研究課題/領域番号 |
23K05398
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
佐藤 晋也 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (80709163)
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研究分担者 |
出井 雅彦 文教大学, 教育学部, 教授 (60143624)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 珪藻 / バイオミネラリゼーション / 形態形成 / 遺伝子 / 形態 / 細胞壁 |
研究開始時の研究の概要 |
珪藻はシリカの細胞壁をもつ単細胞藻類である。珪藻がどのようにシリカ細胞壁の形をデザインするのか,という点については謎が多い.これまで顕微鏡観察や生化学的なアプローチは多くなされてきたものの,両者から得られた結果を橋渡しする説明や知見はほとんど無い.本研究では珪藻細胞壁にみられる複雑で精密な構造のデザインがどのように遺伝的に制御されているのか,形作りに関与する遺伝的因子の探索を行う.本研究は,従来の珪藻シリカ細胞壁研究とは全く異なる観点から珪藻の形づくりを理解する試みである.
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研究実績の概要 |
これまでに屋久島、西表島や奄美大島にて採集を行い、それらのサンプルから複数の形態型を含むHydrosera属培養株を作成することに成功している。培養株は通常の培養条件下では極端に増殖速度が遅かったことから、通気培養や各種二酸化ケイ素源の添加を試みるなど培養条件を試行錯誤し、各培養株における最適培養条件を見出した。 各形態型の培養株から抽出したDNAを全ゲノム増幅したうえで、その増幅産物を用いてゲノムワイドにSNPsを探索するためGRAS-Di解析を行った。その結果、約6万のSNPが得られたもののそれらは期待に反して形態的特徴との相関を示さなかった。そこで配列断片の相同性解析を行ったところ、得られたSNPのほぼ全てが培養中で増殖した細菌由来であることが分かり、目的とする珪藻のゲノム由来の断片は150以下であった。 こうした結果をうけ、初年次の後半は無菌的な培養株を作成することに時間を割き、クリーンなデータを得るための検討を着実に進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各形態型の培養株から抽出したDNAを用いてゲノムワイドにSNPsを探索するためGRAS-Di解析を行った。当初は大量培養により解析に十分な量のDNAを確保する方針であったが、効率よく大量に増えない種類も多かったため、ごく少数の細胞を全ゲノム増幅キットに供しゲノムDNAを増幅することとした。これを鋳型として少数株でGRAS-Di解析を行ったところデータが得られることが確認できたため、多数の株を用いたGRAS-Di再解析を進めている。 現在までに得られた結果から、培養株中に混在していた細菌に由来する配列断片をシーケンスしているケースが多く見られた。この問題を解決するため、初年次の後半は以下の2通りのアプローチの条件検討を行った: 1) 抗生物質を用い培養株を無菌化する これにより、ある程度の数の細菌増殖を抑えることはできたものの、珪藻自体の発育状態が悪くなりさらに奇形を生じる株もあるなど、現在までに良い結果は得られていない。 2) 細菌由来配列断片を除いて解析 ターゲットとなる珪藻のドラフトゲノム配列に対して高い相同性を示さない配列断片は、細菌由来とみなし以降の解析からは除いた。ドラフトゲノムの完成度が十分ではないため、本来は珪藻由来の情報も除去してしまっている可能性があり、実際に得られる情報が非常に限られているという課題がある。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノムワイドな多型の探索に際し引き続きGRAS-Di解析を行うが、細菌の配列を除くためには高純度(細菌由来配列が無い)かつ高い完成度の珪藻ドラフトゲノムが必要である。そのため、抗生物質により無菌化した培養株をもとにゲノムシーケンスを行い、高品質なリファレンスゲノムの作成を進める。 また、作成した培養株に未記載種が含まれていた。本株は研究対象としているHydrosera属の特徴的な形質をもつため同属に含まれるものの、多種とは明瞭に形態が異なっている。引き続き形態形成を司る遺伝的因子を探索するための試料として用いるだけでなく、分類学的な検討も進め、プロジェクト終了時までに新種記載を目指す。
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