研究課題/領域番号 |
23K05758
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
豊田 雄介 久留米大学, 分子生命科学研究所, 講師 (10587653)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | グルコース枯渇 / 分裂酵母 / 糖輸送体 / アレスチン / TORC2経路 / リン酸化 / ユビキチン化 / Akt様キナーゼ / 低濃度グルコース / アミノ酸 |
研究開始時の研究の概要 |
主要な栄養素であるグルコース(ブドウ糖)とアミノ酸は異なる輸送体タンパク質を介して細胞内に取り込まれ、増殖などの細胞機能に役立てられる。輸送体は細胞表面で機能するが、我々は分裂酵母を用いて、アミノ酸存在下でのみ糖輸送体が細胞表面に維持されることを見出した。この糖輸送体の表面局在の維持は、栄養素を感知して細胞機能を調節するTORC2経路がアレスチンAly3を阻害することで起こるが、背景にある分子メカニズムは不明である。そこで本研究では、アミノ酸存在下でのみAly3がTORC2経路にあるAkt様キナーゼGad8によってリン酸化される可能性を検討しその分子メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
栄養環境の変化に対する真核細胞の応答においてTORC1、TORC2シグナル伝達経路は重要な役割を果たす。分裂酵母細胞が低濃度グルコース環境で増殖するためには六炭糖輸送体Ght5およびTORC2経路が必要であること、そして、TORC2経路がαアレスチンAly3依存的なGht5のユビキチン化とそれに伴う液胞輸送を阻害することを我々は明らかにしてきた。TORC2経路はAly3をリン酸化することが予想され、実際、報告されているリン酸化部位をすべてアラニン置換したAly3(ST18A)を発現する分裂酵母は低濃度グルコース環境では増殖せず、Ght5は液胞局在を示した。このため、低濃度グルコース環境での増殖およびGht5の表面局在に必要なAly3(594aa)のリン酸化部位を探索した。リン酸化部位は4つのクラスターを形成していたので、各クラスター内の3~6カ所のリン酸化部位をアラニン置換した変異Aly3を発現する分裂酵母株を作製した。これらの変異Aly3は発現量は互いに同等であったにもかかわらず、C末端の4残基(S582, S584, S585, T586)をアラニン置換した変異Aly3(Aly3(4th-A)とする)を発現する分裂酵母細胞だけが低濃度グルコース環境での増殖に欠損を示し、Ght5が液胞に観察された。このAly3(4th-A)の4つのアラニン残基を1つずつ元のセリン、スレオニン残基に戻してその機能を解析したところ、582, 584, 585番目のいずれかがセリン残基であることが、低濃度グルコース環境での増殖やGht5の表面局在に十分であることを明らかにした。以上から、低濃度グルコース環境での増殖に必要なAly3のリン酸化部位がC末端に位置することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、アミノ酸や窒素源存在下において糖輸送体の局在を制御する分裂酵母アレスチンがAkt様キナーゼを介してリン酸化されるしくみを解明することである。この目的を達成するために必要な具体的な目標の1つが、低グルコース環境での増殖に必要なAly3のリン酸化部位を特定することである。これまでの実験結果から、低グルコース環境での増殖に必要なAly3のリン酸化部位がC末端に3残基(S582, S584, S585)存在することが明らかとなり、目標を達成できたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で、TORC2経路(Gad8)によるAly3のリン酸化について、Aly3(S584)のリン酸化がTORC2経路(Tor1)に依存的であることがリン酸化プロテオミクス研究において報告されているが(Mak, EMBO J, 2021)、我々は直接的な実験結果をまだ得ていない。Aly3がTORC2経路(Tor1またはGad8)によりリン酸化されることを証明することは本研究の目的達成に欠かせないため、本研究で見出しているAly3のC末端のリン酸化を特異的に認識するリン酸化抗体を作製し、TORC2経路を欠損する変異体においてこれらのリン酸化を検討する。あるいは、Gad8を分裂酵母から精製し、in vitroで発現させたAly3 C末端へのリン酸化を検討する。 Aly3がTORC2経路により直接リン酸化される可能性を検討した後に、本研究の目的達成のために必要な次の目標である、アミノ酸や窒素源存在下でのみ分裂酵母Aly3がGad8依存的にリン酸化されるために必要な因子を、主にアフィニティー精製と質量分析を用いて探索する。
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