研究課題/領域番号 |
23K05385
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
本間 智寛 東海大学, 生物学部, 准教授 (90435272)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | イソギンチャク / ハナギンチャク / ホネナシサンゴ / スナギンチャク / ツノサンゴ / ペプチド毒 / サワガニ / 卵母細胞 / サンゴ / ペプチド / タンパク質 / 神経毒 |
研究開始時の研究の概要 |
イソギンチャクの神経毒は多発性硬化症などの自己免疫疾患治療薬のリード化合物や、細胞膜にあるイオンチャネルの機能を解析するための試薬として有効利用されている。その一方で、六放サンゴ亜綱のイソギンチャク目以外のイソギンチャク近縁種(サンゴを含む)の毒については、ほとんど研究されていない。本研究ではイソギンチャク近縁種から、新たな医薬品のリード化合物やイオンチャネルの機能解析試薬に資する神経毒を探索し、有効利用することを目的として、新規構造の神経毒(ペプチド毒・タンパク質毒)の単離およびその性状と作用機構を解明する。
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研究実績の概要 |
当該年度はサワガニに対する毒性を指標に、すでに精製に着手していたムラサキハナギンチャク、ヒメハナギンチャク、イトイソギンチャクモドキからの毒の単離を試みた。その結果、ヒメハナギンチャクは精製の途中で活性が確認できなくなった。またイトイソギンチャクモドキは逆相HPLCにより毒成分の単離に成功し、プロテインシーケンサーに供したが配列を確認できず、試料の残量もわずかとなったことから、精製を断念した。代わりに近縁種のオオイソギンチャクモドキを新たに入手し、同様に精製を行ったところ、1成分の毒の単離に成功した。さらに別途、スナギンチャク目のマメスナギンチャクの1種からも4成分の毒の単離に成功した。ムラサキハナギンチャクは現在も精製を進めている。 一方、アフリカツメガエル卵母細胞に対する電気生理学的な作用を評価するアッセイ系では、すでにポア形成能が確認されているツノサンゴ目のウミカラマツとムチカラマツから本活性を指標に精製を行い、それぞれ1成分ずつを単離し、電気泳動で得られたバンドをシーケンサーに供したところ、いずれもイソギンチャクの溶血毒と相同性があることが分かった。また電気泳動から推定される分子量は既知の溶血毒より小さく、この点において新規性が高いことが期待され、現在cDNAクローニングによる構造決定を試みている。その他にも、新たに16の近縁種に対して同様のアッセイを行い、いくつかの種でカラマツ類と同様のポア形成能や、イオンチャネルへの作用が示唆された。 近縁種以外にも、従来からの研究対象のイソギンチャクからは、サワガニに対する毒性を指標にして、深海性のドフラインイソギンチャクから2成分、亜寒帯域に生息するオオイボイソギンチャクから9成分(致死毒6成分、麻痺毒3成分)の毒の存在を明らかにし、前者から1成分、後者から3成分をシーケンサーに供し、いずれも新規配列の毒であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はイソギンチャク近縁種のホネナシサンゴ目とスナギンチャク目より5成分のペプチド毒の単離に成功し、内2成分のN末端アミノ酸配列を解析したところ、哺乳類の抗菌ペプチドと相同性が見られる新規毒と判明した。しかしながら、同時期に近縁種とはまったく異なる分類に位置する海洋生物においても、同様の毒が単離された。その毒の方が近縁種よりも先に単離されたことから、精製過程でのコンタミネーションの可能性も考え、現在、その再現性について慎重に検討している。またツノサンゴ目のポア形成毒が、イソギンチャクのアクチノポーリン様の溶血毒であることが分かり、ツノサンゴ目の毒として最初の例となったことからも、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に単離したホネナシサンゴ目とスナギンチャク目の毒のサワガニに対する毒性評価(LD50の測定)およびcDNAクローニングによる一次構造決定を行っていく。また抗菌ペプチドであった場合、ポア形成毒としてサワガニの神経系に何かしらの作用を及ぼしている可能性が高いことから、その作用機構をツノサンゴ目の毒と同様に、卵母細胞を用いたアッセイによって検討する。 近縁種の中でも近年、六放サンゴ亜綱からハナギンチャク亜綱へと分類学上の位置が再検討されているハナギンチャク類には、タンパク質性のサワガニ致死毒の存在が確認できており、従来にない新規毒と予想されることから、その単離に注力したい。 ツノサンゴ目のアクチノポーリン様のポア形成毒については、引き続きcDNAクローニングを行うとともに、他の近縁種やイソギンチャクから単離した新規毒についても順次、クローニングによる構造決定を試みていく。
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