研究課題/領域番号 |
23K05598
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42030:動物生命科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
緒方 和子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 主任研究員 (40761614)
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研究分担者 |
武田 久美子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 上級研究員 (60414695)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 精子 / ウシ / 還元型グルタチオン / 初期胚発生 |
研究開始時の研究の概要 |
我々はこれまでに、ウシ凍結精液への還元型グルタチオン(GSH)の添加が体外受精後の胚発生成績を改善することを明らかにした。本研究では、外因性GSHのウシ精子への作用機序、および胚発生成績の改善の要因を解明することを目的とする。その上で「GSHは受精前に精子核の脱凝縮準備を進めて、受精後の前核形成を促した」との仮説を設定し、GSHによる精子核の脱凝縮促進効果を検証すると共に、前核形成能および胚発生能への影響を評価する。本研究による体外受精前の精子処理を通じた胚の質の改善の機序解明は、家畜生産やヒト生殖補助医療に有用な知見を提供すると期待される。
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研究実績の概要 |
還元型グルタチオン(GSH)は生体内の主要な抗酸化物質である。我々は、ウシ凍結精液にGSHを添加すると、体外受精後の胚発生成績が改善することを明らかにした(Ogata et al., J Reprod Dev., 2022)。一方で、抗酸化効果は認められず、GSHの持つ他の要因が働いたことが予想された。本研究では、外因性のGSHがどのようにウシ精子に利用され、胚発生に効果を発揮したのかを解明することを目的とする。そのために「GSHは受精前に精子核の脱凝縮準備を進めて、受精後の前核形成を促すことで胚発生に有利に作用した」との仮説を設定し、GSHは精子内に取り込まれたか否かをGSHおよび関連酵素の定量から解析する。また、前核形成の促進がどのように胚の質を改善したのかを胚発生の経時観察、染色評価およびGSH定量等から解析する。本研究の成果により、体外受精前の精子処理を通じた胚の質の改善が可能となれば、家畜生産やヒト生殖補助医療における受胎率の向上に貢献でき、高い波及効果が期待される。 今年度は、外因性GSHの精子内移行および精子核の脱凝縮促進効果の検証を目的に精子の評価試験を実施した。はじめに、体外受精試験に使用する精子の受精能の評価を目的に、細胞のエステラーゼ活性、細胞膜損傷および先体損傷の同時評価系を立ち上げた。また、精子内GSH含量の定量を行い、GSH添加により酸化ストレスの指標である精子内GSSG濃度は変化しないのに対して、精子内GSH濃度は増加することを明らかにした。また、GSH添加に伴い精子核の脱凝縮の指標となるSH基が増加する傾向を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
茨城県肉用牛改良研究所で飼養される雄ウシより採材を行い、GSH添加凍結精液サンプルの確保およびそれらの精液性状と体外受精成績のデータ蓄積を進めている。体外受精試験に使用する精子の受精能の評価のために、細胞のエステラーゼ活性、細胞膜損傷および先体損傷の同時評価系を立ち上げた。得られた成果の一部を、2023年10月に開催された第7回日本胚移植技術研究会大会にて発表した。また、外因性GSHの精子内移行の検証のために、精子内のGSH量、酸化型グルタチオン(GSSG)量および総グルタチオン(T-GSH)量を定量し、GSH添加濃度依存的に精子内のGSH濃度およびT-GSH濃度が高くなることを明らかにした。また、GSHによる精子核の脱凝縮促進作用の評価のために、解離したプロタミンのSH基の染色評価を行い、GSH添加精液ではSH基が増加する傾向を確認した。以上の成果を2024年7月に開催されるJoint AAAP & AAAS Animal Production Congress 2024にて発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、GSHの精子内移行の検証を継続する。また、細胞内でのGSHの利用に関する検討を進める。新たに用いる蛍光標識GSHの細胞内移行を確認すると共に、GSHの取り込みや分解に関わる酵素に着目した解析を行う。また、体外受精後の前核形成の進行および胚発生への影響を評価する。
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