研究課題/領域番号 |
23K05328
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
澤田 圭 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (10433145)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ドリフトピン接合 / 複数鋼板 / 鋼板間隔 / 静加力試験 / 柱脚接合部 / 柱-梁接合部 / 接合寸法 |
研究開始時の研究の概要 |
木造建築物が中大規模化すると部材断面も大型化し、その部材には鋼板を1枚挿入するより、複数枚挿入する方が接合耐力は上昇する。鋼板複数枚挿入ドリフトピン接合部を用いて柱脚接合部や柱-梁接合部を構成すると、部材断面を活かしながら高い接合耐力を持つ接合部ができるが、耐荷メカニズムに関しては不明な点が多い。そこで、鋼板複数枚挿入ドリフトピン接合部を用いて、柱脚接合部および柱-梁接合部を構成し、静的加力試験を行う。鋼板の枚数と間隔、部材同士の接触程度を変化させて耐荷メカニズムの変化を調べ、構造計算で求めた設計値と接合部が有する構造性能値を比較することで、設計値が持つ安全性に科学的知見を与える。
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研究実績の概要 |
木造建築物が中大規模化すると部材断面も大型化し、鋼板を複数枚挿入することでドリフトピン接合の接合耐力は上昇する。この鋼板挿入ドリフトピン接合で柱脚接合部や柱-梁接合部を構成した木質構造物はあるが、初期剛性や降伏モーメントといった構造性能を実験によって確認したデータは極めて限定的である。そこで本研究では、鋼板の枚数や間隔、部材同士の接触条件を変化させた静的水平加力試験を行い、接合部の仕様が耐荷メカニズムをどのように変化させるか調べることを目的とした。令和5年度は鋼板の枚数、鋼板間隔を変化させた単位鋼板複数枚挿入ドリフトピン接合部のせん断試験を行った。 せん断試験体の寸法は、材長500mm、幅72mm、厚さ150mmとした。集成材に幅10mmのスリットを設け、厚さ9mm、鋼種SS400の鋼板を挿入し、集成材と鋼板をドリフトピン1本で接合した。接合の仕様は、鋼板1枚を中央に挿入する仕様と、鋼板を2枚挿入する仕様が3種類で、鋼板間隔は40mm、80mm、110mmとした。 鋼板1枚挿入接合は20kN付近で降伏後荷重は漸増し、最大荷重を記録した後に荷重は低下した。鋼板2枚挿入接合は、鋼板間隔40mm の場合、30kN付近で降伏した後、荷重は漸増して最大荷重に達した。最大荷重に達して以降は、2体は荷重が減少し、1体は最大荷重の40%まで低下して荷重は横ばいとなった。鋼板間隔80mmの場合は最も大きな最大荷重を示し、最大荷重に達した後、荷重は急激に低下した。鋼板間隔110mmの場合は、最大荷重に達した後の荷重はほぼ横ばいで、変位10mm程度までは顕著な荷重低下はみられなかった。集成材の断面寸法が同じでも挿入鋼板の枚数や挿入する鋼板の間隔が異なると、荷重-変位曲線の形状は変化することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中大規模木造建築物が水平力を受けると、柱脚接合部や柱-梁接合部にはモーメントが生じる。これらモーメント抵抗型接合部にドリフトピンを用いる場合、複数本のドリフトピンを円形や矩形に配列する。部材同士が接触していると部材の回転が拘束されるため、配列の中心と回転中心は一致せず、柱端部に部分的なめりこみが発生する。そこで本研究は、鋼板の枚数や間隔、部材同士の接触条件を変化させて鋼板挿入モーメント抵抗型接合部に静的水平加力を与え、部材同士が接触して部材の回転が拘束されているときのモーメント抵抗型接合部の構造性能はどのように変化するか解明することを目的としている。 鋼板挿入モーメント抵抗型接合部ではドリフトピンを複数本用いて木質材料と鋼板を接合しており、モーメント抵抗型接合部の構造性能はドリフトピン1本で接合した鋼板挿入ドリフトピン接合の構造性能に依存する。そこでモーメント抵抗型接合部の接合寸法を決定するため、令和5年度の研究計画はドリフトピン1本で接合した鋼板挿入ドリフトピン接合部のせん断試験の実施とした。鋼板の枚数、鋼板間隔を変化させた鋼板挿入ドリフトピン接合試験を行い、ドリフトピン接合の初期剛性、降伏せん断耐力、終局せん断耐力、終局変位を調べ、接合部の破壊性状と接合部の構造性能との関係を把握することができた。モーメント抵抗型柱脚接合部の接合寸法に関する情報をこの試験から入手することができ、当初の計画通りに研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
鋼板挿入モーメント抵抗型接合部の設計は、ドリフトピン配列の中心を部材の回転中心において構造計算を行うが、実際に施工されているモーメント抵抗型接合部は部材同士が接触しているため、ドリフトピン配列の中心と部材の回転中心は異なる。そこで、鋼板挿入モーメント抵抗型接合部の構造性能が鋼板の枚数、鋼板間隔、部材同士の接触条件によってどのように変化するか調べるため、令和5年度はドリフトピン1本で接合した鋼板挿入ドリフトピン接合部のせん断試験を実施した。鋼板の枚数や鋼板間隔がドリフトピン接合部の構造性能に与える影響を把握することができた。 鋼板挿入モーメント抵抗型接合は柱脚接合部や柱-梁接合部に用いられ、そこでは複数本のドリフトピンを円形や矩形に配列し、構造物が水平力を受けると各接合部にはモーメントが生じる。令和6年度は柱脚接合部に対して、静的水平加力試験を実施する。鋼板の枚数と間隔は令和5年度の研究で得られた結果を参考に設定する。モーメント抵抗型接合部を設計する際はドリフトピン配列の中心を部材の回転中心と置くため、この条件を満たす、各部材を接触させないモーメント抵抗型接合部について試験を行う。しかし、実際のモーメント抵抗型接合部は各部材を接触させて施工することが多いため、接触させたモーメント抵抗型接合部の試験を実施する。各部材間の接触条件によるモーメント抵抗型接合部の耐荷メカニズムの変化を調べ、その変化は挿入鋼板の枚数と間隔によってどのような影響を受けるか明らかにする。
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