研究課題/領域番号 |
23K05741
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43060:システムゲノム科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
野崎 晋五 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 開発研究員 (70725481)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | バクテリオファージ / ゲノム編集 / 大腸菌 / ファージ / 形質導入 |
研究開始時の研究の概要 |
普遍形質導入は古くから行われているファージを用いた細菌ゲノムの改変方法の一つであり、細菌における分子生物学の発展に大きく貢献してきた。しかし、形質導入ファージは細胞内で誤ってホストゲノムがファージ粒子にパッケージングされて生成されるため生成効率が低い。また、ドナー細胞のゲノム上にすでに存在している形質のみしか導入することができないという問題点がある。本研究では、試験管内において望みの長鎖DNA配列を持つ人工ファージを構築して、これを用いて細菌ゲノム編集を行う。この方法では、既存のDNA配列だけでなく、人為的にデザインしたDNA配列も人工ファージにパッケージングすることが可能である。
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研究実績の概要 |
ファージを用いた普遍形質導入では、まずドナー細菌にファージを感染させ、多量のファージ粒子を得る。このとき、これらのファージ粒子の中には低頻度で誤ってドナー細菌ゲノムの一部を取り込んだ形質導入ファージが生じる。この形質導入ファージによりレシピエント細胞へとドナー細菌ゲノムの一部が導入されることで、その後の相同組換えを経て、レシピエント細菌のゲノム配列の一部をドナー細菌のゲノムへと置換することが可能であるファージを用いた既存の普遍形質導入において、目的のホストゲノム領域がパッケージングされた形質導入ファージが生じる頻度は10,000ファージ粒子に1つ程度と非常に低い。この形質導入ファージ生成の効率の低さが、普遍形質導入による菌株構築の成功率を低下させている。形質導入ファージをより効率良く作製できるようになれば、普遍形質導入の効率が上昇し、極めて使いやすいものとなる。本研究ではまず、形質導入ファージを複数のPCR断片から作製可能であるかについての検証を行った。よく使われる大腸菌株としてK12株とB株があるが、これらの菌株間において外膜を構成するリポ多糖の組成が異なる。そこで、B株のリポ多糖合成遺伝子群を含む20遺伝子からなる 20 kb程度のゲノム領域がパッケージされた形質導入ファージを試験管内で構築することを試みた。この形質導入ファージを用いてB株のリポ多糖合成遺伝子群をK12株へと導入した。その結果、得られるコロニーは少なかったものの、B株のリポ多糖合成遺伝子群を持ったK12株を得ることができた。この結果により、PCR断片から構築された20kb程度の遺伝子群をワンステップで大腸菌ゲノムへと導入することが可能であることが実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試験管内で構築したファージ粒子を用いて、20遺伝子を含む約20kbのDNAを大腸菌染色体上の約20kbの領域とワンステップで置換することに成功した。これにより、バクテリオファージを活用することで、10 kb以上の長いDNA断片を簡便にゲノム上へと置換・挿入するという本研究のコンセプトが実証された。
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今後の研究の推進方策 |
人工ファージを用いて大腸菌ゲノムを改変することが可能であることが実証されたものの、現時点では小スケールの実験しか行っていないこともあり、得られるコロニー数が多くない。そこで、より効率よくDNAを標的ゲノムへと導入できるような条件を探る。また、大腸菌以外のバクテリア由来の二次代謝産物合成遺伝子群をワンステップで大腸菌ゲノムの狙った場所へ導入する方法を確立し、物質生産に向けた育種技術の開発を目指す。
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