研究課題/領域番号 |
23K05586
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42030:動物生命科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
濱田 理人 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (20567630)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | MAFB / macrophage / adipose tissue / Metabolism / Sympathetic nerve / マクロファージ / 交感神経 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、マクロファージに特異的にMafb遺伝子を欠失させたマウスを用いて、脂肪組織におけるMAFBの機能を解析することを目的とする。断続的な断食や高脂肪食投与下での脂肪組織代謝や、3DISCO技術を用いた交感神経線維の観察、神経細胞とマクロファージの共培養系を用いた研究を行い、MAFBの脂肪組織でのエネルギー代謝調節や交感神経線維の伸長における機能を明らかにする。また、MAFB標的遺伝子の探索も行い、その解析がマクロファージの機能や病態の理解につながることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究は、マクロファージ特異的に発現する転写因子MAFBが、白色および褐色脂肪組織における交感神経の伸長を制御することで、全身のエネルギー代謝に関わるメカニズムの解明を目的とした。過去の報告におけるsingle cell seqの解析を行い、MAFBが寒冷刺激後の褐色脂肪組織のマクロファージに発現していることを明らかにした。また、マクロファージ特異的Mafb欠損マウス(MafbCKO)を断続的断食や寒冷飼育下で解析したところ、野生型マウスに比べて体重増加や体温低下、脂肪組織での脂質代謝の低下が認められた。さらに、MafbCKOマウスの褐色脂肪組織を透明化し三次元的に観察したところ、寒冷刺激後の交感神経線維の伸長が野生型に比べて減弱していることが分かった。加えて、培養マクロファージを用いたRT-PCRによりノルエピネフリンがMAFBの発現を誘導することを見出した。 以上の結果より、マクロファージにおけるMAFBは、全身の代謝制御に関わる交感神経-脂肪組織連関の形成に重要な役割を果たすことが示唆された。本研究の成果は、MAFBを標的とした新たな肥満治療法の開発につながる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成果をまとめた論文がCell Reportsに受理された。査読者からのコメントに対応するため、追加実験を行い、MAFBが直接IL-6の発現を制御することを明らかにした。IL-6は褐色脂肪組織における熱産生に関与するサイトカインであり、MAFBによるIL-6の制御が交感神経-脂肪組織連関の形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。 また、MafbCKOマウスを用いて、断続的断食時の脂肪組織における交感神経の変化を解析した。その結果、断続的断食によって誘導される交感神経の伸長がMafbCKOマウスでは減弱していることが明らかになった。この結果は、MAFBが断続的断食時の交感神経-脂肪組織連関の形成にも関与していることを示唆している。 さらに、single cell seqのデータを詳細に解析し、MAFBが発現する脂肪組織マクロファージの特徴を明らかにした。MAFB陽性マクロファージは、炎症性サイトカインの発現が低く、組織リモデリングに関与する遺伝子の発現が高いことが分かった。この結果は、MAFB陽性マクロファージが抗炎症性・組織リモデリング性のマクロファージであることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究により、マクロファージにおけるMAFBの発現が交感神経-脂肪組織連関の形成に重要な役割を果たすことが明らかになった。今後は、寒冷刺激だけでなく、断続的断食のシグナルに関しても解析を進め、以下の点について研究を進めていく予定である。 断続的断食によって誘導される交感神経の伸長がMafbCKOマウスでは減弱していることが明らかになった。そこで、断続的断食時のマクロファージにおけるMAFBの発現制御メカニズムを解析し、断食シグナルとMAFBの関連を明らかにしていく。 また、Single cell seqの解析により、MAFB陽性マクロファージが抗炎症性・組織リモデリング性のマクロファージであることが示唆された。MAFB陽性マクロファージを単離し、その機能を in vitro および in vivo で解析することで、脂肪組織リモデリングにおけるMAFB陽性マクロファージの役割を明らかにしていく。 さらに、本研究により、MAFBが肥満の治療標的となる可能性が示された。MAFB の発現を誘導する薬剤のスクリーニングを行うなど、MAFBを標的とした新たな肥満治療法の開発に向けた研究を進めていく。 加えて、交感神経とマクロファージの相互作用は、脂肪組織以外の組織でも重要な役割を果たしている可能性がある。心臓や骨格筋など、他の組織におけるMAFBの発現と機能を解析することで、交感神経-マクロファージ連関の全容解明を目指す。 以上の研究を推進することで、寒冷刺激や断続的断食などの生理的刺激に対するマクロファージの応答機構を明らかにし、マクロファージによる交感神経制御の分子メカニズムを解明したいと考えている。これらの研究成果を基に、肥満治療法の開発に貢献することを目指す。
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