研究課題/領域番号 |
23K05493
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41050:環境農学関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
山崎 秀雄 琉球大学, 理学部, 教授 (40222369)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | アカウキクサ / 沖縄 / 絶滅危惧種 / 特定外来生物種 / 在来種 / Azolla / 環境応答 / 外来種 / 活性酸素 / 活性窒素 / 活性硫黄 |
研究開始時の研究の概要 |
アカウキクサAzollaは、水田や池に浮遊している水生シダ植物である。近年、繁殖力の強い外来移入種が国内に定着しており、外来生物法上の特定外来生物に指定されるなど、自然生態系への影響が懸念されている。アカウキクサは、環境の悪化を検知すると、根を自切して分離拡散する特異な生理応答を示す。アカウキクサに見られる根の自切応答は、既知の植物器官脱離の中では最も速い生理反応として知られており、未知の環境応答機構が関与していると考えられている。本研究では、アカウキクサの根自切現象の機構全容解明を目標として、在来絶滅危惧種の保護、および特定外来生物種の繁殖防止策の立案に資する生物学的学術基盤の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
アカウキクサ(Azolla)は、水田や池に浮遊している水生シダ植物である。近年、繁殖力の強い外来移入種が国内に定着しており、外来生物法上の特定外来生物に指定されるなど、自然生態系への影響が懸念されている。アカウキクサは、環境の悪化を検知すると、根を自切して分離拡散する特異な生理応答を示す。アカウキクサに見られる根の自切応答は、既知の植物器官脱離の中では最も速い生理反応として知られており、未知の環境応答機構が関与していると考えられている。本研究では、アカウキクサの根自切現象の機構全容解明を目標として、在来絶滅危惧種の保護、および特定外来生物種の繁殖防止策の立案に資する生物学的学術基盤の確立を目指す。初年度は、沖縄におけるアカウキクサの生育現状調査と完全人工環境下での栽培技術の確立を検討した。 沖縄でのアカウキクサ在来種であるAzolla pinnataは、年々、外来種に置き換わっており、沖縄本島で自生している箇所が殆ど見られなくなっている。最後の大規模自生地と思われた地域も、本年の野外調査の結果、外来種と思われる2種の繁茂が見られ、沖縄本島からの絶滅が現実的になってきていることが示唆された。アカウキクサの種分類は当該専門分野でも混乱しており、属名や種名を含めて統一的な見解がなく、専門家でも外見だけで外来種を判断することは容易ではない。そこで、在来種の保全対策の前提となる外来種の判別法を、アカウキクサの外部形態を基準に比較検討を行った。その結果、沖縄に侵入している外来種は、Azolla cf. carolinianaとAzolla cf. microphyllaであるとの結論に至った。これら3種の人工環境下での栽培条件を検討し、今後の生理実験および細胞生物実験の研究基盤を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに実験に使用してきた沖縄在来種のアカウキクサAzolla pinnataの最後の自生地に、本年の7月に外来種二種の繁茂が初めて観察された。沖縄本島の他のアカウキクサ自生地は全て、在来種は駆逐され、外来種に置き換わっていることから、最後の自生地からも在来種が絶滅する可能性が浮上した。そのため、当初研究計画を変更して、侵入してきた外来種の種同定と、在来種の完全人工環境下での長期栽培法の確立を優占課題として実施した。使用する栽培光LEDの光組成(可視光、青色光、赤色光、紫外光、遠赤外光)および光強度を検討し、人工栽培環境の条件確立をおこなった。併せて、外来種の根の自切生理応答を調べたところ、外来種でも定性的には在来種と同様の結果が得られたことから、将来的な比較生理実験の基盤ができたと考えている。全体としての進捗状況はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終目標は、アカウキクサの根の自切応答における環境情報の受容メカニズムの解明である。本年度に3種の外部形態観察研究の実施によって、走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)の適応が可能になった。生化学および細胞生物学的解析に入る前に、アカウキクサ個体を用いて、カルシウムや硫黄、鉄などの元素の細胞内局在と集積の情報をSEM-EDXにより得ることを予定している。比較生理学の実験試料として3種のアカウキクサの栽培法が確立したことから、環境応答機構の普遍性と種間差を明らかにし、生化学的素反応の特定を進め、最終年度のメカニズム証明のための基礎知見の蓄積を計る。
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