研究課題/領域番号 |
23K05450
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
近藤 正 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (70279503)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 中山間農地 / 谷津田 / 公益的機能 / 水田再生技術 / GIS / 水田ビオトープ |
研究開始時の研究の概要 |
高齢化と人口減少、耕作放棄が急速に進む地域として、積雪寒冷地域である秋田県の実際に荒廃農地の再生と復興に取組む地域において、中山間地域の保全に必要な知見と課題を小規模農山村基盤整備の観点から定量的に評価するとともに、再生と維持・利用の効果を明らかにし、持続的な国土の保全と再生に資することを目的とする。 荒廃地の農地再生と農地維持管理の現場技術の開発と併せ、多地域に展開しやすく汎用化の高い見える化ツールであるGISとGPS付き情報端末の農地基盤・耕地生態系サービス分野への応用で圃場群を統一的に評価する地域レベル評価への活用の2段階の効果実証で、農地基盤の持続性ポテンシャルの向上に資する。
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研究実績の概要 |
荒廃が進む谷津田上流部に水田を再生する上で最重要となる農道維持と用水確保、畦畔の維持保全と圃場排水性の確保の4項目に着目し、荒廃の状態に応じた効果的な再生対策を検討するとともに、省力的で維持管理しやすい用水供給構造や排水性向上と軟弱土壌克服を助ける水田承水溝を提案し、水田としての湛水機能の強化・維持とその効果を定量的に実証しつつ改良を加えることで安定した再生技術として確立することを目標に研究を開始した。加えて高齢化と耕作放棄が進む秋田県において、荒廃谷地における小規模流域単位の荒廃度評価、物質循環量や水文特性評価、多面的機能評価、生態系評価および生物資源生産量の経済的評価による総合的な地域機能の実態評価にも着手した。 初年度目の2023年度は、対象地区において地理情報システムGISを適用し、農地圃場図作成と現地における土地利用状況の実態調査をもとにしたデータ検証を実施した。荒廃した谷津田水田で、再生開始前の現地実測を開始した。水文・水質特性として荒廃農地における降雨流出強度などの水文応答特性や、水質変動特性、汚濁負荷収支等を、詳細な連続測定から定量予定である。また同時に生物資源生産量や生態系容量を明らかにするため生物調査、土壌調査、経営評価等の現状の定量解析を開始した。2023年7月14日の秋田7月豪雨により、男鹿市の観測点で水位計が流出する事態となり、水文特性評価は欠測期間が生じたが基本となる水位と流量との関係、降雨の観測体制を確立できた。 2024年度は再生の取組実施により、農地の多面的機能がどのように回復するかを定量的に評価する予定である。23年度は対策実施規模と再生規模のレベルに応じた機能向上との関連性を定量的に明らかにする予備調査が実施できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢化が進む秋田県にかほ市と、すでに荒廃し谷ごと消滅の危機にある秋田県男鹿市の谷津田域において、現地実証研究を開始した。両地区の圃場を概ねGIS情報に整理できた。 トキとの共生を目指す里地に指定された秋田県にかほ市では、地域の生物環境および農業者の意識調査を実施し、本来の生産ポテンシャルと農道等の施設維持管理実態、農家負担比率等を検討開始した。 また谷津部の再生取組域において、水文資源量の変動観測として谷間の小河川に流量計および水位計を設置し流量の観測を開始した。さらに雑木除去や刈り払い作業、畦の復旧再生作業を実施し、その労力・費用評価とともに、再生による生態系の回復効果、生産可能性向上効果等を整理し、24年度からの定量評価項目をまとめた。 トキの生育環境としては餌資源が大幅に不足していること。しかし、圃場整備区の外縁部の耕作放棄地と接する圃場群には、希少種ホトケドジョウや中流部では見られなかったドジョウの生息を複数箇所で確認することができ、かつて豊かだった生態系の痕跡を確認できたことで、水田ビオトープの設置による生態系回復の可能性を確認できた。営農者の意識調査からは生態系回復に取り組む意義を考えている農家が複数あるとともに、必要と考えない農業者も3割程度認められた。農業を継続する意義を経済的な観点はもとより、持続性と安全性を含む豊かさの指標として地域に確立する意義も確認された。
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今後の研究の推進方策 |
荒廃谷津田における水田再生上の技術開発と効果検証、荒廃谷地における小規模流域単位の荒廃度評価、物質循環量や水文特性評価、多面的機能評価、生態系評価および生産性評価による総合的な地域機能評価を進める。 水田再生では、1)農道維持、2)用水確保、3)畦畔の維持保全、4)圃場排水性の確保の4項目に着目し、①荒廃の状態に応じた効果的な再生対策を検討するとともに、②省力的で維持管理しやすい用水供給構造や排水性向上と軟弱土壌克服を助ける水田承水溝を提案し、水田としての湛水機能の強化・維持とその効果を定量的に実証しつつ改良を加え安定した再生技術として確立することを目標に引き続き研究を進める。
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