研究課題/領域番号 |
23K05465
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41040:農業環境工学および農業情報工学関連
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
水嶋 生智 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60239233)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 通電加熱触媒 / 低濃度エチレン / 効率的酸化分解 / ワイヤー触媒 / エチレン分解 |
研究開始時の研究の概要 |
農産物は自らが放出するエチレンによって熟成・老化するので、鮮度維持のためには空気中に存在する極低濃度のエチレンを効率良く分解する方法が必要となる。本研究では、直接通電によって瞬時に加熱できるワイヤー触媒を作製する。無通電(低温)時に空気中のエチレンを触媒表面に選択的に吸着・濃縮し、短時間の通電加熱によって捕捉したエチレンを一気に酸化・分解したのち通電を停止して速やかに冷却する。この操作を繰り返すことによって、分解効率を低下させることなく電力消費量の低減と冷蔵機器内の温度上昇の抑制が可能な高効率エチレン分解システムを構築する。
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研究実績の概要 |
青果物の長期保存のためには、青果物が放出するエチレンを効率良く分解する必要がある。本研究では、空気中に存在する極低濃度エチレンを表面に吸着・濃縮したのち、短時間の通電加熱で一気に分解できる通電加熱ワイヤー触媒の開発を目指す。 アルミニウムワイヤーをシュウ酸溶液中、DC50Vで1000min陽極酸化することにより表面に多孔質酸化物層を形成し、これを焼成してAl2O3/Alワイヤー(AAW)を得た。さらに、表面積増加と疎水性増加のためのシリカコーティングを施し、高い酸化活性を有するPtを担持してPt/SiO2/AAWとした。表面には直径約100nmの細孔を有する厚さ約120μmの酸化物層が形成されたことをSEMにより確認した。AAWの表面積は6m2/gで、シリカコーティングにより9m2/gに増加したが、Pt担持によってわずかに減少した。この触媒にDC15Vを印加すると表面温度は30sで約110℃まで上昇し、通電停止によって速やかに低下することを確認した。 容積約7Lの閉鎖循環系反応装置に触媒を設置し、100ppmのエチレンを含む乾燥空気を循環させながら10minに30sの割合で周期的にDC15Vを印加してエチレン分解試験を行った。Pt無担持のAAWやSiO2/AAWは分解活性を示さなかったが、Pt/SiO2/AAWは3hで約47%のエチレンを分解した。分解速度はPt/AAWの約1.5倍であったことから、シリカコーティングによる表面積増加によってエチレン吸着量が増加し、一度の通電加熱による分解量が増加したことが示唆される。相対湿度を30%に上げたところ、空気中の水の吸着によって分解速度は低下したが、シリカコーティングした触媒ではその減少を小さく抑えることができ、シリカコーティングが水の吸着を抑制したものと考えられる。以上の結果より、この触媒の有効性が示されされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルミニウムワイヤーの径、陽極酸化の電圧と時間、シリカコーティングの方法と条件、Pt担持方法等を変えて触媒を調製し、種々の構造・物性解析や反応試験によって最適な調製条件を決定するとともに、この通電加熱ワイヤー触媒が低濃度エチレンの効率的な酸化分解に有効であることを実証した。これらの成果については令和5年11月11~12日に開催された第54回 中部化学関係学協会支部連合秋季大会において、「低濃度エチレン分解用通電加熱ワイヤー触媒の調製」という題目で発表している。 研究はほぼ計画通りに進行しており、現在はさらなる効率向上に向けてエチレン吸着能の改善等を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
(1) エチレン吸着能の改善 シリカコーティングによる表面積増加によってエチレン吸着量が増加し、さらに空気中の水による分解効率の低下をある程度抑制できることがわかったが、これらをさらに改善するには、高湿度でも高いエチレン吸着能を示すAgの担持が有効と考えられる。ただし、Agには吸着エチレンを酸化する能力はないので、Ptとの共存が必要であり、PtとAgの最適担持量を調査する。 (2)アルミニウム管状触媒の開発 アルミニウムは比抵抗が比較的小さいので、太いワイヤーでは電気抵抗が小さく、直接通電による加熱には向いていない。そこで現在は直径0.5mmの細いアルミニウムワイヤーを用いているが、この場合強度や耐久性がやや低いという問題がある。そこで、ワイヤー状触媒に代えて、新たにアルミニウム管状触媒を開発する計画である。アルミニウム管の外壁に陽極酸化処理、シリカコーティングおよび活性成分担持を施して触媒化し、この管の内径と同じ外径を有するカートリッジヒーターに装着して通電加熱触媒として使用する。アルミニウムは熱伝導率が高いので、通電によって触媒温度は直ちに上昇し、ワイヤー触媒と同様に、周期的な短時間の通電によるエチレン分解が可能と考えられる。この方法は上記のアルミニウムワイヤーの弱点を解決できるだけでなく、より自由度の高い触媒設計が可能になると期待される。
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