研究課題/領域番号 |
23K05774
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
芝 清隆 公益財団法人がん研究会, がん研究所, 特任研究員 (40196415)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 細胞外小胞 / 細胞性免疫 / エクソソーム / 合成生物学 / 免疫誘導 / ワクチン / EV |
研究開始時の研究の概要 |
細胞外小胞は、さまざまな経路で生成される多様性集団です。近年の研究により、細胞外小胞が発生・分化、がん、神経変性病、免疫反応などの多くの生物現象に関与していることが明らかになり、診断や治療への応用研究も進展しています。しかし、細胞外小胞の多様性集団としての実体解明は、まだ十分に進んでいません。この研究では、多様な細胞外小胞の生成経路を、合成生物学的手法により定義することが可能かどうかを検証し、同時に免疫反応を引き起こす能力を持つ細胞外小胞サブクラスを同定することを目指します。この研究によって、細胞外小胞の多様性集団の理解が深まり、生物現象や医療への応用がさらに進展することが期待されます。
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研究実績の概要 |
本研究では、「免疫誘導に必要なサブタイプが分からない」「そのサブタイプに抗原分子を担持させる方法がない」といった2つの問題を、合成生物学的に一挙に解決する戦略の妥当性の検証を目的としている。具体的な研究内容は、エピトープ配列をもつタンパク質分子の細胞内での性状をプログラム的に変化させることで、それらを異なる、細胞外小胞サブクラス経路に入れる。これにより、操作的に、細胞外小胞の生成経路を定義することが可能かどうかを検証し、同時に免疫反応を引き起こす能力を持つ細胞外小胞サブクラスを同定するのが本研究の目標である。研究は、大きく3つのステップに分かれており、最初のステップ1では、過去の研究で確立した、MolCraftを用いたプログラマブル人工タンパク質創製システムを用いて、共通エピトープを異なるタンパク質コンテクストに埋め込む作業を進め、ステップ2では、ステップ1で得られた異なるタンパク質コンテクストに埋め込んだエピトープを、それぞれ培養細胞内で発現させ、大きさで分類した細胞外小胞の異なるサブクラスに担持されるかどうかを検証する。最後のステップ3では、ステップ2の細胞培養上清の中で、エピトープ特異的T細胞の活性化能力をもつクローンを選択し、細胞培養上清の特にどのサブクラスの細胞外小胞と関連しているかを明らかにする。令和5年度は、ステップ1と2で予定していた、(i) 細胞外小胞サブクラスによる担持人工タンパク質の配向性の決定の実験条件の確立、(ii) 安定発現株の樹立のためのベクター構築、および、本研究のステップ3の中核となる(iii) 免疫活性スクリーニングを完了し、(iv) 免疫活性化細胞外小胞の生成経路の同定のための実験条件の確立作業を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞外小胞は細胞間の情報交換担体として重要な役割を果たしていることが明らかにされつつあるが、免疫分野のいろいろな場面でも細胞外小胞の係わりが多く報告されつつある。その1つに、組織適合性抗原による抗原エピトープ配列のT細胞への提示反応への係わりである。従来の教科書的な考え方では、抗原提示細胞が発現する組織適合性抗原(MHC)分子とエピトープペプチドの複合体を、T細胞上のT細胞受容体(TCR)が免疫シナプス形成を伴い、特異的認識をおこなうことが、それに続く免疫反応につながると考えられている。ところが、最近の研究からは、この抗原認識ステップに細胞外小胞が何らかの形で関与することや、さらに進んで、抗原分子を発現する細胞から放出される細胞外小胞のみで、T細胞を特異的に活性化するといった報告もなされている。特に後者の観察が確実なものになるならば、細胞外小胞を用いたいろいろな免疫治療(例えば、がん組織に対する細胞性免疫の誘導を細胞外小胞のみで誘導する治療など)の誕生につながる。このような細胞外小胞を用いた新しい免疫応用法の確立に際して問題となるのが、多様性集団としての細胞外小胞の実体解明が、まだ十分に進んでいないことである。細胞外小胞を生成する経路は複数存在し、どの経路で作られた細胞外小胞が、いかなる生物現象や医療展開に関連しているかの詳細は依然として不明である。また、免疫誘導に関連した細胞外小胞のサブタイプが明らかになったとしても、そのサブタイプの細胞外小胞に、いかにして目的の抗原分子を担持させるかの方法も確立していない。このような状況で、本研究は新しい戦略で免疫惹起能力をもつ細胞外小胞を創り出す方法の実証をおこなっており、期待通りの結果がこれまでのところ得られており、目的を達成できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
大きく分けた3つのステップの中の、もっとも重要なパートであるステップ3:ステップ2の細胞培養上清の中で、エピトープ特異的T細胞の活性化能力をもつクローンを選択し、細胞培養上清の特にどのサブクラスの細胞外小胞と関連しているかを明らかにする、を進めていく。近年、細胞外小胞のなかでも「大きな細胞外小胞」サブクラスが免疫活性に関連している可能性を示唆する報告が相次いでいるので、大きな細胞外小胞の解析方法も開拓しながら、進めて行く予定である。
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