研究課題/領域番号 |
23K05610
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
天野 孝紀 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, チームリーダー (20419849)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 疾患モデル / マウス / ゲノム / 遺伝子発現 / バリアント |
研究開始時の研究の概要 |
生物の表現型多様性の基盤となるゲノム多型の解明は、遺伝子ネットワークの理解や疾患の原因究明に必須である。本研究では、体質や疾患などの量的形質の本質的理解を目指し、マウス亜種間の遺伝子発現の多様性を利用して、その多様化を生み出しているシス多型の探索と機能解析を行う。解析においては、マウス亜種のmRNA上の多型をもとにして系統ごとのアレル発現を識別してアレル発現量を正確にモニターし、ゲノムの大半を占める非コード領域の中で、どのようにシス多型がどのように生成され、変化していくのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
生物の表現型多様性の基盤となるゲノム多型の解明は、遺伝子ネットワークの理解や疾患の原因究明に必須である。体質や疾患などの量的形質の基盤となるマウス亜種間の遺伝子発現の多様性について、その多様化の原因となるシス多型の探索を行った。 西欧産ドメスティカスのC57BL/6(B6)と日本産モロシヌスのJF1を交配して得られたF1雑種を用い、それぞれの亜種のmRNA上の多型をもとに系統ごとのアレル発現を識別し、トランスクリプトーム解析を行った。その結果から、免疫系細胞および腸管細胞について、B6とJF1でアレル間の発現差を示し、近傍のシス多型に影響されることが推定される遺伝子をリストアップした。B6およびJF1の参照ゲノムデータの比較により、これらのアレル発現差を示す遺伝子のうち、300以上の遺伝子座において、LINE(long interspersed nuclear element)、LTR(long terminal repeat)、SINE(short interspersed nuclear element)およびその他のリピート配列のマウス系統特異的な挿入が確認できた。これらの反復配列のゲノムへの挿入と近傍の遺伝子のアレル発現には有意な相関がみられ、構造多型が亜種特異的な発現に一定の寄与をしていることが示唆された。 さらに、発現差の大きい遺伝子に着目して、B6とJF1からそれぞれプロモーター、エンハンサーもしくはイントロン配列をクローニングした。これらのシス多型を有するゲノムDNA断片をLuciferaseもしくはEGFPレポーターベクターに組み込み、プロモーター、エンハンサーに関しては転写制御活性を、イントロンに関してはスプライシングへの影響を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス亜種間の遺伝子発現の多様性とその原因となるシス多型の探索において、B6とJF1のF1雑種を用いたトランスクリプトーム解析を行い、計画通りにアレル間の発現差をモニターした。実際に転写産物上のSNPを指標にして、インプリント遺伝子および亜種特異的発現を示す遺伝子群をそれぞれ抽出できている。これにより、研究計画時に設定した主要な目標である、シス多型の影響を受けている遺伝子のリストアップを達成することができた。 さらに、B6およびJF1の参照ゲノムデータを比較することで、300以上の遺伝子座におけるLINE、LTR、SINEおよびその他のリピート配列のマウス系統特異的な挿入を見出した。統計的な解析により、構造多型が系統特異的なアレル発現に有意な影響を及ぼしている可能性を示しており、マウス系統間の遺伝子発現差に構造多型が寄与していることが明らかになった。 一部のシス因子に関しては、B6とJF1からそれぞれクローニングを行い、培養細胞を用いた機能評価を進めた。マウスを用いた個体レベルでの解析を行う前にシス因子の機能を予備的に評価することができている。これらの研究成果は、構造多型がアレル特異的な遺伝子発現に影響を与え、表現型多様性の基盤となり得ることを示唆しており、研究計画は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに同定したシス因子および系統特異的な多型の遺伝子発現への影響を明らかにするため、培養細胞レベルでのレポーターアッセイを引き続き行い、B6とJF1のシス因子の機能における亜種間系統差を評価する。エンハンサーおよびプロモーターに関しては、対象のDNA断片をluciferase発現ベクターに組み込み、レポーターの発現レベルにおける亜種間差を評価する。イントロン上の多型に関しては、EGFP遺伝子に対象のイントロン配列を人工的に挿入し、レポーターの発現レベルを評価する。また、スプライシングへの影響を明らかにするため、B6とJF1個体からRNAを採取し、RT-PCRによるアイソフォーム解析を行う。 遺伝子発現に顕著な影響が認められたシス因子に関しては、ゲノム編集技術を活用してマウス個体のシス因子のノックアウトを行う。シス因子領域にリピート配列のinsertionやdeletionなど構造多型が認められた場合には以下のように対応する。(i)規模の大きいindelの場合には、deletionを有する系統に合わせてB6もしくはJF1のゲノムをCRISPR/Cas9系を用いて切断し、同様のdeletionを導入する。(ii)トランスポゾン挿入変異の場合には、そのトランスポゾン有する系統からをCRISPR/Cas9を用いたトランスポゾンの除去を行う。さらに、イントロン配列の多型により、系統間で異なるアイソフォームが見られた場合には、そのアイソフォームを発現するトランスジェニックマウスを作製し、表現型への影響を評価する。
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