研究課題/領域番号 |
23K05735
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
小林 一三 基礎生物学研究所, ゲノム情報研究室, 特別協力研究員 (30126057)
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研究分担者 |
長田 直樹 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (70416270)
内山 郁夫 基礎生物学研究所, ゲノム情報研究室, 准教授 (90243089)
大崎 敬子 杏林大学, 医学部, 教授 (90255406)
印南 秀樹 総合研究大学院大学, 統合進化科学研究センター, 教授 (90444140)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 適応進化 / 適応分化 / 種分化 / タンパク構造 / 集団ゲノム / 集団遺伝 / 細菌進化 / ゲノム比較 |
研究開始時の研究の概要 |
私たちは,ピロリ菌のある地域集団をゲノム配列共有によって細分すると,各分集団に強く特異的な変異の全てが「ホストと相互作用する様々なタンパク」の「機能に重要なアミノ酸残基あるいはその近く」にマップされる事を発見した。集団分化がホスト適応によって進み,相同組換えが頻繁でパッチが短いために,適応的変異が連鎖した変異から速やかに切り離されて選択された為と考えられる。本研究では,この「細分して比較せよ」法を,世界のピロリ菌の数千ゲノムに当てはめて,適応的変異数千を検出し,「生物間相互作用での役割」「アミノ酸残基スケールでの機能」「系統分化との関連」の解析から,タンパクの適応進化の全体像を明らかにする。
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研究実績の概要 |
[アラインメント] HpGPによる全世界からの1100株とNCBI公開ピロリ菌公開1600ゲノムから,「シンテニー・コア」ゲノムをアラインした(内山)。 [集団分割とFst] これらをPCA-UMAPを用いてクラスタリングした。まず、全世界の集団を6大集団(SA, AF, LA, EU, AA, EA)に分割し,それぞれの中で細分した(長田)。集団間で高度に分化しているSNPを抽出し,小集団間で高度に分化しているSNPのリストを作成した. [立体構造へのマッピングと構造機能の考察]それらの遺伝子の産物の実測立体構造(X線結晶解析あるいはクライオ電子顕微鏡)と予測構造(SwissModelとAlphaFoldによる公開予測か、自分で予測)を得た(小林,西出)。高度に分集団特異的な非同義アミノ酸置換を立体構造にマップした「アミノ酸レベルでの適応機構」を、データベースと文献の検討から推定した。これらの約1000の立体像と図を,約200枚のパワーポイントスライドとしてまとめた。病原因子をはじめヒトと相互作用するタンパクで,新たな作用機構が現れた。トランスポーターについて,詳細な反応機構と対応する結果が得られた。ゲノム複製維持,翻訳,メチル化による制御について,新たな知見が多数得られた。これまで予想されなかった制御機構・適応機構が示唆された。 [相同組換えのシミュレーション]遠縁系統から適応変異を含む遺伝子の断片が入り、それが近縁のDNAとの相同組換えの繰り返しによって急速に小さくなっていく過程をモデル化し,シミュレーションで追跡した(印南)。 [実験解析の準備]動物感染で頻用される株を入手した(大崎,小林)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
HpGenomeProjectからの第一論文が2023年末に出て,HpGPからの他の論文の投稿ができるようになった。予備的な結果が,詳細なSNP解析によって膨らんでいった。2023年は,AlphaFoldの立体構造予測による遺伝子アノテーション革命が続いており,これらのSNPについて深い新解釈が続々と現れた。さらに,巨大分子のクライオEMによる構造解析から,巨大タンパク複合体のアミノ酸レベルでの適応進化理解も進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 個別遺伝子個別SNPの解析を,最新の立体構造(特にクライオ電顕)と最新の構造予測(特にマルチマーなど巨大な多量体)で深める(小林,西出)。2. それぞれの分集団について,Fst分布の特徴と各SNPの適応作用とを総合して,適応分化過程を推測する。3. これらの結果を古ゲノム解析などからのヒトの先史歴史と対応づける(長田,小林)。4. これらのSNPが,分集団をどう移動したかを解明し,相同組換えと結びつける(長田,小林,印南)。 5. これらの膨大なデータは適応分化のしくみをタンパク立体構造レベルで可視化するものである。分子進化とタンパク立体構造の分野にインパクトが伝わるように論文をまとめ,はやめに投稿する(全員)。 6. ノックアウト実験解析に向けて,環境適応に関与する重要遺伝子リストを作る(小林,大崎)。
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