外部から菌を取り込む必要がある。そのため、キノコシロアリの羽アリ(後の女王および王)の発生時期とオオシロアリタケの子実体(胞子生成器官)の発生時期がリンクしている必要がある。本研究ではフィールドでの生態調査と研究室内での行動実験、遺伝子解析を融合し、シロアリの社会行動による化学刺激とオオシロアリタケの子実体発生の関連を明らかにする。
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研究実績の概要 |
オオシロアリタケの子実体発生の時期におけるタイワンシロアリの社会行動を観察するために、石垣島、沖縄島および台湾のタイワンシロアリの生息地にて、土中から菌園を探索した。発見できた菌園については、菌園内外の温湿度などの環境要因と菌園内のオオシロアリタケ菌糸の性状変化について記録した。また、菌園内におけるタイワンシロアリのワーカーの行動についても、ビデオカメラおよび写真撮影にて記録した。フィールド調査により発見できた菌園からは、オオシロアリタケの菌糸を採取し、診断PCR法を用いたDNA解析にて菌の種を特定し、オオシロアリタケの種によるタイワンシロアリの行動や菌糸の状態の違いについて記録した。 タイワンシロアリの羽アリの発生時期には沖縄島のタイワンシロアリの生息地に頻繁に行き、羽アリの脱出孔を見つけ出し、ペアリング実験に用いるために羽アリを採取した。採取したコロニーが共生しているオオシロアリタケの種類を特定するために、同じ脱出孔からワーカーを採取し、ワーカーの腸から抽出したDNAを用いて診断PCR法により種を特定した。ペアリングから初期コロニーができてワーカーの出現が見られたコロニーには、特定の時期に、2種類のオオシロアリタケ子実体、培養菌糸および胞子を導入することにより、共生成立の時期や成功率について詳細に記録した。 オオシロアリタケ発生の時期には、石垣島、沖縄島および台湾のタイワンシロアリの生息地に頻繁に行き、オオシロアリタケ子実体の発生消長を調査した。これにより、温湿度や降水量などの環境要因とオオシロアリタケ子実体の発生の関係について一定の法則があることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本に唯一生息するキノコシロアリであるタイワンシロアリは、台湾や西表島や石垣島などの八重山諸島に自然分布しており、沖縄島では西表島から近年人為的に移入された個体群が生息しているのみである。タイワンシロアリの羽アリの発生時期のデータは、沖縄島での調査だけでは不十分であるため、台湾や石垣島での状況も含めて調査した。 また、共生するオオシロアリタケの子実体の発生時期に関しても、台湾、石垣島と沖縄島にて調査することで、遺伝的に多様なオオシロアリタケの子実体の発生状況と降水量や気温などの環境因子との関係を知ることができた。 タイワンシロアリの羽アリを用いた初期コロニーに対する菌糸の導入実験については、採集できた羽アリの数が限られていたため、本年度は培養菌糸を用いた方法に絞って菌糸の導入実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
タイワンシロアリの羽アリを用いたペアリング実験については、本年度は羽アリの採取数が少なかったため、次年度も羽アリを採取してペア数を増やす予定である。創設したコロニーでは、菌園が大きくなるまでに時間がかかるため、飼育中のコロニーでの菌園内のワーカーの行動観察については、次年度以降に行う予定である。また、夏場に飼育中に高温のために死滅してしまったコロニーがあったため、次年度は空調の温度設定を下げて行う実験を予定である。 また、タイワンシロアリの羽アリの発生過程における遺伝子発現解析や、オオシロアリタケの様々な発生過程の菌糸を用いた比較トランスクリプトーム解析は、本年度の石垣島や沖縄島でのサンプリングのデータから、解析に用いるサンプルが採れる時期をすでに割り出しているため、次年度にRNA抽出用のサンプルを入手できる予定である。RNA-seq解析に必要な実験等は、実施先と密に連絡を取り、効率的な方法でライブラリー作成を行い、可能であれば次年度中にもシークエンスを行う予定である。
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