研究課題/領域番号 |
23K05679
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
福田 智行 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90415282)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | オートファジー / オルガネラ / ミトコンドリア / 小胞体 / 酵母 / 代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
オルガネラの質や量を制御する選択的オートファジーは、オルガネラの一部を脂質膜で囲んで隔離・輸送・分解する。こうしたオルガネラ分解を包括的に理解するため、分裂酵母の網羅的探索により、ミトコンドリア、小胞体、ペルオキソームの選択的な分解に必要な因子を同定した。本研究はこれら因子の機能解析から、選択的オートファジーによるオルガネラ分解の分子機構を解明する。また、各因子欠損株をオルガネラ分解の欠損モデルと捉え、細胞の生育能、代謝、オルガネラ機能を評価することで、各オルガネラ分解の生理的意義を明らかにする。研究成果は、分解の人為的制御を介したオルガネラの機能制御や疾患治療に応用できると期待する。
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研究実績の概要 |
オルガネラは様々な細胞プロセスに重要な機能を担うため、その質や量は厳密に制御される。そうした制御の一つに選択的オートファジーが挙げられる。選択的オートファジーはオルガネラの一部を隔離膜と呼ばれる脂質膜構造で取り囲み、球状の小胞(オートファゴソーム)を形成する。このオートファゴソームをリソソーム・液胞へと輸送して融合することで、リソソーム・液胞に含まれる分解酵素により隔離成分を分解する。これまでに、分裂酵母を解析モデルに、ミトコンドリア、小胞体、ペルオキシソームの選択的な分解に必要な因子を同定してきた。各因子は選択的オートファジーの様々な過程で機能すると予想される。そこで、これら因子の解析により、オルガネラ分解のしくみと制御機構について明らかにすることが本研究の目的である。 機能解析の結果、ミトコンドリアの選択的オートファジーに必要な因子として同定したAtg44が、ミトコンドリア分裂を促進する因子であると結論づけた。一方、既知のミトコンドリア分裂因子であるダイナミン様タンパク質Dnm1は、ミトコンドリアのオートファジー分解には必要でなかった。したがって、Atg44はDnm1と独立にミトコンドリア形態を制御する新規のミトコンドリア分裂因子といえる。Dnm1がミトコンドリア外膜上で外側から作用するのに対し、Atg44は膜間腔領域から主に内膜に作用することが示唆された。一方、小胞体の選択的分解に必要な因子として同定したHva22は、小胞体に局在する3回膜貫通型のタンパク質で、小胞体の形態制御に関わることが示唆された。 以上の結果から、オルガネラの選択的オートファジーには、これまで知られていた「隔離膜伸長の場をオルガネラの一部にリクルートする」過程に加えて、「オルガネラの形態を制御することで隔離膜内に収納可能なオルガネラ断片を形成する」過程が重要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
選択的なオートファジーによるミトコンドリアと小胞体の分解に特異的に必要な因子であるAtg44とHva22について機能解析を行い、いずれもオルガネラの形態制御を介して選択的オートファジーに寄与することを明らかにした。スクリーニングで得られた因子の特徴づけに成功したことに加え、オルガネラオートファジーの機構において形態制御の過程が重要であることを示す知見を得ることができた。更に、これらの成果を論文発表することができた。一方で、オルガネラオートファジーに関する新規性の高い知見であったため、Atg44とHva22の機能を様々な種類の解析により確認し、慎重に裏付けを行ったため、当初の想定以上に分子特性の同定に時間を費やした側面もある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きAtg44とHva22に関する詳細な機能解析を行う。いずれも進化的に保存されたタンパク質であるため、類似タンパク質と機能を比較する視点も新たに導入する。また、オルガネラオートファジーに関与することが予想される他の因子についても、分子特性の同定を行い、オルガネラオートファジーの機構や制御についてさらなる検証を進める。
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