研究課題/領域番号 |
23K05357
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
荒 功一 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (40318382)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 栄養塩 / 易分解性溶存態有機物 / 植物プランクトン / 一次生産 / 栄養塩再生 / 相模湾沿岸域 / 物質循環 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、栄養塩欠乏(枯渇)時に植物プランクトンのブルームが頻発する相模湾沿岸域において、栄養塩濃度・再生速度と低次生物特性(植物プランクトンの出現密度・現存量など)の変動の関連性を追及し、易分解性溶存態有機物由来の再生栄養塩により海水中の栄養塩濃度が上昇し得るのか(仮説①)、またその際にブルームを引き起こすトリガーとなり得るのか(仮説②)、あるいは栄養塩欠乏(枯渇)時に植物プランクトンは溶存態有機物を利用しているのか(仮説③)を検証する。併せて、同海域での栄養塩動態、一次生産速度、物質(窒素・リン)循環に及ぼす易分解性溶存態有機物由来の再生栄養塩の影響(寄与率)を定量的に評価する。
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研究実績の概要 |
2023年度には、相模湾(江の島沖)沿岸域(水深約55 mに設けた1定点)おいて各月2回の頻度で船舶を用いた観測を24回実施し、物理・化学・生物特性(水温・塩分、溶存態無機栄養塩濃度、溶存態有機窒素・リン濃度、クロロフィルa濃度、植物プランクトンの出現密度、一次生産速度)ならびにアルカリフォスファターゼ活性、フォスファターゼ加水分解性リン濃度、易分解性溶存態有機物由来の栄養塩再生速度などの測定を行った。 2023年度の結果は: (1)4月~10月に上層(水深20 m以浅)で溶存態無機栄養塩(窒素、リン、ケイ素)濃度が低い欠乏(枯渇)状態が断続的に続いた。同時期に全層または上層で植物プランクトンのブルームが度々観測された。(2)有光層内で溶存態無機栄養塩(窒素、リン)濃度が低く、溶存態有機窒素・リン濃度ならびに易分解性溶存態有機物由来の栄養塩(窒素、リン)再生速度が高かった7月上旬と10月下旬に植物プランクトンのブルーム発生を観測した。(3)プランクトン態アルカリフォスファターゼ活性ならびにフォスファターゼ加水分解性リン濃度は、いずれも低い値で推移した。(4)易分解性溶存態有機物由来の栄養塩再生速度より求めた窒素とリンの日間供給量は、現場海域の海水中(有光層)に存在する溶存態無機窒素の4.5~48.3%/d(平均16.2%/d)、溶存態無機リンの3.9~47.6%/d(平均16.8%/d)に相当し、また一次生産速度からレッドフィールド比により推定した植物プランクトンの日間窒素要求量の0.8~725.0%(平均40.5%)、日間リン要求量の0.2~85.8%(平均16.2%)を満たしたと推定された。 などであり、本研究課題の目的を達成するための必要不可欠なデータを取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度には、相模湾(江の島沖)沿岸域において各月2回の頻度で船舶を用いた観測に基づき測定・試料採取・現場実験・試料分析を実施した項目のうち、アルカリフォスファターゼ活性とフォスファターゼ加水分解性リン濃度の測定開始が9月以降と出遅れたものの、その他の物理・化学・生物特性(水温・塩分、溶存態無機栄養塩濃度、溶存態有機窒素・リン濃度、一次生産速度)ならびに易分解性溶存態有機物由来の栄養塩再生速度(5月以降に測定)などの測定は当初の計画どおりに進展した。 また、2023年度には、2024年度以降にデータ解析を予定している低次生物特性(ピコ・ナノ・マイクロサイズに画分したクロロフィルa濃度、ピコ・ナノ植物プランクトンの出現密度、マイクロ植物プランクトン各種の出現密度とその組成)の測定についても当初の計画どおりに進展した。以上より、本研究課題の現在までの進捗状況としては、概ね順調に進展しているものと推察される。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、2023年度と同様に相模湾沿岸域において船舶を用いた観測に基づく測定・試料採取・現場実験・試料分析を実施することにより、物理・化学特性(水温・塩分、溶存態無機栄養塩濃度、溶存態有機窒素・リン濃度)、低次生物特性(ピコ・ナノ・マイクロサイズに画分したクロロフィルa濃度、ピコ・ナノ植物プランクトンの出現密度、マイクロ植物プランクトン各種の出現密度とその組成、一次生産速度)ならびにアルカリフォスファターゼ活性、フォスファターゼ加水分解性リン濃度、易分解性溶存態有機物由来の栄養塩再生速度などの測定を継続して行う。 さらに、2024年度には、2023年度に測定したデータを用いて溶存態無機栄養塩濃度、溶存態有機窒素・リン濃度ならびに易分解性溶存態有機物由来の栄養塩再生速度と低次生物特性(ピコ・ナノ・マイクロサイズに画分したクロロフィルa濃度、ピコ・ナノ植物プランクトンの出現密度、マイクロ植物プランクトン各種の出現密度とその組成)の変動の関連性を解析し、仮説①易分解性溶存態有機物由来の再生栄養塩により海水中の栄養塩濃度が上昇し得るのか、またその際に仮説②ブルームを引き起こすトリガーとなり得るのか、あるいは仮説③栄養塩欠乏(枯渇)時に植物プランクトンは溶存態有機物を利用しているのかを検証する。また、植物プランクトンによる窒素・リン取り込み量、易分解性溶存態有機物の分解・無機化による窒素・リン再生(供給)量、ならびに動物プランクトンの排泄による窒素・リン供給量などから窒素・リン循環(収支)を算出する。
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