研究課題/領域番号 |
23K05619
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
遠藤 哲也 愛知学院大学, 教養部, 准教授 (90399816)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 関節再生 / 四肢再生 / 関節軟骨 / 器官再生 |
研究開始時の研究の概要 |
マウスでは四肢再生能力が指先だけに限定され、これまでは関節が再生するとは思われていなかった。しかし我々は新たな実験系を用いて、マウスの指に異所的な関節軟骨が作られることや、骨と腱が異所的に接続することを発見し、マウスには潜在的な関節再生能力があることを報告した。本研究ではこの異所的関節形成時の遺伝子発現プロファイルを明らかにし、生体内に存在する関節再生細胞を見つけるとともに、潜在的関節再生のメカニズムを理解する。本実験系を哺乳類としては初めての関節再生可能モデル実験系として確立し、機能的な器官としての関節再生を目指したヒト再生医療へ応用可能な基礎技術を開発する。
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研究実績の概要 |
ヒトを含む哺乳類は再生不能動物として括られることが多いが、実際にはマウスでは指先が切断されても再生することが知られている。複数の症例報告から、おそらくヒトも同様に指先は再生できるものと思われる。しかし末節骨の半分より基部側で切断された場合には、指は再生しない。従って関節構造も哺乳類では再生できないものと考えられてきた。しかし我々は独自の実験系を用いて、マウスには潜在的な関節再生能力があることを示すことに成功した。本研究の目的は、本実験系で存在が示唆される関節再生細胞を特定し、その細胞を活性化して関節を再生する潜在的メカニズムを解明することである。これによってヒト再生医療を目指す上で必要な哺乳類としては初めての関節再生可能モデル実験系として確立することを目指している。 これまでに我々は、1日齢マウスの新生児後肢の指において中節骨の基部側半分を切り出し、基部先端部方向に180度回転させて元の場所に戻すと、8週間後には中節骨の切断末端に関節軟骨様の構造が形成されることを見出している。1年目においては、この実験を骨の成熟が進んだ生後7日目のマウスにおいて実施することから開始した。これによって7日齢においても、1日齢と同様の結果が再現できることが分かった。1日齢の中節骨はまだ硬骨化が起きておらず、全体が軟骨で構成されている。その後、骨幹部分から硬骨化が始まり、7日齢では中節骨全長の半分以上が硬骨に置き換わっている。このことから、本実験において形成される関節軟骨様構造は、硬骨に置き換わる前の軟骨細胞に由来するものではないことが示唆された。次に1日齢マウスの中節骨を脱細胞化し、残った断片を前述のように移植する実験を行った。その結果、脱細胞化断片の周辺には関節軟骨様構造は作られなかったため、本実験で観察される異所的関節軟骨様構造は中節骨を構成する細胞に由来する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
移植実験等によって異所的関節軟骨様構造の細胞の由来を解析することについては、当初の計画どおりに進行している。しかしこれと並行して実施する予定であった異所的関節軟骨様構造の形成時における遺伝子発現解析については、予算の問題で解析方法の変更を余儀なくされている。当初はトランスクリプトーム解析を予定していたが、関節軟骨で発現することが既に知られている分子の発現パターンを調べていく手法に切り替えることとした。現在、マーカーとなる分子の発現を免疫組織化学的に調べている。
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今後の研究の推進方策 |
関節軟骨の形成に関与する既知の分子の発現パターンを免疫組織化学・in situ hybridization等を用いて調べる。特に本実験系における異所的な関節軟骨形成が、胚発生時と同様にinterzoneと呼ばれるsignaling centerを介したものなのか、それとも胚発生とは異なる仕組みによるものなのかを明らかにする。また本実験系で観察されている腱と骨の接続が、胚発生のenthesis形成と同じく、BMPシグナルを介した仕組みで起きているのかを調べる。これらの疑問に答えることは、発生生物学的にも、また生体内に存在する関節細胞能力を有する細胞を特定する上でも極めて重要である。 1年目の研究成果により、関節軟骨様構造の細胞起源は中節骨に含まれる骨膜(periosteum)の細胞や骨髄内にある内骨膜(endosteum)の細胞である可能性が高いと考えられるが、一方で腱の切断末端から這い出る腱細胞(tenocyte)、そして掌側板(volar plate)や滑膜(synovial membrane)由来の細胞が関与していることを否定する結果も出ていない。そのため2年目においては、後者の軟組織の寄与について、除去実験やマーキング実験などによって明らかにしていく予定である。
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