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解糖系と発酵系が共役するために代謝系酵素が遷移的に形成する複合体の構造解析

研究課題

研究課題/領域番号 23K05667
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分43020:構造生物化学関連
研究機関横浜市立大学

研究代表者

池上 貴久  横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (20283939)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
キーワードNMR / GAPDH / LDH / 解糖系 / ホモ多量体 / 乳酸脱水素酵素 / 乳酸発酵 / Warburg効果 / G-body
研究開始時の研究の概要

グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)は解糖系を触媒する酵素である。その最終産物であるピルビン酸は通常は TCA サイクルに投入されるが、酸欠状態の時は、発酵過程に入って乳酸脱水素酵素(LDH)の触媒を経て乳酸に還元される。GAPDH と LDH とが相互作用することは示唆されてはいるものの、構造的な知見はまったくない。そこで、NMR の手法を駆使してこの複合体構造を決定する。発酵過程は酸欠状態にかかわらず癌細胞でも見られるため(Warburg 効果)、この仕組みの理解にも貢献できると期待している。

研究実績の概要

生物はグルコースを取り込み、解糖系においてピルビン酸にまで代謝する。このピルビン酸はミトコンドリアにまで拡散し、その中でクエン酸回路に入り込む。しかし、急速にエネルギーが必要な際や酸素欠乏時にはピルビン酸は乳酸発酵の経路に入る。解糖系で機能する酵素としてグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)があり、発酵で機能する酵素として乳酸脱水素酵素(LDHA)がある。前者は補酵素として NAD を取り込み NADH を放出する。一方 LDH はその逆である。よって、両者が細胞質内で近くにあれば、補酵素の授受が効率よく行われるはずである。数十年前より、GAPDH と LDH が局在化しているという観察例があるが、in-vitro で実際にこれが観測された例はほとんどなく、相互作用はあっても動的で遷移的であると考えられている。そこで、筆者は NMR を用いてこの相互作用の検出を試みた。まず LDH を 15N, 13C, 2H 標識体として調製すべく、プラスミドを調製し大腸菌にて発現を試みた。その結果、大量の LDHA を発現させることに成功した。しかし、そのうちの9割程が封入体となってしまうため、培養温度を下げるなどさまざまな条件の検討をおこなった。しかし、今のところ大きな改善は得られていない。GAPDH 側を 15N, 13C, 2H で標識し LDHA 側を非標識にて混合し NMR で測定したところ、数個のピークに変化が見られた。しかし、相互作用の面積を考えると摂動を受けたピークの個数が少ないため、これは非特異的相互作用であるとみている。細胞内環境でないと相互作用しないとも示唆されていることから、今後は、細胞内環境を疑似的に作りだす、NAD ・ NADH などを加えたり除いたりするなど、条件を変えて同様の観測を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

おおむね予定通りに進行しているが、LDHA が発現のための大腸菌内において正しく fold すれば、サンプル調製に費やす時間を大幅に節約できるため、より研究を促進できるはずである。また、相互作用の有無については、GAPDH 側を安定同位体で標識するだけでも可能ではあるが、両者の相互作用部位を同定するには、どうしても LDHA 側も標識したい。そのためには、封入体にいく割合をもっと減らす必要がある。Arctic Express などのコンピテントセルの形質転換なども試みたが、今のところ改善策は得られていないが、溶解性を増進させるためのタグ蛋白質(Trigger Factor など)を N 末端側につけることなどを検討している。その場合、LDHA がホモ四量体を組むことを考慮し、四次構造形成に干渉しないようなタグを選ぶ必要がある。

今後の研究の推進方策

GAPDH と LDHA は、in-vitro そのままの状態では相互作用が検出できず、細胞内環境に似た条件、例えばグリセロールやフィコールなどを加えた状況で検出できるとされている(ただし、それはまだ Native-PAGE の結果による Sci. Rep. (2020) 10(1), 10404)。また、補酵素である NAD ・ NADH の有無によっても相互作用の on/off が切り替わる可能性があり、これら補酵素の有無の条件も変える必要がある。以前より GAPDH のメチル基の帰属を進めており、相互作用が NMR で検出されれば、少なくとも GAPDH のどの領域が関与しているかは分かるはずである。同様に LDHA 側のメチル基の帰属も必要である。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 1H, 13C and 15N backbone resonance assignments of hepatocyte nuclear factor-1-beta (HNF1β) POUS and POUHD2024

    • 著者名/発表者名
      Hokazono Sayaka、Imagawa Eri、Hirano Daishi、Ikegami Takahisa、Oishi Kimihiko、Konuma Tsuyoshi
    • 雑誌名

      Biomolecular NMR Assignments

      巻: 18 号: 1 ページ: 59-63

    • DOI

      10.1007/s12104-024-10168-4

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Interaction modes of human orexin 2 receptor with selective and nonselective antagonists studied by NMR spectroscopy2024

    • 著者名/発表者名
      Imamura Kayo、Akagi Ken-Ichi、Miyanoiri Yohei、Tsujimoto Hirokazu、Hirokawa Takatsugu、Ashida Hideo、Murakami Kaori、Inoue Asuka、Suno Ryoji、Ikegami Takahisa、Sekiyama Naotaka、Iwata So、Kobayashi Takuya、Tochio Hidehito
    • 雑誌名

      Structure

      巻: 32 号: 3 ページ: 352-361

    • DOI

      10.1016/j.str.2023.12.008

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Analysis of the homodimeric structure of a D‐Ala‐D‐Ala metallopeptidase, VanX, from vancomycin‐resistant bacteria2024

    • 著者名/発表者名
      Konuma Tsuyoshi、Takai Tomoyo、Tsuchiya Chieko、Nishida Masayuki、Hashiba Miyu、Yamada Yudai、Shirai Haruka、Motoda Yoko、Nagadoi Aritaka、Chikaishi Eriko、Akagi Ken‐ichi、Akashi Satoko、Yamazaki Toshio、Akutsu Hideo、Ikegami Takahisa
    • 雑誌名

      Protein Science

      巻: 33 号: 6

    • DOI

      10.1002/pro.5002

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Biophysical insights into the dimer formation of human Sirtuin 22024

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Noa、Konuma Tsuyoshi、Ikegami Takahisa、Akashi Satoko
    • 雑誌名

      Protein Science

      巻: 33 号: 5

    • DOI

      10.1002/pro.4994

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] CPMG pulse sequence for relaxation dispersion that cancels artifacts independently of spin states2023

    • 著者名/発表者名
      Konuma Tsuyoshi、Kurita Jun-ichi、Ikegami Takahisa
    • 雑誌名

      Journal of Magnetic Resonance

      巻: 352 ページ: 107489-107489

    • DOI

      10.1016/j.jmr.2023.107489

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] GAS41 promotes H2A.Z deposition through recognition of the N terminus of histone H3 by the YEATS domain2023

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi Masaki、Takase Shohei、Konuma Tsuyoshi、Noritsugu Kota、Sekine Saaya、Ikegami Takahisa、Ito Akihiro、Umehara Takashi
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 120 号: 43

    • DOI

      10.1073/pnas.2304103120

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ベクトルモデルはどのぐらい信じてよいのか?2023

    • 著者名/発表者名
      池上貴久
    • 雑誌名

      NMR学会誌

      巻: 13 ページ: 32-40

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 解糖系moonlighting蛋白質GAPDHの環境変化に対応した立体構造変化の解析2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木陽茉梨, 牧山ユキ, 元田容子, 小沼剛, 池上貴久
    • 学会等名
      日本蛋白質科学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 多機能性タンパク質 GAPDH の立体構造変化と相互作用の解析2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木陽茉梨、牧山ニコレユキ、元田容子、小沼 剛、池上貴久
    • 学会等名
      NMR 討論会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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