研究課題/領域番号 |
23K05298
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
松木 佐和子 岩手大学, 農学部, 講師 (40443981)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | クスサン / 寄生蜂 / 大発生 / アンケート調査 / ウルシ林 / クリ林 / Saturnia japonica / 昆虫の大発生 / 天敵圧 / 遺伝解析 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、北海道では日本最大級の蛾(クスサン)の大発生が各地で報告さているが、本州以南でこのような大発生は起きていない。そこで本研究では、北海道においてクスサンの大発生が起きる理由を明らかにするため、以下の課題を行う。 I. 北海道と岩手県において、野外のクスサンの死亡率、天敵となる生物の種類や密度を調べ、北海道では岩手県よりもクスサン密度が天敵によって抑制されにくい状況にあるのかを検証する。 II. 日本各地のクスサン個体群の遺伝解析を行い、国内におけるクスサンの分布拡大パターンを明らかにする。特に北海道では近年になってから急速に分布拡大した可能性を検証する。
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研究実績の概要 |
研究初年度である2023年度は、これまで岩手県内で行って来た調査に加え、北海道での調査を開始した。 <北海道におけるクスサン大発生分布域の調査>2022年から道内においてクスサン成虫の発生報告が相次いだことから、2023年秋に北海道全市町村に対して電話および郵送によるアンケート調査を行った。その結果、2022年よりも2023年の方が分布域が若干東に移行する傾向が見られた。前回の2006年から始まった大発生の発生パターンも過去の新聞記事や文献から追跡し、今回の発生パターンとの相違点を比較する。 <寄生昆虫に関する調査>2023年4月に孵化前のクスサン卵塊を北海道と岩手県内の多地点で採取した。多くの卵塊から卵に寄生するタマゴバチの発生が見られたが、岩手県内では平均して10%ほどの寄生率であったが、北海道では1%に満たない寄生率であった。また、同様に他地点で蛹を採取して発生する寄生昆虫を調べたが、発生した寄生昆虫は岩手県内のみの1個体だけだった。2024年度以降も卵や蛹の採取地点を増やし、寄生率の傾向を見る。 <岩手県内におけるウルシ林およびクリ林に対するクスサン初齢幼虫の選好性>これまでの実験よりウルシ葉のみで飼育されたクスサン幼虫はクリと同様かそれ以上の成長を見せることがわかっている。ウルシはクリよりもさらに開葉が遅いため、クスサン孵化と開葉タイミングが初齢幼虫の成長にとって重要となる。調査の結果、クスサン孵化とウルシの開芽はほぼ同時で、開葉の少し早いクリの方が餌として有効と考えられた。しかしウルシは開芽してから開葉までのスピードが早く、ウルシ葉上のクスサン初齢幼虫の成長はクリ葉上の幼虫と遜色なかった。 <遺伝子解析のためのクスサンサンプリング>全国からクスサン発生の情報およびサンプル標本の提供を依頼し、新潟県など新たな地点からもサンプルの提供を受け解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年から発生したクスサン大発生が2023年も継続しているため、北海道でのクスサン発生に関するアンケート調査に関して有効な結果が得られた。 クスサンの天敵に関しては、卵、幼虫、蛹のステージの寄生性昆虫を見たが、卵に寄生する寄生蜂について北海道と岩手県での差異が顕著に見られ、興味深い結果が得られた。 一方で、遺伝解析のための北海道以外でのクスサン標本については情報不足や自ら捕獲を行う調査を実施できなかったため、思うようにサンプルが集まっていない。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度も継続して北海道で発生しているクスサン分布状況をアンケートや現地調査によって追跡し、分布域の移動パターンを調べる。北海道やそれ以外の日本全国における、クスサンの過去の発生状況についても新聞記事や試験場報告などから追跡している。 寄生性昆虫については、特に卵寄生性のタマゴバチについて北海道と岩手県との間で顕著な違いが見られたことから、継続してサンプル数を増やしていく。 今年度は遺伝解析用のクスサン標本の収集に力を入れ、発生情報を元に現地を訪れてサンプリングを行うなど積極的に行いたい。
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