研究課題/領域番号 |
23K05580
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
|
研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
山下 匡 麻布大学, 獣医学部, 教授 (30220338)
|
研究分担者 |
永根 大幹 麻布大学, 獣医学部, 講師 (10772064)
中村 孝司 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (20604458)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
|
キーワード | IBD / スフィンゴ脂質 / T細胞 / 糖脂質 / 遺伝子改変マウス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、スフィンゴ糖脂質欠損マウスのデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性大腸炎とT 細胞との関連をスフィンゴ脂質の視点から解明することを目的とする。既に研究を開始する根拠となる基礎的な裏付けデータを収集しており、これら結果をもとに、スフィンゴ糖脂質が、当該疾患の発症や予後、さらには、常在する腸内細菌叢の変化に伴う腸におけるバリア機能の質的変化にも関連していると仮説を立て、当該疾患の病態を明らかし、その治療法の一助になる知見を得ることを目的とする。本課題は、炎症性腸疾患(IBD)の理解を深めるとともに、ヒト医療における応用に向けたトランスレーショナルリサーチとなる。
|
研究実績の概要 |
T細胞特異的スフィンゴ糖脂質欠損マウスを用いて、2%デキストラン誘発性腸炎モデルIBDモデルを作製し、T細胞の変化を検証した。NCBI GEOに登録された IBD 患者の末梢血単核細胞(PBMC)のマイクロアレイデータを用い、スフィンゴ糖脂質関連遺伝子群の遺伝子発現を解析した。C57BL/6N系統野生型(WT)マウス、およびT細胞特異的 UDP-グルコースセラミドグルコトランスフェラーゼ(UGCG)欠損 マウス(UgcgΔ/Δマウス)に2%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を飲水投与することでIBDモデルを作製し、体重変化、生存率、Disease Activity Index(DAI)スコア、大腸の長さを測定した。大腸の組織切片を作成し、HE染色を用いて組織学的に解析した。IBD モデルマウスの腸間膜リンパ節、および脾臓中のT細胞を分取し、Ugcg とグルコシルセラミド(GlcCer)の発現量をフローサイトメトリーで解析した。また、2%DSS投与期間中、WTマウスにGlcCerを搭載した免疫細胞標的脂質ナノ粒子(GlcCer-LNP)を隔日で静脈内投与し、病態の変化を検討した。その結果、11個のスフィンゴ糖脂質関連遺伝子のうちUGCGのみIBD罹患群の遺伝子発現量が低下していた。IBDモデルマウスにおいて腸間膜リンパ節、およびT細胞中のUGCGとGlcCerの発現量は病態の重症化に伴い減少した。T細胞特異的UgcgΔ/Δマウスにおいて、DSS飲水投与後に有意な体重減少、生存期間の短縮、臨床スコアの増加、大腸の萎縮および組織学的炎症の増強が観察された。GlcCer-LNPはIBDモデルマウスにおける腸炎の病態を改善した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時は、予備実験をもとに仮説を立て、立証する手法を用いている。現在までは、順調に進んでいると評価できる。24年度計画にある.脂質ナノ粒子(LNP)を用いたIBDモデルに対して治療効果に関しては、順次実験準備を薦めているため、年度後半から来年度に成果が期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
脂質ナノ粒子(LNP)を用いたIBDモデルに対して治療効果を明らかにするため、① IBDを発症させたマウスに対し、スフィンゴ糖脂質を免疫細胞指向性LNPに組み込んだ脂質成分(UGCGによって合成されるグルコシルセラミド)を投与した場合、体重減少の抑制などの症状が改善され治療効果を発揮するかを、体重変化、生存率、Disease Activity Indexスコア、大腸の長さ、大腸組織における炎症性サイトカインのELISAにより解析することで評価する。② 上記以外の組成(親水性や分子量、二重結合の有無など)の異なる脂質を内包した場合の効果を上記の測定法を用いて評価する。25年度にかけて、24年度までの結果を踏まえ、炎症部分である上皮細胞の変化を、細胞膜の流動性、硬度等を計測することで数値化することで、細胞膜のバリア機能の維持とIBDの関連を明らかにする。
|