研究課題/領域番号 |
23K05632
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
泉 奈津子 東京大学, 定量生命科学研究所, 技術専門職員 (50579274)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | piRNA / ピンポンサイクル / BmAgo3 |
研究開始時の研究の概要 |
piRNA (PIWI-interacting RNA) 経路において、PIWIタンパク質は結合するpiRNAと相補的なトランスポゾンRNAを切断することでその発現を抑制する。PIWIタンパク質による標的切断はpiRNA産生と共役しており、切断産物がpiRNA前駆体として別のPIWIタンパク質に受け渡されることで新たなpiRNAがつくられる。本研究では、切断産物の受け渡しを阻害したときに、受け渡し側のPIWIタンパク質複合体に濃縮する2つの因子に着目し、これら因子の切断産物受け渡しへの関与を検証するとともに、piRNA経路での機能を明らかにすることを目的とする。
|
研究実績の概要 |
本年度は、2つの解析対象のうちSpn-Eに焦点をあて、Spn-EのATPase活性がpiRNA産生のどの段階に必要なのかを解析した。その結果、Spn-EのATPase活性を持たない変異体(EQ)は、野生型に比べBmAgo3との相互作用が増強し、BmAgo3と凝集体を形成することが明らかとなった。またSpn-Eノックダウン下でEQ変異体を発現すると、BmAgo3の標的切断依存的につくられるSiwi piRNAの前駆体が増加し、それに対応する成熟Siwi piRNAの減少がみられた。Spn-EノックダウンでもみられるこのSiwi piRNAの減少は、野生型Spn-Eの発現でレスキューされたが、EQ変異体の発現ではレスキューされなかった。これらのことから、Spn-EのATPase活性はBmAgo3からSiwiへのpiRNA前駆体の受け渡しの過程に必要と考えられた。一方で、精製したSpn-Eタンパク質は、BmAgo3から標的切断産物を解離させる活性を示さなかったことから、Spn-EのATPase活性にはBmAgo3からの切断産物の解離とは異なる役割があると考えられる。予想外のことに、Spn-Eノックダウンでは、Siwi-Siwi間のホモ型ピンポンが大きく亢進した。この効果はATPase活性の有無にかかわらずSpn-Eの発現によりレスキューされたことから、Spn-Eの存在自体がSiwiのホモ型ピンポンを抑制していることが示唆された。以上の結果から、カイコにおいて、Spn-EはATPase活性依存的にBmAgo3からSiwiへのヘテロ型ピンポンを促進し、一方でATPase活性とは独立にSiwiのホモ型ピンポンを抑制する、という2つの効果を介して適切なピンポンサイクルによるpiRNA産生に寄与していると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、Spn-EがBmAgo3からSiwiへのヘテロ型ピンポンの促進に機能することを明らかにすることができ、また予想外の発見として、Spn-EがそのATPase活性とは独立にSiwiのホモ型ピンポンを抑制していることを見出すことができたことから、順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、Siwiノックダウン下でBmAgo3への結合が増強する、もう一つの因子p40の解析を進める。これまでの予備的解析から、p40はBmAgo3を負に制御する因子であることを示唆する結果を得ている。今後、p40によるBmAgo3の制御メカニズムについて手がかりを得るため、通常状態において、またSiwiノックダウン下において、p40複合体の質量分析解析を行い、p40の結合タンパク質を同定し解析を進める。
|