研究課題/領域番号 |
23K05541
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山口 卓哉 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (60865111)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | マクロファージ / クッパー細胞亜集団 / TRPチャネル / 酸化ストレス / クッパー細胞 / マウス / 薬理学的制御 |
研究開始時の研究の概要 |
肝臓常在性マクロファージであるクッパー細胞は、微小環境の変化を鋭敏に感知してその機能を調節し、肝臓の恒常性維持や生体防御において重要な役割を果たしている。クッパー細胞の機能調節に関わる分子メカニズムの理解は、肝臓の病態に対する新たな治療標的の掘り起こしに繋がる可能性がある。 本研究では、種々の環境変化を感知するセンサー分子であるTransient receptor potential (TRP) チャネル群に着目し、クッパー細胞の機能発現や活性化/抑制機構に関与しているTRPチャネル分子をマウスにおいて探索し、TRPチャネルを介したクッパー細胞制御の可能性を探る。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、肝臓常在性マクロファージであるクッパー細胞の機能調節や活性化/抑制機構においてTRPチャネルが果たす役割を解明することである。 令和5年度は、マウスのクッパー細胞におけるTRPチャネルの発現解析を行った。クッパー細胞には機能的に異なる亜集団、すなわち、貪食能や活性酸素種産生能の高いCD68+亜集団と、サイトカイン産生能の高いCD11b+亜集団が存在することが知られている。そこで、C57BL/6Jマウスからこれらのクッパー細胞亜集団と、対照として脾臓・骨髄由来マクロファージをセルソーターにより各々分取した。細胞の免疫染色には抗CD45、抗CD68、抗CD11b、抗F4/80、抗Gr-1の各抗マウス抗体を購入し使用した。分取した各細胞を用いて定量的遺伝子発現解析を行ったところ、Clec4FやVSIG4遺伝子が各クッパー細胞亜集団のみで高発現しており、分取した各亜集団がクッパー細胞の性質を示すことを確認した。次に、肝臓単核球で発現が見られたTRPV2, TRPV4, TRPM2ならびにTRPM7各遺伝子の発現解析を行ったところ、各亜集団におけるこれらTRPチャネルの発現パターンに差が認められた。特にTRPM2は亜集団間における遺伝子発現量の差が大きく、CD11b+亜集団におけるTRPM2発現量はCD68+亜集団のおよそ600倍であった。 さらに、各亜集団の機能調節におけるTRPチャネルの役割を解明するための予備的な実験を行った。肝臓単核球を一晩培養した後、ピペッティングで非接着細胞を除去し、クッパー細胞に富むと考えられる接着性の高い細胞集団を得た。これらをTRPM2活性化剤である過酸化水素で数時間インキュベートしたところ、炎症性サイトカインIL-1βの遺伝子発現に上昇傾向が見られたが、この上昇はTRPM2阻害剤であるJNJ-28583113によって抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の研究により、2つのクッパー細胞亜集団におけるTRPチャネル発現プロファイルが異なっていた上、TRPM2のように、各亜集団における発現レベルに大きな差があり、機能的にも活性化剤や阻害剤に対して応答性を示すチャネルがあることを見出した。 この結果は、クッパー亜集団の機能的な違いを生み出す分子機構にTRPチャネルが関与している可能性を示唆するものであり、令和6年度以降の研究に弾みをつけるものである。 以上の点から、本研究はここまでのところ順調に進捗しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
CD68+クッパー細胞亜集団とCD11b+クッパー細胞亜集団において発現レベルに大きな差が認められたTRPM2について、さらに解析を進める。令和6年度は、分取したこれら亜集団に対してTRPM2活性化剤および阻害薬を用いた解析を行う。加えて、TRPM2を欠損させたマウス(TRPM2KOマウス)を用いた解析を行う計画である。野生型マウスと同様の解析に加え、野生型マウスとTRPM2KOマウスのクッパー細胞亜集団のポピュレーションや、それら細胞におけるbasalな遺伝子発現レベルを比較することにより、TRPM2が欠損することによる影響を調べる予定である。TRPM2KOマウスを用いた実験は令和5年度において準備を進めており、令和6年度より実験が開始できるものと見込んでいる。 上記に並行して、TRPM2以外のTRPチャネルについても解析を行う。本報告書の通り、令和5年度の解析によりTRPM2を見出すに至ったが、TRPM2以外にも、TRPV4やTRPM7などのチャネルがクッパー細胞機能調節に関与している可能性も考えられる。これらのチャネルの各活性化薬や阻害薬を用いて野生型マウスのクッパー細胞をインキュベートし、クッパー細胞の貪食能やサイトカイン産生能に変化が表れるのかを調べる。
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