研究課題/領域番号 |
23K05300
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
崎尾 均 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, フェロー (20449325)
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研究分担者 |
川西 基博 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (50551082)
阿部 晴恵 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, 准教授 (60462272)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | サツキ / 分布 / 生態特性 / 分布環境 / 河川渓流 / 山頂 / 自然攪乱 / 生存戦略 / 植生構造 / 遺伝的構造 |
研究開始時の研究の概要 |
ツツジ科の常緑低木サツキは,河川や渓流において頻度の高い洪水攪乱を受ける渓流植物として知られている.屋久島には,自然状態のサツキが河川域に分布することが,これまで報告されている一方で,近年,山岳ガイドの情報などから山頂周辺にも分布が確認されている.本研究では,屋久島におけるサツキの分布域を明らかにするために渓流域と山頂で分布域の確認を行うとともに,渓流域と山頂に分布する集団間および異なる流域間における集団間での植生構造,形態の差異や遺伝的構造の比較を行う.それによってサツキが渓流域と山頂という異なる環境で生育できる可能性を生息環境と生存戦略から解析する.
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研究実績の概要 |
今年度は,山岳ガイドの情報をもとに,屋久島の宮之浦川,安房川,永田川などの渓流域や愛子岳,モッチョム岳,破沙岳などの山頂付近で,サツキの分布確認やその分布環境(光環境・土壌環境)や植生調査を行った.その結果,渓流植物と定義されていたサツキは,河川渓流だけでなく多くの山頂付近に分布していることが確認できた.河川渓流域では,岩盤や大きな礫が堆積していて日当たりがよく,洪水の際に水に沈水する立地環境で分布していた.渓流から離れた森林に覆われた林内ではサツキを確認することはできなかった.山頂付近では,高木が分布できない岩盤の割れ目などに分布していた.山頂周辺の分布域も強風があたり,直射日光を受ける環境であった.サツキが分布する渓流域と山頂で共通している環境は,他の樹木に覆われていない直射日光がよく当たる場所で岩盤や大きな礫の割れ目の間であった.また,河川渓流では洪水,山頂周辺では強風など,種類は異なるが物理的な攪乱を強く受けることも共通していた. サツキの葉の形態は,分布環境によって大きく異なっていた.実際に,風当たりの強い山頂周辺のサツキの葉は非常に小さく,河口周辺の葉はそれの10倍以上の葉面積を示していた.サツキの葉のサイズや形を比較するためのサンプルの採取を環境省や林野庁の許可を得て行った. サツキの分布する環境の河川の水位変動や霧の発生頻度を明らかにするために,安房川流域の安房前岳山頂,ヤクスギランドの渓流,安房川河口の3箇所にトレイルカメラと温湿度計を設置した.また,山頂付近の霧の発生頻度を明らかにするために愛子岳,安房前岳,モッチョム岳の山頂が把握できる箇所にトレイルカメラを設置した. 屋久島のサツキの集団間の関係を遺伝子から解析して,渓流間の違いや渓流域と山頂の違いなどを明らかにするための分析用サンプルを環境省や林野庁の許可を得て採取した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サツキの分布調査に関しては,当初の予定通り山岳ガイドからの情報をもとに屋久島中の大まかな分布域を把握することができた.また,その場所の植生調査や環境調査も順調に進んでいる.翌年以降に行う,葉の形態計測や遺伝子解析のための葉のサンプリングも予定通りに進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
2年目はサツキの分布調査を山岳ガイドの情報などをもとに引き続き行い,屋久島全島内の分布図を作成するとともに,植生調査および環境調査によってサツキの分布する環境を明らかにする.宮之浦岳などの奥山ではサツキが分布しないという山岳ガイドからの情報があったため,今年度は実際に宮之浦岳や永田岳を踏査してその情報を確認するとともに,その周辺の植生調査や環境調査を行う.また,昨年度設置したトレイルカメラや温湿度計の計測を継続し,河川渓流域と山頂での環境の類似や相違を明らかにする.. 1年目にサンプリングした葉に加えて,サツキの葉の採取を継続し,葉の長さや最大幅など葉の形態計測を行うことで環境の違いが形態に与える影響を明らかにする.また,遺伝解析用のサンプリングも進めて,解析を始めるためのサンプル処理などを行ない解析の準備を整える. これまで明らかになった研究結果をもとに,学会発表の準備を進める.
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