研究課題/領域番号 |
23K05270
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
山村 英樹 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (70516939)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 超希少放線菌 / 遺伝資源 / 選択分離法 / バッファー / 落葉 / 分類 / 土壌 |
研究開始時の研究の概要 |
超希少かつ運動性を有している放線菌を分離する「バルク土壌集積培養法」を開発し、新種の発見および新規化合物の取得に成功している。しかし、超希少な運動性放線菌が生態系内にどのように分布しているかについては、未知の部分が多い。本研究では、土壌生態系以外から超希少な運動性放線菌を分離するための選択的な分離法の開発を行う。さらに、選択分離法を用いることで、生態系内における運動性放線菌の分布状況を詳しく調べることができ、遺伝資源としての保全につながる。また、国内サンプリングを行い、選択分離されたカップ内液の菌叢解析、分離株の遺伝子解析と寄託することによって、遺伝子資源の保全を行う。
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研究実績の概要 |
放線菌は土壌などの環境試料中に多く存在しており、その多くはStreptomyces属が占めている。一方で、残り5%は希少放線菌と呼ばれ、さらに運動性放線菌は1%にも満たない存在である。我々はこの1%を選択的に分離する技術として「バルク土壌浸漬法」を開発したが、植物の落葉から分離には適していなかった。そこで、落葉から超希少な運動性放線菌を分離する方法を確立し、遺伝資源として保全を行うことを目的とした。具体的には、落葉をろ紙ではさみ、誘引剤を保持するアルミカップを定置する方法をサンドイッチ法とした。 基本的な分離法の設定は行う事が出来ているため、今年度は実際の分離法で使うバッファーについて検討を行った。3種類のGoodのバッファーでそれぞれpHを3点(MES:pH 5.5、MOPS:pH 7.0、CHES:pH 9.0)設定し、それぞれのpHで誘引される運動性放線菌の多様性について次世代シーケンサーにて評価を行った。なお、今回は初期的な検討ということでバルク土壌浸漬法を使った。その結果、コントロールとして水のみの場合は非常に多様な微生物群が検出されたが、ろ紙とバッファーを用いた場合では多様性(OTU数)は1/3~1/6に低下した。言い換えれば、選択性が3~6倍に上がる事が示された。放線菌の種類については代表的な運動性放線菌であるActinoplanes属が主要であったが、次いで、Gaiella属が比較的多く検出され、Nocardioides属、Cellulomonas属が続いた。pHについてはMOPSおよびCHESで運動性放線菌が同程度検出され、CHESでのみ検出される分類群も見られた。しかし、MESは比較的検出頻度が低く、MESでのみ検出される分類群もほぼなかった。以上のことから、サンドイッチ法で利用するバッファーはMOPSおよびCHESが最適であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
サンドイッチ法構築にあたり、以下の方法で実施した。蒸留水で湿らせたろ紙(1段目)に湿らせた落葉を置き、その上にさらに湿らせたろ紙(2段目)を定置した。さらに2段目にはペニシリンカップ(抗生物質検定用)を置き、バッファーを入れたが誘引時間(30分)以内に液が流出してしまった。そこで、滅菌した脱脂綿にバッファーを入れることにより液の流出を防ぐことができた。バッファーについては3種類のGoodのバッファーでpHを3点(MES:pH 5.5、MOPS:pH 7.0、CHES:pH 9.0)に設定し、それぞれ誘引される運動性放線菌の多様性について次世代シーケンサーにて評価を行った。その結果、放線菌の中ではActinoplanes属が主要であったが、次いで、Gaiella属やNocardioides属、Cellulomonas属などが検出された。Gaiella属は現在、1科1属1種の超希少な放線菌である。原著論文では運動性はないと記されているが、ゲノム情報を見てみるとフラジェリンなどの遺伝子が見られたことから、更なる分離株とより詳しい調査次第では運動性がある分類群である可能性がある。また、pHについてはMOPSおよびCHESで運動性放線菌が同程度検出されたことから、これらを選択分離用バッファーとした。当初は2023年度内に構築した方法を用いて、実際の落葉からの分離を行う予定であったが、サンプルによってはバクテリアの出現数が想定以上になるサンプルが見られたため、バクテリアを抑制する抗生物質添加や試料の乾熱などの前処理法を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今回、次世代シーケンサーの結果から当初は予想していなかったGaiella属がある程度の割合で検出された。この属を分離する事を今後の目標の1つとし、Gaiella 属が分離されたときの培地であるR2A寒天と一般的な放線菌の選択分離培地であるHV寒天を併用していく。また、2024年度の早いうちに試料の乾熱処理、もしくは抗生物質添加などの前処理法にてバクテリアの出現抑制を評価していく。乾熱処理は100℃で10分程度を想定しており、抗生物質はキノロン系(オールドキノロン)、キノロン系(ニューキノロン)から10化合物程度を選抜していく。さらに、落葉については現在入手可能などんぐり、イチョウなどは入手しており、近くの森林土壌についてもサンプリングを行う予定である。そのため、2024年の9月頃までには分離方法を確立し、10月以降に様々な落葉サンプルから運動性放線菌の分離を行い、16S rDNAの解析から新規性の高い分離株の取得を目指す。分離株についてはNBRCなどの微生物保存機関に寄託し、分類学的試験を行っていく予定である。
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