研究課題/領域番号 |
23K05684
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
前本 佑樹 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (90742619)
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研究分担者 |
藤川 雄太 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (90645144)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | リン脂質 / ドーパミン / アシルトランスフェラーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
低酸素応答の司令塔であるHIF-1αは低酸素微小環境下のがん細胞の生存に重要な転写因子である。申請者らはN-アシルドーパミンががん促進転写因子のHIF-1αを安定化することを明らかにし各種酵素 (PHD2, JHDM, TET) を阻害することを明らかにし、がん代謝物として働く可能性を示した。N-アシルドーパミンの生理機能を解明するためにはその生合成経路を明らかにする必要がある。我々はPLAAT2 (ホスホリパーゼA/アシル基転移酵素)が細胞内のN-アシルドーパミン合成酵素であることを見出した。本研究ではPLAAT2の研究を通して、N-アシルドーパミンががん代謝物であることを明らかにする。
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研究実績の概要 |
がん細胞は低酸素応答因子HIF-1αを安定化する内因性脂肪酸代謝物のスクリーニングによりドーパミンと脂肪酸のアミドであるN-アシルドーパミンを見出し、N-アシルドーパミンのアシル化酵素として、PLAAT(ホスホリパーゼA/アシル基転移酵素)ファミリーメンバーの1つを同定していた。 大腸菌を用いてPLAAT familyの野生型と酵素活性中心変異体のリコンビナントタンパク質を精製し、試験管内でのN-アシル基転移酵素活性実験を行った。その結果、野生型でN-アシルドーパミンを産生し、1つのPLAAT分子を除く、4種のPLAATでドーパミンに対するN-アシル基転移酵素活性があることが明らかになった。また、変異体ではN-アシルドーパミンが産生されず、酵素活性に依存していることも分かった。したがって、試験管内と細胞内の両方でドーパミンアシル化酵素活性があるPLAATが明らかになった。 ドーパミンアシル化酵素候補として見出したPLAATの酵素活性を不活性化させた細胞(U251_不活性PLAAT安定発現細胞)とPLAATをノックアウトさせた細胞 (U251_PLAATKO細胞) を作製し、ドーパミン処理後のN-アシルドーパミン量を測定した。その結果、U251_不活性PLAAT安定発現細胞はPLAAT野生型過剰発現細胞と比べて、U251_PLAATKO細胞は野生型細胞と比べて、N-アシルドーパミン産生量が減少していた。よって、PLAATはがん細胞内でドーパミンアシル化酵素として機能することが分かった。 U251細胞とU251_PLAATKO細胞におけるHIF-1α発現量を比較した結果、ドーパミン未処理、ドーパミン処理の両方で、HIF-1αの発現量は減少していた。よって、PLAATによって産生されたN-アシルドーパミン依存的にHIF-1αは安定化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既知のPLAAT阻害剤(LEI-301)によってアシル基転移酵素活性が阻害されたことから、ドーパミンのアシル化はPLAATの酵素活性により引き起こされることを確認した。PLAAT阻害剤LEI-301はin vitroと生細胞での有効濃度が大きく異なっており、その脂溶性の高さが問題となっていた。そのため新たに親水性の向上した化合物を合成したところ、既存の化合物よりも効果的である傾向が得られた。 次にPLAATが、がん細胞の増殖に関与するか検討した。まず、U 251細胞とU251_PLAATKO細胞を用いて、コロニーフォーメーションアッセイを行った。結果、U 251細胞と比較して、PLAAT KO細胞では細胞増殖は抑制されていた。さらに、GFPを安定発現したU 251細胞とU251_PLAATKO細胞を用いてスフェロイド培養を行い、GFPの蛍光輝度を観察することで細胞増殖を観察した。二次元培養と同様に、PLAAT KO細胞では細胞増殖は抑制されていた。これらの結果より、PLAATはがん細胞の増殖に関与することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
新規に解析を行っている阻害剤でのがん細胞増殖解析を行う、PLAATshRNA安定発現細胞株への阻害剤処理などにより、PLAATと阻害剤との増殖の影響を明らかにする。 また、モデル細胞として、PLAATが高発現し、N-アシルドーパミンを産生しているヒト疾患由来iPS細胞を用い、PLAATの発現抑制により細胞の増殖能を解析する。腫瘍増殖能は、in vivo腫瘍微小環境を再現しているスフェロイド形成等により評価する。また、既存のN-アシルドーパミン生合成酵素阻害剤であるカルビドパ、ベンセラジド、メチロシン等の阻害剤、PLAAT阻害剤LEI-301の効果も同様に検討する。加えて、N-アシルドーパミン生合成酵素の過剰発現の腫瘍増殖能に対する効果についても同様に検討する。増殖実験の際はその都度、細胞内N-アシルドーパミン量を測定し、最終的にN-アシルドーパミン生合成酵素依存的に産生されるN-アシルドーパミンが腫瘍増殖能を有することを明らかにする。 疾患iPS細胞を入手し、LC-MS/MSによるアシルドーパミン産生の確認を行い、にN-アシルドーパミン生合成酵素とアシルドーパミンの合成量との相関を明らかにする。
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