研究課題/領域番号 |
23K05446
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
佐藤 周之 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (90403873)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 無機系補修材料 / 表層品質 / 透気係数 / 農業水利施設 / RC開水路 / 無機系補修材 |
研究開始時の研究の概要 |
農業水利施設の長寿命化を目標として、様々な補修・補強工法の開発が進められている。本研究では、農業用RC開水路の補修工法のうち、最も適用事例の多い表面被覆工法を対象として、対策工法適用後に発生した補修材料の早期変状に関する全国調査を行うことで、特徴と発生原因の分析を行う。同時に、表面被覆工法で利用される無機系補修材料を対象として、室内試験ならびに既設構造物に対する現地試験により、とくに表層から侵入・進行する劣化(中性化、塩害、凍害、摩耗など)を表現する総合的な性能指標を確立する。続いて、補修工法適用開始直後からの性能診断スキームを構築することを目的とする。
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研究実績の概要 |
農業水利施設の長寿命化を目的として、RC(鉄筋コンクリート)構造物への補修・補強工法に関する手引きやマニュアルの整備が進められてきた。ところが、折角の対策工法にも関わらず、想定耐用期間を迎える前にひび割れや剥離などの変状を呈するケースが発生しており、その頻度は低いとは言い難い状況である。 本研究では、農業用RC開水路の補修工法のうち、最も適用事例の多い表面被覆工法を対象として、対策工法適用後に発生した補修材料の早期変状に関する全国調査を行うことで、特徴と発生原因の分析を行う。同時に、表面被覆工法で利用される無機系補修材料を対象として、室内試験ならびに既設構造物に対する現地試験により、とくに表層から侵入・進行する劣化(中性化、塩害、凍害、摩耗など)を表現する総合的な性能指標を確立する。続いて、補修工法適用開始直後からの性能診断スキームを構築することを目標としている。 本年度は、①特有の供用条件下における各種試験の適切な適用・評価方法の確立、②性能評価指標と原位置測定による判定結果の妥当性の検証、③性能指標の規定化と、合理性のある判断基準の確立、の三点に係る研究を開始した。①については、とくにダブルチャンバー式の表層透気試験を利用した場合の影響深さを求める室内実験であり、予定通りに実験を終え、成果を取りまとめている。②については、北陸農政局ならびに中四国農政局管内の補修済みの既設農業用RC開水路を対象とした現地調査を実施した。その結果、水路側壁の部位によって表層透気係数が大きく異なることを確認した。さらに、正確な評価に必要な測定点数について明らかにすることができた。③については、シングルチャンバー法とダブルチャンバー法の評価結果の相違ならびに既存のグレーディングと性能評価基準の妥当性を検証することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度予定していた研究内容のうち、室内実験としては①特有の供用条件下における各種試験の適切な適用・評価方法の確立が対象となった。検討内容としては、表層透気試験装置のうち、シングルチャンバー法の適用限界、すなわち施工完了後半年を超えると測定精度にばらつきが大きくなることを明らかにした。本結果は、試験方法の選択において貴重な情報になると考える。表層品質のグレーディングについては、ダブルチャンバー法の評価結果との整合性をとることができない領域が存在し、グレーディングそのものの見直しが必要であることが明らかとなった。ダブルチャンバー法については、影響深さというパラメータの影響範囲を概ね掴めたため、次年度に詳細を検証する予定である。 既設の補修後のRC開水路の表層品質評価については、当初予定していた農政局管轄を変更し、本年度は北陸農政局ならびに中四国農政局管内を対象とした調査・実験を行った。その結果、水路躯体のスパンごとの表層透気係数のばらつき、同一スパン内での側壁部位の違い(気中、喫水、水中)による評価結果の違いとばらつきについて明らかにすることができた。現在、研究成果を研究論文として取りまとめている最中である。 表層透気係数の性能評価指標としての妥当性については、本研究で対象とする補修用モルタルの場合、既存のコンクリートの実験結果から得られている表層透気係数のグレーディングでは妥当性が確保されていないことが明らかとなった。 以上のように、初年度の研究の進捗は、ほぼ想定をしていた計画通りとなっている。とくに、北陸農政局管内での調査を終えていたことで、本研究全体の遂行に能登半島地震の影響が及ぶことを避けることができたことは、不幸中の幸いであった。 問題としては、所有する透気試験装置(トレント)の故障である。修理用パーツの供給が終わっているため、急遽対策を講じる必要が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
室内実験による評価については、昨年度の研究を発展させる形で進める予定であり、現在のところ順調に進むと考えている。具体的にはダブルチャンバー法の影響深さの検討であり、厚みのバリエーションを増やす予定である。表面被覆材の種類について、評価の精度を高めるために増やす必要があるか、材料メーカーからの聞取りを行い検討する。 本年度の表面被覆工法を適用した農業用RC開水路の現地調査についてであるが、既に東北農政局管内(岩手県雫石)において24業者がH17、H18年に施工をした48工法が存在しており、管理機関として岩手県庁ならびに土地改良事業団体連合会との打合せを進めている。この場所は北海道と並ぶ過酷な凍害環境にあり、補修工法の標準耐用年数である20年にほぼ近い期間、供用をされている(19年)ため、性能評価による余寿命予測を判断する上でも非常に貴重な知見を得ることができる現場である。農閑期となる9月後半から積雪のリスクが高まる11月下旬までの間に現地調査を行う予定である。 北海道については、現在、寒地土木研究所のストックマネジメントを担っている研究グループとの打合せを進めており、凍害の条件の異なる地区内の補修後の既設RC開水路を共同で調査する予定である。また、中四国管内についても、香川県内の同種の構造物を対象とした調査を実施する。こちらは、中四国農政局香川用水二期事業所とのやり取りを既に進めている。このように、本年度も着実に予定している調査・実験を含む研究を遂行していく。
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