研究課題/領域番号 |
23K05553
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
椎名 貴彦 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90362178)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 食道 / 蠕動運動 / 横紋筋 / 中枢神経系 / 延髄 / 迷走神経 |
研究開始時の研究の概要 |
哺乳類の食道筋層は、口に近い部分が横紋筋で胃に近い部分が平滑筋で構成されているか、もしくは全長に渡って横紋筋で構成されている。これは、小腸や大腸といった他の消化管の筋層が平滑筋で構成されているのとは異なった、食道に独特の特徴である。食道横紋筋の機能を解明することで、食道梗塞や巨大食道症といった食道特有の運動疾患の解決に向けて有効な情報を得られると考えられる。そこで本研究は、食道横紋筋の蠕動運動の調節機構を解明することを目的とする。食道内部の食物を検知した結果、中枢神経系(主に延髄)は迷走神経を介してどのように食道横紋筋の運動を調節するのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
ほ乳類の食道筋層は、口に近い部分が横紋筋で胃に近い部分が平滑筋で構成されているか、もしくは全長に渡って横紋筋で構成されている。これは、小腸や大腸といった他の消化管の筋層が平滑筋で構成されているのとは異なった、食道に独特の特徴である。食道横紋筋の機能を解明することで、食道梗塞や巨大食道症といった食道特有の運動疾患の解決に向けて有効な情報を得られると考えられる。 食道横紋筋は「骨格筋」と見なされており、運動制御に関わる思われる因子は骨格筋と共通あるいは類似している。平滑筋は細胞同士がギャップ結合で接合して細胞間の情報伝播が可能であるが、骨格筋は細胞同士が独立して運動神経の支配を受けている。細胞同士の情報伝播ができない構造であるにも関わらず、食道横紋筋は平滑筋で構成される小腸や大腸のように筋収縮が「伝播」して蠕動運動を起こし、摂取した食物を運搬することができる。この運動は「迷走-迷走神経反射」によって制御されると考えられている。それは、食道内腔の食物の情報を迷走神経が感知して延髄に伝えて、延髄でその情報を統合して食道横紋筋へ情報を送り、蠕動運動は調節されているというものである。この中枢神経系による食道蠕動運動の制御には不明な点が多い。反射の繰り返しによって蠕動波が伝播する「反射繰り返し方式」が最も受け入れやすい考え方であるが、食道内腔の食物に由来する刺激が延髄に伝わると延髄にセットされたパターンで蠕動が起こる「パターンジェネレーター方式」も予想される。食道横紋筋の制御を真に理解するためには、いずれの方式で制御されるのか、さらにその制御機構の仕組みを詳細に探索する必要がある。本研究の目的は、食道横紋筋の蠕動運動の調節機構を解明することである。具体的には、食道内腔からの情報を起点に、延髄-迷走神経を介して食道横紋筋がいかに運動を調節されるかを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の計画は、横紋筋食道における蠕動運動が「反射の繰り返し」によって制御されるのか、「パターンジェネレーター」による制御を受けているのかを明らかにすることであった。中枢神経系を含めた応答を検索する必要があるため、中枢神経系を含む丸ごと動物を用いたin vivo実験系を使用した。実験動物には、食道筋層を構成する筋がすべて横紋筋であり、これまで食道横紋筋研究の知見を蓄積してきたラットを主に用いた。 まず、延髄-迷走神経による食道蠕動運動の誘発の実験条件を検討した。ウレタンで麻酔したラットの食道内腔にバルーンを設置し、バルーンの移動速度や移動距離、バルーン内圧の変化を指標にして、in vivoで食道蠕動運動を評価した。食道内腔のバルーンを拡張して伸展刺激を加えると、食道蠕動運動が誘発された。迷走神経の切断によって、食道蠕動運動は起こらなくなった。さらに、迷走神経を電気刺激することで食道蠕動に類似した運動が誘発された。以上の結果から、迷走神経反射による食道蠕動運動をラットにおいて誘発する実験条件を確立した。 次に、誘発された食道蠕動運動が、「反射の繰り返し」によって制御されるのか、「パターンジェネレーター」による制御を受けているのかを検討した。ウレタンで麻酔したラットの食道内腔にバルーンを2つ設置し、蠕動が起きても動かないように固定した。バルーン内圧の変化を指標にして、in vivoで食道蠕動運動を評価した。バルーンを置く位置によってバルーンから記録される食道内圧変化のパターンが異なり、どちらの制御が主なのか判定できなかった。ただし、この実験系によって食道蠕動運動を評価することが今後可能となることは確認できた。以上のことから、概ね計画通りに研究は進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、前年度の成果を踏まえて、横紋筋食道における蠕動運動が「反射の繰り返し」によって制御されるのか、「パターンジェネレーター」による制御を受けているのかをさらに検討していく。ウレタンで麻酔したラットの食道内腔にバルーンを2つ設置し、蠕動が起きても動かないように固定する。バルーン内圧の変化を指標にして、in vivoで食道蠕動運動を評価する。一方のバルーンを拡張することで伸展刺激を付加して、もう一方のバルーンで圧変化が生じるかどうか調べる。また、迷走神経の切断、あるいは刺激によってバルーン圧がどのように変化するか調べる。 さらに、食道横紋筋の蠕動運動に関与する脳領域の同定についても、検討を開始する。食道内腔のバルーンを拡張して伸展刺激を与えたのち、脳や脊髄におけるc-Fos発現を調べて、蠕動運動誘発時に活性化する脳領域を同定する。食道壁にトレーサー分子を投与し、脳内のどの領域にトレーサーが検出するかを解析する。また、脳内にトレーサー分子を投与し、食道内でトレーサーが検出するかを解析する。
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