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アコヤガイ貝殻内面のメラニン沈着の重篤化メカニズムの解明と軽減方法の探索

研究課題

研究課題/領域番号 23K05352
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分40030:水圏生産科学関連
研究機関三重大学

研究代表者

佐野 菜採  三重大学, 生物資源学研究科, 学術研究員 (50636545)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
キーワードアコヤガイ / メラニゼーション / RNA-seq / メラニン / 細菌
研究開始時の研究の概要

アコヤガイの「外套膜委縮症」では,貝殻の内側の縁に沿って「褐変」 と呼ばれるメラニンの沈着が認められる。メラニン沈着部分に貝殻が再生し回復する場合もあるが,より背側に「黒変」と呼ばれる重度のメラニン沈着が起きる。これは,褐変部分での二次感染としてのテナシバキュラムの増殖,あるいはメラニン化 に関与する酵素などの過剰分泌により重篤化する為と考えられる。本研究では,メラニン沈着の重篤化のメカニズムを遺伝子レベルでの細菌学や免疫学的な手法で解明し,その軽減方法を探る。また,現場では重篤化しにくい系統があるといわれており,その実験的確認と系統間の差異の解明も行う。

研究実績の概要

本年度は、主に以下の研究を行った。
1.黒変病と関連していると考えられているTenacibaculum以外のアコヤガイ常在菌でも黒変が形成される検討した。アコヤガイの外套膜から分離された9株の細菌をアコヤガイ(2 年貝)の左外套膜外腔に各株3個体に接種し,止水水槽,無給餌,25°Cで2週間飼育した後,黒変の有無と重度を観察した。各株1 個体の黒変部からDNA を抽出し,細菌 16S rRNA のメタゲノム解析を行った。つぎに,黒変の重度が高かったPseudoalteromonas 属2株を各株20個体ずつの左外套膜外腔に真珠筏(水温約26-29°C)に垂下し,接種後,10,20,30 日後に5 個体ずつ取り上げ,貝殻内面の観察と30 日後の黒変部の細菌叢のメタゲノム解析を行った。その結果,重度の違いはあるが,接種した9 株全てで黒変が認められた。その内,Peudoalteromonas 属2 株を接種し誘発された30 日後の黒変部の細菌叢は,7/8 個体でTenacibaculumsp.が優占していた。よって,Tenacibaculumは他要因で形成された黒変部において増殖し,優占種となることが推察された。
2.アコヤガイの夏季萎縮症ウイルス感染後の外套膜の遺伝子発現の網羅的解析をRNA-seqにより行った。PiBVを含む病貝の体液をアコヤガイ(3年貝)に接種し,RNA-seq解析を行った。接種前と各サンプリング日の間で数百の発現変動遺伝子(DEG)が得られた。これらのDEGと経時的変動の各クラスターの遺伝子は自然免疫やウイルスに対する防御反応等が多くを占め,これらはPiBV感染によるアコヤガイ外套膜の遺伝子発現変動の特徴を表すものと考えらた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アコヤガイの殻内面のメラニン沈着の重篤なものを黒変と呼ぶ。黒変部の細菌叢ではTenacibaculumが優占することが分かっているが,大腸菌,酵母によっても黒変が起きることは先行研究で分かっている。アコヤガイの常在菌でも黒変が起きることを計画通り1年目に明らかにできた。
メラニン沈着の重篤化に関連する遺伝子の探索には,まず,アコヤガイの感染症における遺伝子の網羅的発現解析を行う必要があり,それを計画通り1年目に行えた。
その為,おおむね順調に進展しているとした。

今後の研究の推進方策

1.黒変部での細菌叢に関しては,本年度はウイルス感染の後にTenacibaculumの増殖が起きるという仮説の下,人為的にウイルスを感染させ形成された軽度のメラニン沈着(褐変)がその後重篤化するかどうか,および,その細菌叢の解析を行う。
2.RNA-seqの結果から推定されるアコヤガイの感染症におけるメラニン形成に関連する遺伝子の定量PCRを行い,重篤化のメカニズムを明らかにする。
3.昨年度から引き続き行う1,2の項目に加え,3項目目であるウイルス感染や黒変に耐性がある系統の育種に向けた基礎的研究を行う。研究協力者である英虞湾種苗で維持されている,病気に強いとされる系統と弱いとされる系統を1対1交配する。稚貝の集団と病気が流行する時期を超えて生き残った集団を,次世代シーケンス解析のひとつであるMIG-seqを用いて比較し,集団の遺伝子組成が変わるかどうかを検討する。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Electron probe microanalysis and gene expression analysis of melanization caused by summer atrophy virus in the Akoya pearl oyster (Pinctada fucata)2024

    • 著者名/発表者名
      Sano Natsumi、Matsuyama Tomomasa、Inoue Nariaki
    • 雑誌名

      Aquaculture

      巻: 579 ページ: 740218-740218

    • DOI

      10.1016/j.aquaculture.2023.740218

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] アコヤガイ軟体部萎縮症におけるアコヤガイ外套膜のRNA-seq解析2024

    • 著者名/発表者名
      佐野菜採(三重大院生資)・松山知正(水産機構技術研)
    • 学会等名
      令和6年度日本水産学会春季大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] EPMA of the deposit on the inner surface shells and gene expression analysis of the mantle tissue infected with summer atrophy virus in the Akoya pearl oyster (Pinctada fucata)2023

    • 著者名/発表者名
      Natsumi Sano, Tomomasa Matsuyamab, and Nariaki Inouec
    • 学会等名
      Asian Fisheries Society Fish Health Section Conference
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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