研究課題/領域番号 |
23K05721
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
藤井 律子 大阪公立大学, 人工光合成研究センター, 准教授 (80351740)
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研究分担者 |
都出 千里 神戸薬科大学, 薬学部, 准教授 (20289036)
杉崎 満 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20360042)
岡 直宏 徳島大学, バイオイノベーション研究所, 准教授 (30513270)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | カルボニルカロテノイド / 光合成 / 集光蛋白質 / 緑藻 / シフォナキサンチン / 溶媒効果 / 低温蛍光 / 時間分解吸収 / カロテノイド / 光保護 / 再構成 |
研究開始時の研究の概要 |
日本原産の海洋性大型緑藻ミルは、幅広い水深の海岸によく繁茂し、世界中の港で侵略的外来種として生態系を脅かしている。ミルは独特の色素を結合した集光タンパク質により、海底まで届く弱い緑色光を効率よく光合成に使うが、浅瀬の強光への防御機構は不明である。我々は、青緑の強光照射でこの独特の色素の生合成が阻害され、前駆体が集光タンパク質に蓄積する事を見出した。本研究では、この前駆体が結合した集光タンパク質による光防御機構の分子メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
海洋性藻類は、海中の緑色光を高効率で光合成に利用する機構を持つ。この分子機構を解明することは、様々な植物の光合成生産量を増大し、たとえば穀物の収穫量を増大し、食糧問題の解決に寄与すると期待される。海洋性緑藻ミルにおいて、光合成アンテナ(SCP)に結合したシフォナキサンチン(Sx)という独特のカロテノイドが緑色光の利用に寄与することが知られている。我々は、生育時に青緑色の強い光を照射するとSxの構造から酸素(O)原子が一つ欠落したデオキシ体(dS)がSCPに結合することを見出した。天然のSCPには、Sxとそのエステルであるシフォネイン(Sn)が1:1で結合しており、これらSx, Sn, dSは、光応答を支配する部分構造である「発色団」が完全に同一であるにもかかわらず、無極性溶媒中でのみ吸収スペクトルが異なることがわかった。これは、炭素-炭素共役系に結合したC=O基を持つカルボニルカロテノイドに特有の分子内電子移動状態(ICT状態)に関わると予測される。ではSCPにSxの代わりにdSが結合すると光機能が変化し、それにより緑色光の利用効率が下がることで、青緑色の強い光に対する防御機構となるのだろうか。そこで本研究では、まず、様々な有機溶媒中におけるdSの光応答を吸収、共鳴ラマン、蛍光分光及び時間分解吸収分光で徹底的に解明し、次に、大腸菌で大量発現させたタンパク質と色素を試験管内で正しくフォールドさせる「再構成法」を適用し、dSのみを結合した再構成SCPを調製して、タンパク質中におけるdSの光機能を実験的に明らかにする。これらの結果を総合的に解釈することにより、SCP中におけるSxの集光機能を解明することを目的とした。 今年度は、dS,Sxの光応答の溶媒依存性を明らかにした。様々な有機溶媒中で吸収、蛍光、時間分解吸収を比較し、Sxだけが持つOH基の役割が次第に明らかになってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、色素の有機溶媒中における分光学的挙動についてはほぼ計画した実験データは取得し、論文作成に着手している。有機合成に関しても概ね計画通りである。2年目から開始する予定の「再構成実験」のプトロコルの確立を実施したところ、再現性に問題がありそうということを含め、課題が明らかになってきた(概ね計画通り)。これに基づいて「今後の方針」に記載の通り、2年目より研究員を充足し、計画通りに進められるように計画を修正した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度より、蛋白質環境中での光応答を測定するために、再構成法による集光タンパク質の創生を実施する。これまでの予備的実験により、実験実施者によって結果の再現性に大きなばらつきが生じることがわかってきた。そこで、研究補助員を雇用して分光学的な再現性を得られるようにプロトコルを精査することと、同時にクライオ電顕法を用いて再構成体の構造解析を行うことにより、蛋白質中に結合した合成色素(dS)の環境の再現性の程度を把握した上で、分光学的応答の違いを議論することを目指す。
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