研究課題/領域番号 |
23K05337
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
服部 武文 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (60212148)
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研究分担者 |
山村 正臣 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (00948367)
川上 竜巳 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (90380120)
林 順司 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 講師 (20802101)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | カルボキシル メチルトランスフェラーゼ / マツタケ / ケイ皮酸メチル / Tricholoma matsutake / カルボキシルメチルトランスフェラーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
マツタケの主要な香り物質の一つであるケイ皮酸メチルは、L-フェニルアラニン→ケイ皮酸→ケイ皮酸メチルの代謝経路で生合成される。本研究は、マツタケに由来するケイ皮酸をメチル化するカルボキシルメチルトランスフェラーゼの活性中心で機能する、アミノ酸残基機能を明らかにすることを目的とする。まず、本酵素の結晶化に挑戦し、得られた結晶をX線結晶解析する。結晶が得られない場合は、構造モデルをシミュレーションし、当該アミノ酸残基を推定し、当該残基を別のアミノ酸に置き換えた組換えタンパク質を調製し、これらアミノ酸の機能を明らかにする。以て、マツタケの特徴的な香りの生合成機構に関する知見を得る。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、マツタケにおいて、ケイ皮酸をメチル化する活性を有するS-adenosyl-L-methionine-dependent cinnamic acid carboxyl methyltransferase活性を有するタンパク質TmCAMT1に関し、1) 特性解明、2) 結晶化、または、AlphaFold IIを用いたstructure model の作成とその解析により、活性中心に配置されるアミノ酸残基の反応における役割を解明することである。2023年度は、1) 特性解明を中心に研究したので、その概要を報告する。2022年度基盤研究(C) 20K06166、において見出した、大腸菌による不溶性組換え酵素からの活性酵素回収操作により調製されたTmCAMT1の特性に関し、以下が明らかとなった。A) 酵素反応至適温度は37度、至適pH8.0、B) 酵素反応には金属イオンは要求しない、C) ケイ皮酸に対するミカエリス定数0.65 ± 0.04 mMであった。これらの成果を得るため、酵素反応生成物ケイ皮酸メチルの定量をより正確に行うためLC-MS/MSの移動相の送液条件を再度確認した。これらの成果は、第74回日本木材学会大会(2024年3月13日(水)から15日(金))にて研究発表した。さらに、AlphaFold IIを用いたTmCAMT1のstructure modelを作成し、植物のバジル(Ocimum basilicum ) (Kapteyn et al., 2007)、コケ類 (Conocephalum salebrosum) (Zhang et al., 2019)の酵素の活性中心と比較し、類似点相違点を明らかにした(未発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度(令和5年度)に検討する当初計画は、1.2022年度基盤研究(C) 20K06166に引き続きケイ皮酸→ケイ皮酸メチル活性を有する組換え酵素を調製し特性解明する、 2.マツタケにおいて、ケイ皮酸をメチル化する活性を有するcinnamic acid carboxyl methyltransferase活性を有するタンパク質TmCAMT1の大量調製法の確立と結晶化の予備実験、であった。 まず、1.については、A) 酵素反応至適温度、至適pH、酵素反応における金属イオン要求性、ケイ皮酸に対するミカエリス定数を明らかにし、概ね達成できたと考えている。2.に関しては、pG-KJE8, pGro7, pKJE7, pTf16の各プラスミドがコードするシャペロンタンパク質をTmCAMT1と大腸菌で共発現させ、2022年度基盤研究(C) 20K06166の時点では、不溶性画分で多量に得られたTmCAMT1を可溶性タンパク質として得られないか検討した。プロトコールに従った方法で組換えタンパク質を調製し得たタンパク質が可溶性不溶性どの確認で得られたか電気泳動にて確認したが、可溶性画分に多量に得られるまでの改善には至らなかった。このため更なる条件検討が必要と考えられたので、2.に関しては、やや遅れていると評価した。そのため、当初2024年度(令和6年度)検討予定であったAlphaFold IIを用いたstructure model の作成とその解析を前倒しして行った。この結果、TmCAMT1のstructure modelを作成でき、活性中心に存在すると予測されたアミノ酸残基に関し、部位特異的変異により別のアミノ酸残基に変換させたタンパク質をコードする数種のcDNAのうちの一つを調製した。このため、計画を前倒して進めることができたので、全体としては、概ね順調に進んでいると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、シャペロンタンパク質を用いたTmCAMT1組換えタンパク質の大量培養方法の確立を達成する。即ち、2023年度に引き続いて、pG-KJE8, pGro7, pKJE7, pTf16の各プラスミドがコードするシャペロンタンパク質をTmCAMT1と大腸菌で共発現させる。培養条件として、L-アラビノース、テトラサイクリン、タンパク質発現を誘導するイソプロピルβ-D-チオガラクトシドの添加量および添加するタイミングを変えて検討し、電気泳動にてTmCAMT1の調製量、可溶性画分あるいは不溶性画分の存在量を比較し、より適切な条件を見出す。 次に、部位特異的変異による活性中心と予測される部位のアミノ酸の役割を解明する。即ち2023年度のAlphaFold IIを用いた検討により、TmCAMT1の活性中心と予測される部位のアミノ酸を予測した。これらのアミノ酸に関し、既往の文献により酵素反応の基質特異性を制御するアミノ酸に該当する残基に関し部位特異的変異を施した、組換えタンパク質を調製する。これらのタンパク質を2023年度確立した調製方法にて調製し、基質特異性の変化を、変異を施していないタンパク質と比較し、アミノ酸残基の役割を考察する。 さらに、2023年度本研究の進行に大きな影響を及ぼす内容が、他の微生物について報告された。このホモログタンパク質に関しマツタケで発現しているか否かの有無、発現していればcDNAクローニング、組換え酵素の調製および、酵素活性の確認を、先だって行うことも考えている。
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