研究課題/領域番号 |
23K05636
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平岡 泰 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 招へい教授 (10359078)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 染色体 / 細胞核 / 減数分裂 / 体細胞分裂 / クロマチン |
研究開始時の研究の概要 |
減数分裂は次世代へゲノムを継承する仕組みであり、ヒトでは卵子や精子を作る特殊な細胞分裂である。減数分裂における正常な染色体の分配は、卵子や精子の形成に重要であり、そこでの異常は不妊や流産あるいはダウン症などにつながる。ヒトにおいては女性の加齢に伴って、卵形成時の減数分裂において染色体分配エラーの頻度が上昇し、流産やダウン症の頻度も上昇する。加齢卵の妊孕性低下の問題は、哺乳類を用いた研究のむずかしさのため、臨床的対処法は未だに存在しない。本研究では、分裂酵母の利点を活かし、減数分裂過程で正常な染色体分配を保証する分子メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
分裂酵母減数分裂におけるクロマチン高次構造を解析するために、クロマチン軸構造の形成に障害を持つRec8変異体および Mis4変異体を取得し、これらの変異体のクロマチン構造を解析した。さらにクロマチン軸構造の形成におけるRec8とMis4の役割を明らかにするために、DNAとの結合性、ATPase活性、DNAループ形成活性を in vitro でアッセイする実験系を構築した。Rec8とMis4を分裂酵母の体細胞に高発現させて精製しin vitro アッセイしたところ、Rec8によるDNAループ形成活性にMis4の変異が影響することを明らかにした(未発表)。 また、相同染色体対合を促進するためには、Rec8が作るクロマチン軸構造の形成に加え、染色体に蓄積する非コードRNAが必要である。この仕組みを理解するために、in vitroの実験系を構築し、非コードRNAとその結合タンパク質が作る液滴の物理化学的特性の分析を行った。 減数分裂期の相同染色体対合におけるクロマチン軸構造と非コードRNAの役割について、国際会議等で発表した。非コードRNAとその結合タンパク質が作る液滴の物理化学的特性については、論文を投稿するとともにプリプリントサーバに公開した (Ding et al., bioRxiv)。また、染色体の安定性に影響を与えるDNA複製因子および核膜因子について論文として発表するとともに(Hirano et al., J Biochem 2023; Hirano et al., J Cell Sci 2023; Le et al., J Cell Sci 2023)、最新の成果についてはプリプリントサーバに公開した (Hirano et al., Ding et al., Hayashi-Taknaka et al., bioRxiv)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分裂酵母の減数分裂コヒーシンRec8が作るクロマチン高次構造が重要なことがわかっていた。さらにRec8をクロマチンにロードするタンパク質 Mis4についても、クロマチン軸構造の形成に障害を持つMis4変異体を取得した。クロマチン軸構造の形成におけるRec8とMis4の役割を明らかにするために、DNAとの結合性、ATPase活性、DNAループ形成活性を in vitro でアッセイする実験系を構築した。Rec8とMis4を分裂酵母の体細胞に高発現させて精製しin vitro アッセイを可能にした。このアッセイにより、Rec8によるDNAループ形成活性にMis4の変異が影響することを明らかにした。 減数分裂における正常な染色体分離のためには、Rec8が作るクロマチン軸構造の形成に加え、染色体に蓄積する非コードRNAを含むタンパク質複合帯が相同染色体対合の促進に重要であることがわかっていた。相同染色体対合の仕組みを理解するために、in vitroの実験系を構築し、RNAタンパク質複合体が作る液滴の物理化学的特性の分析を可能にした。この成果について論文を投稿するとともに、プリプリントサーバに公開した 。また、染色体の安定性に影響を与えるDNA複製因子および核膜因子についても論文を発表するとともにプリプリントサーバに公開した。相同染色体対合におけるクロマチン軸構造と非コードRNAの役割については国際会議で発表した。 論文発表3件、プリプリント3件、口頭発表4件(国際2件、国内2件)の成果を得たことから、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、分裂酵母を用いてRec8が正常な染色体分配を保証する分子メカニズムを解明するとともに、Rec8の染色体からの脱離を抑える因子の同定を目指す。この仕組みを解明するために、2つの課題を遂行する。(1)クロマチン軸・ループ構造形成の分子メカニズムの解明。(2)加齢に伴う妊孕性の低下を抑圧する低分子化合物の探索と同定。 (1)Rec8とMis4のin vitro解析を進め、DNAとの結合性、ATPase活性、DNAループ形成活性を明らかにする。これらの解析により、クロマチン軸・ループ構造形成における、体細胞と減数分裂細胞の相違を明らかにするとともに、Rec8によるDNAループ形成に必要な因子と反応素過程を明らかにする。これらの解析を通じて明らかになった必要因子・必要条件を満たすことで、分裂酵母の体細胞において、減数分裂様のクロマチン構造を強制的に構築させることを指標に、その必要十分条件を解明する。 (2)加齢に伴うRec8の染色体からの早期脱離を抑圧する因子を同定する。卵細胞形成過程でRec8の早期脱離を抑制することができれば、加齢卵の妊孕性向上につながる。マウスRec8は分裂酵母Rec8を代替できることに加えて、分裂酵母を減数第一分裂前で24時間程度停止させると、染色体に結合するRec8が減少する。その停止を解除すると、染色体の分配にエラーが生じる結果、胞子生存能が著しく低下する。よって、哺乳類の加齢卵を模倣した分裂酵母の解析系を構築できる。この系にRec8の脱離を抑圧できる化合物が添加されれば、染色体分配エラーが減少し胞子生存率の回復が期待される。よって、Rec8をヒト型に置き換えた分裂酵母をホストに用いて、形成された胞子の増殖能を指標にスクリーニングを行い、目的化合物の単離を目指す。
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