研究課題/領域番号 |
23K05373
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
吉永 龍起 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (30406912)
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研究分担者 |
阿見彌 典子 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (20588503)
田中 千香也 東京医科大学, 医学部, 講師 (20779813)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | イカナゴ / 潜砂 / 時計遺伝子 / 水産資源 / 行動 |
研究開始時の研究の概要 |
イカナゴは沿岸生態系を支え,水産資源としても重要である.本種は砂中で日周的に表層へ鉛直移動するなど,特異な生態が明らかになりつつある.そこで本研究は潜砂時の行動に焦点を当て,行動リズムの形成様式と維持機構,およびその妨げの影響を明らかにする.これによりイカナゴに固有の日周行動リズム,ならびにその生理・生態的な意義を解明し, 新しい視点による資源回復策の立案を目指す.
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研究実績の概要 |
イカナゴ属は,日中に遊泳・摂餌し,夜間は砂中で過ごす海産魚である.沿岸生態系の食物連鎖を支え,また水産資源としても重要である.しかし漁獲量は激減を続けており,資源の保全が急務となっている.砂中でのイカナゴの行動は未知な点が多いが,遊泳に先立って表層に移動することが分かってきた.この行動は概日リズムによって制御されていると考えられ,適切な潜砂基質が喪失したことが本属魚類の再生産を阻んでいる可能性がある.そこで本研究は,砂中での行動および日周的な行動を制御する分子機構を解明することを目的とした. 2023年度は,飼育実験と時計遺伝子の発現解析を実施した.飼育実験では,水槽底部に深度の異なる砂を敷き,潜砂基質としてどのくらいの深さの底質を選好するかを観察した.水槽内に底質の浅い区画(1 cm)と深い区画(7 cm)を設けて比較したところ,深い区画のみを利用することが明らかとなった.一方,水中を遊泳するイカナゴが底質の深さを認知することはできないと予想していたが,潜り直して深い基質を選択するのではなく,深い基質にもっぱら潜砂した.すなわち何らかの方法で水中を遊泳している段階で底質の深さを認知している可能性が示唆された. 続いて,行動に日周性がある活動期(非夏眠期)と,昼夜を通して砂中で過ごす夏眠期について,8種類の時計遺伝子の発現を比較した.まず各遺伝子を特異的に増幅するPCRプライマを設計した.続いて,非夏眠期と夏眠期の個体に由来するcDNAを鋳型にリアルタイムPCRを行った.解析の対象は8組織(脳,腸,肝臓,脂肪,筋肉,脂肪,皮膚,眼)とした.その結果,脂肪組織において発現に違いが認められ,非夏眠期ではbmal2とcry2,夏眠期ではbmal1とper2がそれぞれ発現しない可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
飼育実験と遺伝子解析に関して,予定していた実験を実施することができた.天然魚を扱うため不漁による制限を受けることが懸念されたものの,2024年度に使用する実験魚はすでに確保してある.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は遺伝子解析を中心として,また昨年度の結果を基に新たな飼育実験を実施する.潜砂には一定以上の深度が必要なことを確認できたため,今年度はより詳細にイカナゴの潜砂基質として必要な条件を明らかにする.また,時計遺伝子の発現について,定量的な解析を行うための実験系を構築する.具体的には,すでに設計したPCRプライマの組み合わせにより定量解析のための条件を検討する.これをもとに,潜砂深度の異なる個体間で発現様式を比較し,概日リズムの維持と時計遺伝子の機能について解析を実施する.また,耳石の輪紋構造解析により日周リズムの形成を確認するための手法を開発する.
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