研究課題/領域番号 |
23K05389
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
小林 靖尚 近畿大学, 農学部, 准教授 (10643786)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | ハタ科魚類 / 性転換 / 幼魚 / 卵巣 / 精巣 / クエ / 生殖腺 |
研究開始時の研究の概要 |
現在、ハタ科魚類の増養殖は可能になっているが、種苗生産に要するコストが高額なため、その生産量は伸び悩んでいる。そのため申請者らが開発した「性転換を誘導した幼魚から, 精子を得る技術」は、オス親魚の確保や管理を容易にし、世代間隔の短縮にもつながるため、種苗生産のコストを大幅に削減する。そこで本課題ではハタ科魚類のクエあるいはマハタをモデルに、性転換誘導技術を組み込んだ実証的研究を行う。具体的には①小型オス作出法の改良を行う。次に②小型オスを用いた種苗生産を実践し、小型オスの実用性を確認する。さらに本研究では③精巣組織の由来を明らかにするため、早期性転換の基礎的な生理メカニズムについても解析する。
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研究実績の概要 |
ハタ科魚類の優良種苗系統を作出するためには、親魚の世代間隔を短縮する事が必須となる。そこで申請者らは、体サイズが小さく性成熟前のハタ科魚類の幼魚に着目し研究を進めている。 これまでに申請者らは、ハタ科魚類クエの幼魚(2歳)に人工アンドロゲンであるメチルテストステロン(MT)を含むコレステロールペレットを投与する事によって、メスからオスへの性転換を誘導可能である事を確認している。幼魚の性転換誘導は、世代間隔の短縮に加え、オス親魚の確保や管理に関わるコストの軽減に寄与する。令和4年度は、この性転換誘導技術を更に発展させるために、扱う事が可能な最小サイズであるクエの当歳魚 (1+) を対象とした。以下に詳細を述べる。 当歳のクエ幼魚(体重 = 117.01±15.32g)にMTを含むコレステロールペレットを投与する事により性転換の人為的な誘導を試みた。ペレット内のMT濃度は, 体重1kg当たり2mg あるいは5mgとなるように調整した。本研究で用いたクエ幼魚の生殖腺は全て極小で、MT投与は生殖対指数に影響を及ぼさなかった。投与60日後のMT投与個体の生殖線を組織学的に観察した結果、全ての投与個体で性転換誘導が確認された。しかし、これまで対象としていた2歳魚の小型オスは排精可能であったが、当歳魚の性転換個体の排精は確認出来なかった。そのため今後、小型オスの排精と機能性に関して解析する必要がある。また現在、クエ小型オスの精巣の長期的な変化に関しても解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クエの幼魚のメスからオスへの性転換を確実に誘導し、小型オスを作出する技術の開発は、概ね完了している。現在、未熟な卵巣が精巣へと転換する際の組織学的な変化や生理/分子メカニズムに関して解析を進めている。一方、MT投与によって作出した小型オスが、種苗生産用の親魚に適するかどうかを調べた結果、受精率には問題が見られなかったが、排精率および排精量が共に極めて低いことが明らかとなったため、今後は小型オスの機能性に関する解析を進めていく方針である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究によって作出したクエの小型オスの有用性を確認していく予定である。具体的には、小型オスの排精率と排精量を改善するために、飼育環境が小型オスの精巣機能に与える影響について解析していく予定である。加えて、クエの優良種苗系統を短期間で確立するために、新たに雄性発生個体を作出する準備も行う。また、これらの実験結果も含め、これまでの研究成果をまとめ、学会発表・投稿論文の準備を進めていく。
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