研究課題/領域番号 |
23K05466
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41040:農業環境工学および農業情報工学関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
岡島 賢治 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (90466805)
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研究分担者 |
伊藤 良栄 三重大学, 生物資源学研究科, 助教 (30232490)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 渓流流量 / タンクモデル / 溢水リスク / 画像認識 / 水位計測 / 山腹水路 / 洪水緩和機能 / スマート管理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、スマート技術を導入した中山間地域の農業水利施設から得られるデータを活用することで、中山間地の農業水利施設の持つ多面的機能の1つである洪水緩和機能を定量的に把握できる技術を開発することを目的とする。また、気象庁の短時間降水予測値をもとに流入渓流水と上流から流れてくる用水を合わせた水位予測を行い、予測水位データをもとにゲート操作など積極的な洪水緩和機能が発揮できるシステムの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
山腹水路は,渓流からの水を一時的に受け止めて下流へ流下させる機能を有しており,水路の流下能力を超える流入があった場合には放水ゲートから河川へ放水する機能を有している.しかし,管理者は天気予報を見て渓流流入流量を予想して,数地点の水深データや水路の映像を見ながらゲート操作を行っている.山腹水路のゲートの多くを占める手動の機側操作のゲートでは細やかな操作が難しく,数時間前から溢水リスクを予想してゲートを開けに行っている.そこで,本研究では,山腹水路における水深と降水量のデータから渓流流入流量を予測可能なモデルを構築することを目的とした.渓流上下流の2地点の水深データを流量観測から作成した水位流量曲線により流量データに変換した.水深が大きく降水量が多い時期であり,溢水リスクが高いと考えられる灌漑期を対象として渓流流入流量のタンクモデルを構築した.タンクは上から1段目のみ流出口が2つ,その他は流出口1つで,一番下の段のタンクに流域外に漏出する口のある4段タンクとした.アメダス粥見観測所の観測史上1位の最大1時間降水量を記録した2015年8月24日~26日の降水イベントにおいて、計算水深が水路壁高さ1mを超えた.よって,この降水イベント時に何もゲート操作をしなかった場合,鳴谷ゲート地点で溢水が発生するリスクが高いことが示された. また、見回り労力の軽減,管理の効率化と言った効果から維持管理における負担軽減にもつながることを目的に、セマンティックセグメンテーション(以下SS)を用いて水面検出率の向上を試み,水位を算出した.深層学習を用いて水面検出を行うことにより,平均水面検出率は89%となり,先行研究の水面検出率を上回る結果となった.全地点での水位算出の最大誤差は127.2mm,平均誤差においては61.4mmとなった.水管理上十分な精度で水面検出,水位算出できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、新たにIoT水位計を設置して水位計のデータをもとにした洪水緩和機能を解析する手法の確立と、画像からの水位データ取得手法の開発を目指す。洪水緩和効果のうち「貯留効果」「流出遅延効果」について、渓流の上下流水位から渓流流入の流量を推定するタンクモデルの構築を行った。これにより、洪水緩和効果の算定のために必要な渓流の流入流量が雨量から求めることができるようになった。IoTトレイルカメラの画像情報から水位を数値データとして取得するプログラムについては、研究分担者がすでに着手している技術を改善させ、セマンティックセグメンテーションという画像解析手法を用いることで、水位降下時の水面検知能力についても精度よく検出できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は2人の研究者による研究分担で行っている。研究代表者と分担者として分担領域を明らかにしながら、本研究の研究計画を示す。渓流水が流入する山腹水路が有する洪水緩和機能は、流入水を一時的に水路に貯留する「貯留効果」、流入水を水路下流まで流下させて河川へ放水することによる「流出遅延効果」、流域界をまたぐ直前の地点での適切な放水をすることによる「別流域の洪水低減効果」の3つが考えられる。 本研究では代表者が観測データの収集および分担者とともに洪水緩和機能の検証を行っている。代表者は水路に設置されている水位計データをもとに洪水緩和機能を評価しうる水文・水理解析モデルの構築を行っている。分担者は水路に設置されている画像データから水位の数値データを取得する画像解析、深層学習による雨量データからの対象地点での水位予測手法の開発をしている。 令和5年度に計画通り、渓流からの流入流量のモデル化と画像解析による水位の数値データの取得という2つの技術開発ができた。令和6年度はこれらの技術を統合することで、気象庁の短時間降水予測値で予測可能な水位データの予測モデルの構築を目指す。
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