研究課題/領域番号 |
23K05330
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山ギシ 崇之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 技術職員 (60723830)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 木質炭化物 / 炭化 / 誘導体化 / カルボニル / ヒドラジン / 吸着 / 熱分解 / SEM-EDX / 官能基 |
研究開始時の研究の概要 |
木質組織は不均一で、均一な材料調製にコストが掛かり、化石資源由来材料の代替品としての利用が進んでいない。本研究では、木質組織の元々のヘテロな性質を積極的に活用し、低コストでハイブリッドな材料調製を目指す。従来よりも低温で調製された木質炭化物(半炭化物)が持つミクロスケールでヘテロな官能基や吸着性能を可視化し、木質炭化物特有のヘテロな吸着機構が熱的変質によってどのように発現するのかを解明する。
|
研究実績の概要 |
木質炭化物中に存在するカルボニル構造を可視化するために、適した誘導体化試薬及び標準的な試料を選定する必要があった。まず、吸着の影響を排除するため、電子反発性の高いフッ素を含んだ誘導体化試薬を選択する必要があった。一方、酸化させたセルロース試料を用いたところ、誘導体化反応中に溶解しやすいため重量増加で反応の進行を認められなかった。誘導体化後の試料観察が目的であることからも、重量増加しない酸化セルロース試料の適用を断念した。当該研究に対応するカルボニル量の多い標準試料の探索が困難であったことから、本研究では、300℃窒素下で加熱処理したスギ試料を用いて、カルボニル誘導体化反応が進行する事を確認した。 ペンタフルオロヒドラジンをメタノール酸性中で反応させる事で、フッ素をマーカーとしての可視化は可能であるが、温度や時間についての最適条件が不明であった。恐らくは電子反発及び立体障害によって反応性が低いと推測された。このことから、適切な反応条件を選定するために試料が著量必要であると考え、市販ナラ炭化物における反応条件を現在検討中である。 次に、3dブロック元素に着目したバルクフェーズでの吸着現象について検討した。金属イオンの価数の影響が吸着に強く影響していることから、木質炭化物の表面電位が吸着性能の支配因子であると推測された。また、一連の検討を踏まえ、ミクロスケールでヘテロな吸着現象が起きると期待される吸着元素の組み合わせを選定中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では研究環境の整備だけでなく、当該研究の遂行に適切な試料の準備と、今後の研究に必要な異種元素の組み合わせを考えるため、様々な元素の吸着現象を把握する必要があった。一連の検討は既に完了しているとみなせる。また現在、3dブロック以外の元素に着目した吸着挙動についても実験が完了しており、今後それらの結果をまとめつつ、適切な元素を選定する事で今後の研究が円滑に進むと期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
木質組織の形状が残っている木質炭化物に、これまで確立してきた誘導体化を行い、カルボニル化合物がミクロスケールでどのように分布しているのかを可視化する。また、様々な温度条件で炭化した試料に対して適用する事で、カルボニルの分布の変化を明らかにする予定である。上述したように、吸着の影響を考慮した試薬の使用を変更する必要があると考え、反応性が高い試薬についても検討する。例えば、可視化されたカルボニルの分布が反応性が異なる試薬で類似している場合、吸着の影響が少ないとみなして良いと判断する事で、反応性の高い試薬の適用が可能になると期待している。また、未だ可視化されていない他の官能基に対しても、適切な誘導体化試薬を用いる事で、最適反応条件の確立と可視化を実現する予定である。 次に、これまでの検討を踏まえて吸着に適した元素を選定し、単独元素を吸着させた後に包埋した試料に着目し、元素集積をミクロスケールで観察する。これにより、上記検討で判明した各温度条件で調製した木質炭化物の、ミクロスケールでの官能基分布と比較する事が可能となる。一連の検討から、各元素のヘテロな吸着現象を可視化し、そのヘテロな吸着は官能基分布から解釈可能であるかを明らかにする。
|