研究課題/領域番号 |
23K05674
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43020:構造生物化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
伊藤 桜子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (60597152)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 翻訳 |
研究開始時の研究の概要 |
真核生物のCap依存的翻訳において、mRNA 5′末端に結合するeIF4FとmRNA 3′末端に結合するPABPとの相互作用を介したmRNAの環状化が古くから知られている。mRNA環状化自体の分子機構は詳細に解明されているものの、「環状mRNAとリボソームによる翻訳開始制御」の分子機構は不明である。マイクロペプチドAPPLEは、多種の腫瘍細胞で高発現する腫瘍増殖因子であり、eIF4FとPABPの相互作用を直接的に増強して翻訳開始を促進する。本研究では、APPLEとリボソームを含む翻訳開始複合体の立体構造を解析し、「環状mRNAとリボソームによる翻訳開始制御」の分子機構およびAPPLEの腫瘍増殖機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
真核生物のCap依存的翻訳においては、mRNAが環状化していると考えられている。eIF4FとPABPの相互作用を介してmRNAが環状化する機構については研究が進んでいるが、環状mRNAとリボソームがどのように協同して翻訳開始を制御するかは不明である。 2021年に発見された腫瘍増殖因子であるマイクロペプチドAPPLEは、eIF4FとPABPの相互作用を増強して翻訳開始を促進する。本研究では、APPLEとリボソームを含む翻訳開始複合体の立体構造を解明し、「環状mRNAとリボソームによる翻訳開始制御」の分子機構およびAPPLEの腫瘍増殖機構を明らかにする。 本年はまず、立体構造解析および生化学実験に用いるAPPLEの調製を試みた。大腸菌を用いた発現系によりGST-APPLEを大量発現し、アフィニティカラム、イオン交換カラム、およびゲルろ過カラムを用いてAPPLEの精製を行った。その結果、予想される分子量のAPPLEに加えて、分子量の小さいAPPLEがほぼ等量含まれることから、APPLE内に部分切断を受けやすい配列があることがわかった。 並行して、立体構造解析に適したmRNAを見出す目的で、APPLEの基質であると提唱されているmRNAの一つであるKRASのmRNA配列を用いてレポーターの構築を進めた。KRASの5'UTRおよびコーディング配列に続けてウミシイタケルシフェラーゼを発現するmRNAを構築し、ヒト翻訳因子を用いた試験管内翻訳再構成系に添加したところ、ルシフェラーゼ発光が検出されなかった。そこで、KRAS由来部分の配列検討をし、KRAS コーティング配列を削除して5'UTRの直下にウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を入れた系を構築したが、改善はみられていない。今後は、別の遺伝子を用いてmRNAの調製を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の遂行に際しては、APPLEおよびAPPLEが翻訳促進する基質mRNAの調製が必須である。まず、APPLEの調製を試みたところ、APPLEの精製に成功したものの、APPLEは部分分解を受けることがわかった。 また、mRNAについては、APPLEの基質であるKRAS遺伝子を用いて検討を進めた。ところが、現在のところ、ヒト翻訳因子を用いた試験管内再構成系でKRAS 5'UTR下流に組み込んだルシフェラーゼの発現がみられない。
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今後の研究の推進方策 |
APPLEが部分切断されていることが明らかになったので、質量分析やN末端分析により切断部位を決定するなどの方法で、均一なAPPLEの調製を試みる。並行して、APPLEとeIF4E、eF4G、PABPとの結合も試験管内で確認したい。 基質であるmRNAについて、立体構造解析に適したmRNAを見出すために、ルシフェラーゼを用いたレポーター系を用いた。ところが、KRAS遺伝子の5'UTRの下流にKRASのコーディング配列とルシフェラーゼを発現する系を構築し、試験管内再構成系に加えたところ、ルシフェラーゼの発現が見られなかった。今後はまず、KRAS自体の発現をウェスタンブロッティングなどで確認し、このmRNAを鋳型にした翻訳が行われているかを確認する。さらに、他の基質mRNA配列を用いるなどの方法で検討を進める。
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