研究課題/領域番号 |
23K05647
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
竹立 新人 福岡大学, 理学部, 助教 (20846505)
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研究分担者 |
倉岡 功 福岡大学, 理学部, 教授 (60335396)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | DNA修復 / DNA組換え / レポーターアッセイ / DNAヘリカーゼRTEL1 / 細胞周期 / タンパク質翻訳後修飾 / ミトコンドリアDNA / RTEL1 / ユビキチン |
研究開始時の研究の概要 |
細胞は核とミトコンドリアにDNAをもち、緊密に連携しながらそれぞれのDNA修復を行う。そのメカニズムを解明するため、“生細胞のDNA修復能を可視化する”技術を用いて、ミトコンドリアにおけるDNA修復経路を特定する。また申請者によってミトコンドリアDNA修復への寄与が明らかになったDNAヘリカーゼRTEL1の動態解析などにより、修復因子が細胞周期やストレス応答のどのタイミングでどのように核・ミトコンドリア双方のDNA修復に寄与するのか、さらにその過程でタンパク質翻訳後修飾がどのように関わるのかを明らかにする。この成果により、上記の遺伝疾患に対する検査・治療薬の開発に貢献する。
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研究実績の概要 |
細胞の核・ミトコンドリアに独立して存在するDNAについて、細胞はその代謝因子を共有し、たがいに連携しながらその安定性を維持している。一方、その機構の詳細についてはいまだ謎が多く残されている。そこで本研究において、申請者らがもつ“細胞がもつDNA修復能を可視化する”技術により、“核・ミトコンドリア間DNA代謝のクロストーク”のメカニズムを明らかにする。 まず、1. 生細胞におけるミトコンドリアDNA(mtDNA)修復能の可視化とその評価ができる実験系を構築している。つまり、損傷をもつプラスミドDNAをミトコンドリアに集積させ、蛍光タンパク質発現系を用いて、生細胞のDNA修復能をリアルタイムで検出する方法である。つぎに、2. 本研究代表者がミトコンドリアDNA修復に関わる因子として同定した、DNAヘリカーゼRTEL1の動態解析から、修復因子が細胞周期やストレス応答のどのタイミングでどのように核・ミトコンドリア双方のDNA修復に寄与するのか、さらにその過程でタンパク質翻訳後修飾がどのように関わるのかを解析している。最後に3. In vitro mtDNA修復系を開発する。つまり、実験計画1, 2で得られた情報をもとに、試験管内で損傷mtDNAがどのように修復されるのかをモニタリングする。 このようにmtDNA修復および核・ミトコンドリア間のDNA修復のクロストークを、DNA・タンパク質の異なる側面から包括的に解明する試みは、3Dゲノム・4Dヌクレオーム研究と融合し、機械学習による網羅的な解析を経て、学際的には数学的な細胞内DNA修復反応のモデリングに昇華されうる。また臨床的には、mtDNA修復機構が解明されることで、ミトコンドリアを介した免疫応答の研究分野との融合を経て、ミトコンドリア病・HHS・がんをはじめとする重篤な遺伝疾患の診断薬・治療薬の開発に貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 生細胞におけるmtDNA修復能の可視化とその評価について、3つのステップを想定している。まず、1-a.化学修飾された損傷DNA(プラスミド)を作製する。つぎに、1-b.化学修飾に結合し、ミトコンドリアに集積することができるガイドタンパク質の細胞内発現させる。これにより損傷DNAをミトコンドリアに集積させ、最終的に1-c. 損傷DNAが修復される様子をリアルタイムで検出する。 現在1-aについて作製を完了し、細胞への損傷DNAの導入、および修復反応後の細胞からの抽出ができることを確認した。1-bについては、報告されているミトコンドリア移行シグナルのクローニング、およびそのミトコンドリアへの移行を試行中で、最適なガイドタンパク質を選定しているところである。また1-cについて、損傷DNAが修復された場合に特異的に発現するGFPタンパク質を蛍光顕微鏡タイムラプスにより、リアルタイムで検出できる条件設定が完了した。 つぎに、2.ミトコンドリアDNA修復に関わる因子、DNAヘリカーゼRTEL1の細胞内動態解析において、ミトコンドリア因子との相互作用解析を行った。これらの因子はミトコンドリア内膜貫通タンパク質であり、それぞれ膜間腔、膜貫通、マトリックスに局在する機能ドメインが明らかになっている。そこでこれらの機能ドメインごとのフラグメントをタンパク質を作製し、RTEL1との相互作用を免疫沈降によって調べた。その結果、RTEL1がこれらのミトコンドリア因子のマトリックス局在ドメインと結合することが明らかになった。この結果は、RTEL1がミトコンドリア因子とミトコンドリアマトリックスで相互作用し、通常マトリックスに存在するmtDNAの代謝に寄与することを示唆する重要な証拠である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 生細胞におけるmtDNA修復能の可視化とその評価について、ミトコンドリアに集積することができる最適なガイドタンパク質の選定を完了させ、損傷DNAが修復される様子をリアルタイムで検出する段階(1-c)に移行する。まずは蛍光標識した損傷DNAを用いて、これがミトコンドリアに局在することを確かめる。また、損傷DNAのタイプを多様化する。さらに、得られた画像データを機械学習により解析できる環境を整える。 2. ミトコンドリアDNA修復に関わる因子、DNAヘリカーゼRTEL1の細胞内動態解析において、特に細胞周期(DNA複製期・細胞分裂期・およびそれぞれの準備期間に分類される)依存的なRTEL1の局在変化を捕捉することで、核・ミトコンドリア間DNA代謝のクロストークについてより明確なモデルが構築できる。また、RTEL1がユビキチン化の標的であり、その細胞内局在がユビキチン化による制御のもとで変化することを示唆するデータが得られている。よって、蛍光顕微鏡タイムラプスを用いて、野生型、およびユビキチン化の標的アミノ酸残基を変異させたRTEL1の細胞周期にともなう局在変化を捉える。この際、核・ミトコンドリアの継時的な形態変化や、RTEL1がミトコンドリアマトリックスに移行する際に外膜・内膜の通過をライセンス化する因子との相互作用などもあわせてモニタリングする。最後に、実験計画1, 2で得られた情報をもとに、In vitro mtDNA修復系を開発する。
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