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酸性分泌型PR-5タンパク質の塩吸着性に関する分子生物学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K05485
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分41050:環境農学関連
研究機関茨城大学

研究代表者

小島 俊雄  茨城大学, 農学部, 准教授 (70311587)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワードPR-5 / タンパク質機能 / ダイズ / 塩ストレス / 耐塩性作物
研究開始時の研究の概要

ダイズの塩ストレス応答遺伝子GmOLPaは、細胞外に分泌される酸性PR-5タンパク質をコードしている。同タンパク質は、ダイズPR-5の中でも特に低い等電点を示し、その分子表面はほぼ負電荷に覆われている。GmOLPaタンパク質は理論上、低いpH環境にある細胞外でも分子表面を負に帯電できることから、塩ストレスによって細胞外に蓄積したNa+をその負電荷を介して吸着し、細胞内へのNa+の流入を防いでいるのではないかと推測している。本研究では、分子生物学的・生化学的解析によりGmOLPaの塩吸着性を証明し、植物の塩ストレス応答・耐性機構における分子機能および生理的役割を明らかにする。

研究実績の概要

ダイズの塩ストレス応答遺伝子GmOLPaは、細胞外に分泌される酸性PR-5タンパク質をコードしている。同タンパク質は、ダイズPR-5の中でも特に低い等電点を示し、その分子表面はほぼ負電荷に覆われている。GmOLPaタンパク質は理論上、低いpH環境にある細胞外でも分子表面を負に帯電できることから、塩ストレスによって細胞外に蓄積したNa+をその負電荷を介して吸着し、細胞内へのNa+の流入を防いでいるのではないかと考えた。本研究では、“塩吸着性”の視点からダイズの塩ストレス応答・耐性機構におけるGmOLPaの分子機能および生理的役割を明らかにする。
令和5(2023)年度は、主に(1) 大腸菌発現系で生合成したGST融合GmOLPaタンパク質のNa+に対する塩吸着性、(2) GmOLPaを過剰発現する形質転換タバコの塩ストレス条件における形質変化を評価した。(1)に関して、植物細胞外と同程度のpH5.0環境において精製GmOLPaタンパク質と塩化ナトリウムを混合したところ、GmOLPaがNa+と結合できることが明らかとなった。また、塩化カリウムと混合するとK+と結合することも分かった。(2)について、GmOLPa過剰発現株を確立し、野生株(非形質転換株)と比較したところ、塩ストレス環境下においてGmOLPa過剰発現系統の地上部が大きくなること、成熟葉の水分含量が増加していることが明らかとなった。以上の結果は、細胞外環境においてGmOLPaが陽イオンに対して結合性を示す可能性、GmOLPaの過剰発現が葉の水分量を高める可能性を示した。今後は、これらの結果の再現性及び詳細な生化学・分子生物学的解析を通じて、塩ストレス応答・耐性機構におけるGmOLPaの分子機能を特徴付けする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

【解析Ⅰ】GmOLPaタンパク質のNa+に対する塩吸着性評価:分子シャペロンを共発現するGST融合GmOLPaタンパク質発現系を確立し、大腸菌から同タンパク質を精製する実験系を確立した。pH5.0環境において精製タンパク質と100 mM NaClを混合し、原子吸光分析により精製タンパク質のNaに対する結合性を調べたところ、GmOLPaはNa+と結合できることが明らかとなった。一方、100 mM KClを用いた同解析でK+が結合したことから、GmOLPaタンパク質はpH5.0環境で陽イオンに対する吸着性を示し、Na+に対する結合特異性を示さないことが示唆された。
【解析Ⅱ】塩ストレス環境下におけるGmOLPaタンパク質の細胞内局在解析:GFP融合GmOLPaを過剰発現するタバコBY-2細胞の蛍光顕微鏡観察から、同タンパク質が細胞外に局在していることが示された。原形質分離を起こさせた同BY-2細胞を観察したところ、細胞膜周辺にGFP蛍光が観察されたことから細胞膜に結合している可能性が示された。
【解析Ⅲ】GmOLPaの過剰発現による植物の耐塩性への影響:GmOLPaを過剰発現する形質転換タバコを複数系統確立した。また、GmOLPaに類似した立体構造をもつが分子表面が正に帯電しているGmOLPcの過剰発現株も作成した。200 mM NaCl環境における生育状況を観察した結果、GmOLPa過剰発現系統は野生株(非形質転換株)より地上部が大きくなることが分かった。また、生理学的な変化を調べたところ、成熟葉の水分含量が増加していること、Na/K比に変化が生じていることが分かった。
その他、GmOLPaを過剰発現する形質転換ダイズの作成も進めており、候補系統がいくつか得られている。以上の研究成果及び準備状況から「おおむね順調に進展している」と評価した。

今後の研究の推進方策

【解析Ⅰ】GmOLPaタンパク質のNa+に対する塩吸着性評価:令和5(2023)年度の研究から、GmOLPaタンパク質が細胞外と同程度のpH環境でNa+だけでなくK+と結合することが示された。この結果の再現性とより定量的なデータを取得するとともに、細胞内外空間だけでなく液胞と同程度のpH環境におけるNa+結合性を調べるほか、熱や還元剤による変性状態での結合活性等も評価し、分子機能としてGmOLPaの塩吸着性を生化学的に特徴付けたい。
【解析Ⅱ】塩ストレス環境下におけるGmOLPaタンパク質の細胞内局在解析:GmOLPaの細胞内局在が細胞内への塩の流入にどのような影響を与えるか評価するため、蛍光指示薬ナトリウムインジケーターを用いて細胞内外のNa+量を可視化・定量する。この解析を通じて、GmOLPaの局在と塩吸着性、Na+の流入制御、それによる耐塩性への影響を評価したい。
【解析Ⅲ】GmOLPaの過剰発現による植物の耐塩性への影響:耐塩性試験では様々な塩ストレス条件、発達ステージを対象に実施し、GmOLPaの発現が植物の生存率や形質、着花数、種子稔性等にどのような影響を与えるか評価する。また、形質転換植物の各組織で発現するGmOLPaに結合した陽イオンを定量するとともに、それぞれの組織に蓄積したNa+やその他の陽イオンの変化を原子吸光法等により定量する。そこにRNA-Seq法やリアルタイムPCR法によって解析した遺伝子発現データを加え、各植物組織におけるGmOLPaの発現とNa+蓄積量、さらには陽イオンの分布や遺伝子発現に与える影響を評価したい。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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