研究課題/領域番号 |
23K05301
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小野 裕 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (00231241)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 森林土壌 / 団粒 / 土壌攪乱 / 土壌圧縮 / 土壌水分動態 / 土壌団粒 / 土壌水分 |
研究開始時の研究の概要 |
森林の水源涵養機能や侵食防止機能には土壌表層で発達する団粒が大きく影響する。しかし団粒は土壌攪乱により容易に破壊されるため,破壊された団粒再生に向けた研究が必要である。本研究では,破壊された団粒の再生過程を明らかにするため,ヒノキ人工林内において,処理を加えない「対照区」,土壌に圧密を加える「処理区」,圧密後に枝条で被覆する「被覆区」,土壌表面の落葉を除去した「除去区」を設定し,土壌水分量や地表流の観測を行う。一方で,定期的に土壌試料を採取して分析を行い,土壌の変化(団粒再生過程)を明らかにする。これらの結果をもとに,団粒の再生過程と,団粒再生に伴う土層深部での水移動変化について明らかにする。
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研究実績の概要 |
森林土壌表層での団粒形成が土層深部の水分動態に及ぼす影響を評価する目的で,以下の研究を行った。 ヒノキ人工林斜面に試験プロットを3か所設置した。これらのうち2つのプロットでは,土壌表層部の団粒の破壊を目的とした圧縮・攪乱処理を加え,1つのプロットは対照区として処理を加えずに団粒を維持する予定である。当初の計画通り,2023年度は,各プロットの処理前の土壌水分動態を明らかにするための期間と位置づけ,土壌の深さ10,20.40,60㎝の体積含水率と土壌吸引圧の観測を開始した。さらに,林内雨量,気温,地温の観測も行った。 また,土壌圧縮が土壌水分動態に与える影響を評価する目的で,試験プロット近傍で土壌に圧縮処理を加え,人工降雨試験を実施した。その結果,強度の圧縮処理によって,地表流が発生する一方で,土層深部への浸透水の到達が早くなることを確認した。このことから,強度の圧密処理により,土壌表層部の透水性が低下した一方で,水分貯留量が減少して浸透水の下層への到達が早まったと推察された。この結果は,表層土壌の圧密が土層深部への水移動へ影響することを示す一時例として貴重な知見であると考えられる。 一方,冬期間の土壌の凍結や霜柱の発生が圧縮された土壌の回復に影響すると考え,凍結・霜柱発生前後の土壌試料を採取し,物理性の測定を行った。また,室内において,土壌試料に霜柱を発生させる試験を行った。その結果,圧縮された土壌は,凍結時には体積が増加し,融解後には硬度が低下することが明らかになった。また,霜柱の発生により土壌試料の体積・孔隙量が増加し,透水係数が微増したことが明らかとなった。これらの結果は,圧縮された土壌の自然条件下での回復過程の1事例を示すものとして重要であると考えられる。 さらに,本研究で得られる各試験プロットでの体積含水率の変動の再現を可能にする土壌水分変動モデルを作成した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は夏期頃を目途に試験プロットに土壌水分計や土壌吸引圧の観測に用いるテンシオメータを設置する予定であった。しかし,半導体不足等の影響により,これら機器の納品が遅れた。また,試験プロットの設置を予定していた場所へ向かう作業道近傍にスズメバチが営巣し,研究代表者が数カ所の蜂刺されの被害を受け,病院での治療を受けた。そのため,試験プロット設置場所の変更を余儀なくされた。 以上の理由により,試験プロットの設置が秋期以降となった。本研究の対象地は標高1,000m以上の高冷地であり,通常冬期間の研究活動は行わない。しかし,研究計画の遂行に向け冬期間も観測機器の設置などを行ったが,当初の研究計画に対し若干の遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に引き続き,2024年度は3つの試験プロットにおいて土壌水分等の観測を継続し,各試験プロットの圧縮・攪乱処理前の土壌水分動態を把握する。とくに,土層の深層部まで浸透水が到達するような大きな降雨イベントについて,数回分のデータ取得を目指す。 以上の観測により,十分なデータが得られたと判断できたら,1つの試験プロットについて圧縮処理,もう1つの試験プロットについて攪乱処理を加える。これらの処理後も観測を継続し,処理前後の比較,処理区と対照区の比較から,圧縮・攪乱処理の影響によって,処理を加えた試験プロットの土壌水分動態がどのように変化したのかを明らかにする。 また,試験プロット近傍に土壌試料採取プロットを設置し,そこから深さ80㎝までの土壌試料を採取し,土壌物理性の測定を行う。さらに,試験プロットと同様の圧縮・攪乱処理を加えた後に土壌試料を採取して土壌物理性を測定し,圧密・攪乱が土壌物理性に与える影響を評価する。また,この測定により得られた土壌水分特性によって,観測された土壌吸引圧から体積含水率を求め,土壌水分計の観測値を校正し,各試験プロットの土壌水分動態をより正確に把握する。 さらに,観測によって得られた試験プロットの深さごとの体積含水率について,研究代表者らが開発した土壌水分変動モデル(情野・小野,2024)を適用し,各試験プロットにおける土壌水分動態の経時変化を再現し,土壌への圧縮・攪乱処理の影響をモデルのパラメータの違いなどから評価することを試みる。
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