研究課題/領域番号 |
23K05494
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41050:環境農学関連
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
伊藤 貴文 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (10402827)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | chitin / chitobiose-binding / histidine kinase sensor / two-component system / Paenibacillus sp. / chitin utilization / ABC transporter |
研究開始時の研究の概要 |
キチンは自然界に豊富に存在する多糖であり、その分解産物であるオリゴ糖には多種の機能性が認められている。しかしながら、キチンは非常に難分解性であり、分解過程を制御することは難しく、利用は限定的でもある。申請者らはキチン分解に優れたPaenibacillus 属細菌 (P. FPU-7) を見出した。本研究では、細菌による多糖分解の制御を目指して、(1) キチンオリゴ糖を認識し、細胞内へ取り込むタンパク質複合体の機能を解析し、(2) それらのタンパク質や酵素の発現を制御する機構を解析する。そして、これらの研究を基盤として、キチンのみならず未利用資源となっている多糖の利用拡大に資する。
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研究実績の概要 |
キチンなどの多糖は、生物が作る再生可能な資源である。本研究では、その有効利用のために、「Paenibacillus属細菌によるキチン分解の制御機構の解明」を行っている。本年度は、キチン分解に関わる遺伝子の発現を制御する機構 (二成分制御系) の解析に関して、下記のことを行った。 (1) 二成分制御系細胞外センサードメインの構造解析: これまでにキチンの存在を検知すると予想される二成分制御系タンパク質NagS (センサータンパク質) とNagR (レスポンスレギュレーター) の遺伝子を検出し、NagSのセンサードメインのみ (NagS30-294) とNagRの組換えタンパク質をそれぞれ大量に調製している。そして、NagS30-294の微結晶を取得している。本年度は放射光実験施設を利用して、X線回折実験を行い、その立体構造を1.8 Åで決定した。 (2) 二成分制御系細胞外センサードメインの機能解析: これまで複数種の手法を用いて、二成分制御系細胞外センサードメインNagS30-294がキチン2糖と直接結合するのか確認しているが、結合するデータは得られていない。また、ゲルろ過によって、NagS30-294はキチン2糖非存在下ではNagB1と複合体を形成しないが、キチン2糖存在下でNagB1と複合体を形成することを明らかにしている。つまり、NagSは、キチン2糖をNagB1を介して認識する。本年度は、動的光散乱法により、この認識機構をさらに裏付ける結果を得た。 (3) 二成分制御系レスポンスレギュレータータンパク質の調製: 本年度は、大量に調製されたNagRの組換えタンパク質を2種類のカラムクロマトグラフィーによって、SDS-PAGE上で1つのバンドとなるまで精製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の研究計画の通り、おおむね進めることができた。二成分制御系タンパク質のうち、センサータンパク質NagSのセンサードメインに関して、立体構造解析と機能解析が完了し、論文発表と学会発表を行った。現在、キチン分解に関わる遺伝子の発現制御に関わるレスポンスレギュレータータンパク質NagRの機能解析を進めている。 (1) 二成分制御系細胞外センサードメインの構造解析: キチンの存在を検知すると予想される二成分制御系タンパク質NagSの細胞外センサードメイン(NagS30-294) の立体構造をX線結晶構造解析により1.8 Åで決定した。 (2) 二成分制御系細胞外センサードメインの機能解析: ゲルろ過により、NagS30-294はキチン2糖非存在下ではNagB1と複合体を形成しないが、キチン2糖存在下でNagB1と複合体を形成することを示した。さらに、本年度、動的光散乱法により、この認識機構をさらに裏付ける結果を得た。NagSは、キチン2糖をNagB1を介して認識する。一方、示差走査蛍光定量法、ゲルろ過、Biacoreを用いた分析を行ったが、NagSが直接キチン2糖と結合するデータは得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
下記、交付申請書に記載した通り、研究を進めていく。 (1) キチン分解に関わる遺伝子の発現を制御する機構の解析 (二成分制御系の解析): P. PFU-7の一部のキチン分解酵素は、キチン2糖によって発現が誘導される。これまでにキチン2糖結合タンパク質 (NagB1) 近傍の配列に遺伝子発現制御系の一つである二成分制御系のタンパク質複合体 (NagSとNagR) を見出し、NagSに関して、そのセンサードメインの構造と機能解析が終了した。今後は、NagS全長の構造と機能解析を進める。また、NagB1、NagZおよび二成分制御系 (NagSとNagR) がキチン2糖をシグナルとして協奏的に機能を果たしているのか、RT-qPCRによる転写解析およびウエスタンブロッティングによる翻訳解析によって確認も行う。さらに、NagRが相互作用する塩基配列に関してはクロマチン免疫沈降法によって、相互作用するタンパク質に関してはプロテオミクスによって、網羅的に同定する。そして、P. FPU-7あるいは近縁種を有用物質の生産菌として利用できるように、タンパク質の発現制御法への展開を図る。 (2) 細胞表層発現タンパク質の網羅的解析: P. FPU-7の細胞表層に存在するタンパク質を質量分析装置を利用して網羅的に解析した結果、alpha-グルカンと結合するタンパク質を見出している。今後は、本タンパク質の構造と機能の解析も進める。これらの解析から、P. FPU-7や近縁種による有用物質の効率的な生産方法の確立にも期待される。
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