研究課題/領域番号 |
23K05745
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
春田 奈美 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (70381671)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | γ-チューブリン複合体 / 微小管形成中心 / C. elegans / 微小管 / Caenorhabditis elegans |
研究開始時の研究の概要 |
微小管は、分裂期紡錘体、細胞極性の確立や細胞内輸送など時期・組織特異的なネットワーク構造を形成するが、その構造は主に微小管形成中心(MTOC)を足場に構築される。本研究では、線虫Caenorhabditis elegansを用いてMTOCに集積し微小管形成核となるγ-チューブリン複合体や微小管関連因子に対して時期・細胞種特異的なタンパク質ノックダウンを行い、個体発生を4Dライブイメージングで追跡することで、これらの因子の組織特異的なMTOCでの役割を明らかにし、組織細胞への分化に伴うMTOC形成の分子基盤の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
微小管は、分裂期の紡錘体、細胞極性や細胞内輸送など、細胞の形態形成や機能発現に必要な時期・組織特異的なネットワーク構造を形成する。こうした多様な微小管ネットワーク構造は、主に微小管形成中心 (MTOC: MicroTubule Organizing Center) を足場に形成される。微小管のマイナス端に結合し微小管の形成核となるγ-チューブリン複合体 (γTuC) は、時期および組織特異的にMTOCに集積するため、γTuCのリクルート機構は微小管動態と密接に関与している。申請者らはこれまでに、線虫Caenorhabditis elegansのγTuCの新規構成因子GTAP-1とGTAP-2を同定し、その機能を解析した。その結果、GTAP-1は、特に生殖腺の膜上から形成される微小管ネットワーク構造の形成に必要であることを示し、論文として発表した(Haruta, 2023, J. Cell Sci.)。 本研究では、生殖線の膜上でGTAP-1が関与するMTOCの形成メカニズムの解明を目指している。そこで生殖線の膜上にγTuCとともに局在するタンパク質の探索を、タンパク質近接ラベル法を用いて行った。次にラベル化したタンパク質の質量分析結果に基づき、RNAiによる表現型観察を行ったところ、11遺伝子において生殖細胞系列で強い表現型が観察された。 さらに生殖腺以外の組織で形成されるMTOCにおける GTAP-1とGTAP-2の必須性を調べることで、γTuCの組織特異的な制御機構を明らかにしようとしている。今年度は、gtap-2のドミナントネガティブな変異体を作製して表現型解析を行った結果、陰門形成や生殖腺形成などに強い影響がみられた。この結果は、これらの組織でGTAP-2が発現し、γTuCの機能に関与していることを強く示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線虫の生殖腺膜上のMTOC形成のメカニズムを明らかにするために、 令和23年度はまずタンパク質近接ラベル法 (TurboID法) を用いて、生殖腺膜上に集積するタンパク質の同定を行った。TurboIDは、γTuCとともに生殖腺膜上に局在することが示唆されているNOCA-1とビオチン化酵素を融合させたタンパク質を生殖腺で発現する線虫株を作製した。そしてL4幼虫期から成虫期の線虫からビオチン化タンパク質を精製し、質量分析で網羅的に解析を行った。同定されたタンパク質の中から、絞り込んだ63遺伝子について、RNAiによる表現型解析を進めた結果、11遺伝子で生殖細胞系列の膜構造や微小管構造の撹乱および核配置の異常などの特に強い表現型が観察された。 またγTuCの組織特異的な制御機構を明らかにするために、特にGTAP-1, 2のN末端領域に注目した。In vitroの結果から、N末端領域を欠損した短縮形GTAP-2は、タンパク質の安定性が上昇するとともに、複合体の構成を変化させる可能性が示唆された。そこで、gtap-2の内在性遺伝子に対して、N末端領域を欠損した上でGFPをノックインさせた線虫株をCRISPR-Cas9法を用いて作製した。変異体の表現型を観察した結果、陰門形成不全や次世代の数が著しく減少していることが分かった。この結果は、これらの組織でGTAP-2が発現し、γTuCの機能に関与していることを強く示唆しているため、今後、より詳細な解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
令和24年度は、タンパク質近接ラベル法(TurboID法)とRNAi法によって絞り込んだ遺伝子について、γTuCとの関連性についての解析を進める予定にしている。生殖細胞系列でγTuC構成因子を蛍光タンパク質融合して可視化した線虫株に対してRNAiを行い、γTuCの局在量の変化を調べるとともに、二重ノックダウンによるエピスタシス解析を行う。 GTAP-1, 2の組織特異的な役割を明らかにするために、まずN末端領域を欠損したgtap-2変異体の微小管形成に対する影響を組織ごとに調べる予定にしている。またオーキシン誘導性の標的タンパク質分解法(AID法)を行うために、GTAP-1にタンパク質分解用のデグロンタグを導入した株にgtap-2遺伝子にヌル変異を導入した株を作製した。この株を用いて、組織特異的なGTAP-1, 2の二重ノックダウンを行い、その影響を調べることにしている。
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