研究課題/領域番号 |
23K05310
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 公益財団法人立山カルデラ砂防博物館 |
研究代表者 |
杉田 久志 公益財団法人立山カルデラ砂防博物館, 学芸課, アドバイザー (60154473)
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研究分担者 |
志知 幸治 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353715)
梅村 光俊 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00737893)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 植生変遷 / 花粉分析 / 植物珪酸体分析 / 森林化 / 偽高山帯 / 多雪環境 / 埋没泥炭 / ササ |
研究開始時の研究の概要 |
立山の植物群落の現在の分布域を調査し、精密な現存植生図を作成するとともに、さまざまな標高、植生の100地点において腐植(F層、H層)を採取し、それに含まれる花粉の組成を調べ、花粉組成と周辺の植生分布との関係について解析する。さらに、ササ原、ハッコウダゴヨウ低木林、オオシラビソ林が成立している4地点で埋没泥炭を含む堆積物を用いて花粉分析および植物珪酸体分析を行って、森林化の過程について明らかにする。以上の結果を総合して立山の偽高山帯における森林化の過程を復元する。立山や東北地方における既往の研究成果と比較し、植生変遷に及ぼした環境変化の影響(気温・降雪量など)について考察する。
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研究実績の概要 |
日本海側の多雪山地では亜高山帯針葉樹林が発達せず、替わりに低木林やササ原、湿原が広がる景観がみられ、偽高山帯とよばれている。この植生は、最終氷期から完新世への植生変遷のなかでオオシラビソの拡大による森林化が遅れたために非森林空間が埋まらずに残っている変化途上の状態であると考えられる。しかし、その森林化のプロセスは十分に明らかにされておらず、とくにそれに先駆けて生じるササの分布拡大がいつ起こったのかに関する研究事例は少ない。 本研究では、典型的な偽高山帯がみられる北アルプス立山において花粉分析に加えて植物珪酸体分析を行い、とくにササの分布拡大に注目しながらその植生変遷を明らかにし、それをもたらした環境要因について考察する。立山の植物群落の現在の分布域を調査し、精密な現存植生図を作成するとともに、さまざまな標高、植生の100地点において腐植(F層、H層)を採取し、それに含まれる花粉の組成を調べ、花粉組成と周辺の植生分布との関係について解析する。さらに、ササ原、ハッコウダゴヨウ低木林、オオシラビソ林が成立している4地点で埋没泥炭を含む堆積物を用いて花粉分析および植物珪酸体分析を行って、森林化の過程について明らかにする。以上の結果を総合して立山の偽高山帯における森林化の過程を復元する。立山や東北地方における既往の研究成果と比較し、植生変遷に及ぼした環境変化の影響(気温・降雪量など)について考察する。 研究期間の初年である今年度は、表層花粉試料100地点の採取完了および堆積物コア試料3地点の採取を行い、現生の植生分布の現地調査と詳細な植生図の作成を進めた。研究成果は学会等で4件発表し、論文の公表も1件行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間の初年である今年度は、分析を行う試料を採取することを中心に進めた。まず、花粉分析から植生変遷を復元するための基礎となる表層花粉組成と現生植生との関係を解析するための試料(以下、表層花粉試料)の採取を進め、予定していた100地点すべての採取を完了した。さらに植生の変化を解析するための堆積物コアの試料(以下、堆積物コア試料)の採取も進め、予定していた4地点のうち3地点(①スギ・キタゴヨウ林、②オオシラビソ林、③ハッコウダゴヨウ低木林)の採取を実施し、層位ごとに切り分け、花粉分析や植物珪酸体分析を行うための前処理が終っている。それらのコアではいずれも下部に埋没泥炭がみとめられ、湿原から低木林・森林へと変化する過程を明らかにするのに有効な試料を得ることができたと考えている。 現生の植生分布の解析については、立山地域で現地踏査を行って詳細な植生図の作成を進めており、緩傾斜の火砕流台地上の美女平~弥陀ヶ原と急傾斜の大日岳周辺を比較し、傾斜が植生分布に及ぼす影響について解析した。 成果の公表については、現生の植生分布やそれに及ぼす地形や積雪下の温度環境の影響、多雪環境で優勢なオオシラビソの耐雪圧戦略として重要な材質特性について学会等で4件の発表を行い、そのうちオオシラビソの材質特性については論文として公表した。 以上のように当初の計画通りに研究を遂行できたことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、未採取の堆積物コアの採取を行い、試料採取を完了させる。そして採取した試料を用いて花粉分析および植物珪酸体分析を行い、植生変遷の復元を進める。立山地域の植生の現地踏査を行って詳細な植生図を作成し、現生の植生分布と温度・地形条件との関係の解析を進める。表層花粉の組成を分析し、周辺の植生分布との関係について解析を進める。
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