研究課題/領域番号 |
23K05271
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
八代田 真人 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (30324289)
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研究分担者 |
中嶋 紀覚 東京農工大学, 農学部, 助教 (10930117)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 放牧 / 植生の多様性 / フラボノイド / 反芻動物 / 抗酸化能 / 植物二次代謝産物 / 半自然草地 / メタボローム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
半自然草地のような多様な植生を持つ草地は,家畜生産性が低いとみなされ,減少の一途をたどってきた。一方で,生物多様性や生態系サービスの維持から,多様な植生を持つ草地の畜産利用と保全は重要な課題と再認識されている。そのため,草地に放牧される家畜に対して,多様な植生を持つ草地の機能を明らかにすることが重要となる。
本研究では,草地植生の多様性が,植物に含まれる生理活性物質であるフラボノイドなどの二次代謝産物の構成,含量および多様性を介して,放牧家畜の代謝に作用し,さらに抗酸化力・抗炎症作用といった健康に寄与するかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,放牧地における植生の多様性が,それらを摂取する反芻動物の抗酸化および抗炎症作用に及ぼす効果を,植物二次代謝産物であるフラボノイドの機能を軸にして,明らかにすることである。半自然草地のような多様な植生を持つ草地は,家畜生産性が低いとみなされ,減少の一途をたどってきた。一方で,生物多様性や生態系サービスの維持から,多様な植生を持つ草地の畜産利用と保全は重要な課題と再認識されている。この中で,草地の利用に不可欠な放牧家畜に対して,多様な植生を持つ草地の機能を明らかにすることが重要である。本研究では,草地植生の多様性が,フラボノイドのプロファイルに及ぼす影響を明らかにし,この違いが,反芻胃内のフラボノイド代謝産物および血中の代謝産物を介して,反芻動物の抗酸化力・抗炎症作用に寄与するかを推定することで,半自然草地の多様な植生がもつ機能を「動物の生理生態」の点から解明し,利用と保全に貢献することを目指している。 初年度では,多様性の異なる植生を栽培し,そのサンプルからフラボノイドのプロファイル(含量,構成,多様性)の違いを検証する予定であったが,播種時期や圃場における雑草の影響により,予定していた植生を得ることができなかった。そこで,イネ科牧草単播の草地および多種の植物を含む半自然草地から収穫,調製した乾草を用いて,植物中の主要なフラボノイドの含量を測定し,半自然草地で収穫した乾草では,ルチン,ケルセチンおよびケンぺロールの含量が,単播草地で収穫した乾草に比べ高くなることを明らかにした。また,これらを反芻家畜に給与した結果,半自然草地で収穫した乾草を給与した場合には,反芻胃内の総フラボノイド含量が高くなり,血中の抗酸化能(TAC)および抗酸化酵素であるSODの濃度が高くなるという結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の課題であった【課題1. 草地の植物多様性がフラボノイドのプロファイルに及ぼす影響】において,播種時期および圃場における雑草の影響から,目標としていた多様性の異なる植生を栽培することが難しく,適切な分析サンプルを得ることができなかった。そこで,栽培草種および播種時期などの再検討を行い,次年度における栽培の準備をした。また,この進捗状況の補完をするために実施課題の順番を変え,【課題3. 植物多様性の異なる草地への放牧が抗酸化および抗炎症作用に及ぼす影響】の予備的試験を実施した。具体的には,単播草地および半自然草地でそれぞれ収穫,調製した乾草中の主要なフラボノイド含量を測定するとともに,これらを反芻家畜に給与して,反芻胃内のフラボノイド代謝物および血中の抗酸化能と抗酸化酵素を測定し,課題3で想定している仮説が成り立ち得ることを確認した。この成果は論文にまとめ現在投稿中(国際誌Animal)である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に上手く実施できなかった多様性の異なる草地植生の栽培について,栽培条件を変えて再度実施し,植物多様性がフラボノイドのプロファイルに及ぼす影響を明らかにする。同時に,課題1で得られた試料から,課題2の反芻胃内のフラボノイド代謝物生産の推定も併せて行う予定である。 【課題1. 草地の植物多様性がフラボノイドのプロファイルに及ぼす影響】初年度と栽培草種および栽培時期などの条件を変えて植物種の多様性が異なる草地を作成する。既に条件の検討を済ませ,播種をしており,現段階で雑草などによる大きな影響はなく,目標とする植生が得られている。今後,栽培した植生を刈取り,分析用のサンプルを採取する。この試料においてフラボノイドの構成と含量を液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS/MS)により測定し,植物種数,種または分類群の構成,多様度によるフラボノイドのプロファイルを明らかにする。 【課題2. 草地の植物多様性が反芻胃内のフラボノイド代謝物生産に及ぼす影響:in vitro法による評価】課題1において採取した試料を,経口チューブにより採取した反芻胃液を用いてin vitro培養する。培養後の胃液内のフラボノイドとその代謝産物をLC-MSを用いたアンターゲットメタボロミクスによって網羅的に分析し,反芻胃内微生物の代謝を受けたフラボノイド代謝物の生産量と構成を明らかにするとともに,ヒトやマウスの知見から抗酸化・抗炎症作用に効果があると考えられるフラボノイド代謝物を推測する。
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