研究課題/領域番号 |
23K05443
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
鈴木 麻里子 神戸大学, 農学研究科, 助教 (50756658)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 砕石副産物 / 再資源化 / ため池コア材 / 食品加工資材 |
研究開始時の研究の概要 |
人工骨材である砕石,砕砂は製造時に多くの副産物(砕石脱水ケーキ,砕石粉)が発生し,その有効利用が強く望まれている.資源循環において重要視される点は,需給バランス,コスト,環境への負荷などが挙げられるが,砕石副産物の再利用先を明示し,多角的かつ詳細に検討した研究事例は少ない.これまで,砕石副産物に関する研究は土木分野での活用に焦点が当てられており,年間3千万トン発生する砕石副産物の受け入れ先としては不十分である.そこで,本研究では適用先を見据え,砕石副産物に対し様々な検討を実施し,分野の垣根を超えた再利用フローを構築する.
|
研究実績の概要 |
本研究は,人工骨材である砕石,砕砂製造時に発生する副産物(砕石脱水ケーキ,砕石粉)の分野の垣根を超えた再利用フロー構築を目的にしている.研究1年目の令和5年度は,以下の課題に取り組んだ. 1つ目の検討は,これまでの継続課題である【ため池遮水材としての有効利用に関する研究】である.実規模大の施工機械(4t級の振動ローラー)を用いた盛土試験を実施し,盛土施工管理基準であるD値95%を満足する結果が得られた.砕石副産物を用いたため池遮水材の検討に関しては,現在マニュアルの作成に取り組んでいる.また,従来,ため池底泥土の捨土処理にはセメントが多く用いられている.近年では,製紙製造過程に産出されるペーパースラッジ灰を利用したPS灰系改質材の高吸水性が注目され,利用されるケースが増加している.そこで,砕石粉の新たな活用法として泥土改良,運搬性向上を目的として,フロー試験により砕石粉による底泥土の流動性低減効果を検討した. 2つ目は新規課題である【食品×砕石副産物,新たな用途の創出】である.灰干しという干物加工技術をヒントにし,砕石粉の新たな活用方法として干物加工資材への適用の可能性について明らかにした.マダイを原料魚として選定し,砕石粉,シリカゲル,送風によって乾燥させ,質量測定や水分量測定,官能評価などで比較した.その結果,砕石粉によって製造された干物は,生臭さが少なく,身の締まりが向上することが示唆された一方で,マダイのような赤い皮の魚は,砕石粉によって乾燥処理を施すと退色につながる可能性が示された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のように,当該年度は,2つの研究テーマを軸に研究を遂行してきた.砕石副産物のため池遮水材への適用に関する研究では,概ねすべての検討が終了している.砕石粉と砕石脱水ケーキの適正な混合割合を物理特性,力学特性から明らかにし,繰返し三軸試験,動的遠心模型実験,実機による盛土試験により,ため池遮水材として相応しい施工性や耐震性を有することを明らかにした.また,砕石副産物によって製造されたため池遮水材の代替製品は安定して製造でき,品質のばらつきが小さいことが確認されている,2024年度中にはマニュアルを作成し,実施工を目指している. 新たな活用の検討では,砕石粉を初めて食品加工資材として適用することを検討した.予備試験などを重ね,乾燥に用いる砕石粉の量や乾燥時間を検討した.本試験では,マダイを対象として干物を製造し,官能評価などによって品質評価を実施した.成分分析な定量的な評価は実施できていないため今後の課題としている.以上のことより,総合的に判断すると,おおむね順調に進展していると評価した
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,これまでの研究を継続しながら,砕石副産物の新たな用途を模索する.砕石副産物のため池遮水材としての利用に関しては,マニュアル化を進め,実施工を目指す.食品加工資材としての利用では,異なる魚種に対して再度検討をし,再現性を確認する.また,理化学分析を実施し,グルタミン酸(うまみ成分)の違いなどを詳細に比較したい. ため池などに堆積する高含水比泥土は,そのままでは運搬できず,一般的にセメントなどの改良材で流動性を低下させ,運搬廃棄される.高含水比泥土の改良に,砕石粉などの粉体系副産物を添加することで流動性の低下や可搬性の向上につながるか定量的に評価し,砕石粉の再利用先の一つとして検討を進める.高含水比泥土にセメントなどの改良材を添加した場合は,廃棄されるケースが多いが,砕石粉などの副産物を用いた場合,耕土として利用できる可能性がある.よって,高含水比,高有機質泥土に砕石粉などの粉体系副産物を混合し植生試験を実施し利用可能性を検討する. さらに,コンクリート骨材として使用された砕石は,供用後,解体されコンクリートガラとして廃棄される.コンクリートガラは,分類され,骨材を取り出し再生骨材として路盤材などに使用されるが,その量は十分でない.よって,砕石の未来の姿である再生骨材の利用促進に関しても検討していく.
|