研究課題/領域番号 |
23K05653
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43020:構造生物化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今村 香代 京都大学, 理学研究科, 助教 (10645005)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | オレキシン受容体 / NMR / 動的構造 / 溶液NMR |
研究開始時の研究の概要 |
オレキシン受容体OX2Rは睡眠・覚醒に重要な働きをしていますが、OX2R選択的薬剤はまだ上市されてません。薬剤開発にはOX2Rのシグナルを選択的に強める活性化機構の解明が必要です。そこでOX2Rのシグナル強度と構造の相関を関係づけるために、OX2Rと選択的薬剤候補であるリガンド共存下で、OX2Rの動的構造をNMR分光法を用いて構造学的に解析し、その活性化機構とシグナルの関係を定量的に明らかにします。
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研究実績の概要 |
オレキシン受容体OX2Rは睡眠・覚醒に重要な働きをしており、ナルコレプシーといった疾病に関与している。その薬剤開発には、OX2Rのシグナル選択的に強化する活性化機構の解明が必要である。しかし、構造安定性の問題からOX2Rのシグナル強度と構造の相関はまだ明らかになっていない。本研究では、X線構造解析やcryo-EMで得られた静的立体構造では捉えられない動的なOX2Rの構造状態の定量化とその活性化機構の解明を目的とし、内因性リガンドのオレキシンや低分子化合物によるOX2Rの構造への影響を核磁気共鳴(NMR)分光法により測定・解析し、OX2Rシグナル強度と活性型構造との相関関係を求める。 本年度は核磁気共鳴(NMR)法を用いた活性型受容体の解析における適切なOX2Rの発現系の構築を進めた。安定同位体標識を行うためには、その標識率や発現量、コストの観点から適切な発現条件を最適化する必要がある。そこでタンパク質の発現量をモニターするために緑色蛍光タンパク質(GFP)を付加し発現量の簡易的な確認を行えるようにした。また、血清などの添加物についてもその有無や添加のタイミングなどの検証を行った。次いでOX2RのNMR測定を行いそのシグナルから発現、精製条件の評価と検討を行った。コンストラクトや発現条件の最適化の後に各シグナルの帰属用の変異体とそのウイルスを作成した。並行してOX2RとGタンパク質複合体形成用のミミックなGタンパク質としてminiGタンパク質の発現、精製も行った。 今後は準備したOX2Rへの複合体形成、さらには準備したペプチドや低分子化合物によるシグナルへの影響の評価と解析からを行う予定である。加えて相関関係評価に必要なオレキシン受容体のシグナル伝達強度の評価系を新たに導入・確立する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではこれまでOX2Rの安定化変異体を加えたコンストラクトではオレキシンシグナル伝達活性が得られず、構造が不活性型にシフトすることが分かっている。加えて不活性型構造であっても拮抗薬が異なると構造状態に変化が生じ、受容体選択的薬剤は遷移状態が少なくなることを見出している。そこで本年度は受容体選択的/非選択的薬剤がOX2Rの活性に及ぼす構造学的な影響について解析するためのOX2R、Gタンパク質、リガンドの準備、調整を行った。 初めに、活性型OX2Rの発現量を上げるためコンストラクトの検討を行った。発現量を簡易に定量的に評価できるGFPを付加したものを使用した。NMRシグナルからもコンストラクトの見直し、発現、精製条件の最適化を行った。収量の少なさに課題が残るものの、細胞・培地組成・トランスフェクション試薬やそれらの添加のタイミングなど種々の条件の最適化も順調に進めている。 複合体形成のためのGタンパク質は既知のコンストラクトであるminiGタンパク質を利用した。発現条件の最適化を行い、NMR測定を行うための準備ができた。リガンドは共同研究者から入手した低分子化合物に加え、内在性のペプチドを準備している。これらに加えて不活性型オレキシン受容体の受容体選択/非選択的薬剤の構造の変化について論文発表をおこなうことができた。 以上のことから、当初の予定通り、順調に進展していると結論した。
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今後の研究の推進方策 |
OX2Rシグナル強度と活性型構造との相関関係の解明に向けて、本年度はOX2R、Gタンパク質およびリガンドの調整を行い、NMR解析条件の準備が完了した。次年度ではシグナル伝達のプロファイルが様々に異なる状態のNMR解析を進める予定である。具体的には、オレキシン受容体の単体に活性の異なるリガンドが結合した状態での解析を進める。次いでオレキシン受容体とGタンパク質との複合体のNMR測定とその解析を進める。一方で、オレキシン受容体のNMR解析は、安定同位体標識試料の収量の低さが課題となっている。これまでオレキシン受容体の試料は昆虫細胞発現系を用いて調製してきたが、近年、膜タンパク質の発現に哺乳細胞発現系が用いられるケースが多くなっている。そこで、オレキシン受容体の哺乳細胞発現により、収量が向上するか検討をおこなう。 OX2RはGqタンパク質に共役し、細胞内Ca2+濃度を上昇させることによりシグナルを伝達する。Ca2+濃度変化を指標とするOX2Rアゴニスト・アンタゴニスト評価系の導入・確立を予定している。 以上の解析結果をもとにOX2Rシグナル強度と活性型構造との相関関係の解明を目指す。
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