研究課題/領域番号 |
23K05776
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
毛利 一成 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 協力研究員 (00567513)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | FCS / 顕微鏡 / 単細胞生物 / 極性形成 / 細胞極性形成 / 異方性拡散 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内を自由拡散する分子が極性形成する仕組みは複数あり、相分離場の形成や膜結合部位へのトラップの他、拡散に異方性が生じる拡散泳動などが考えられる。繊毛虫テトラヒメナは、様々な生物に共通するシグナル伝達関連分子が、細胞表層で極性形成し非対称分裂の前後軸を決定するが、その機構は未解明である。本研究では空間情報を持つFCSを実現することで、異方性拡散をも検出しうる、空間情報を活かした顕微鏡法を開発する。これにより非対称分裂機構を解明する。
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研究実績の概要 |
細胞内を自由拡散する分子が極性形成する仕組みは複数あり、相分離場の形成や膜結合部位へのトラップの他、拡散に異方性が生じる拡散泳動などが考えられる。細胞表層において極性が形成されるモデル単細胞生物Tetrahymenaを対象として、細胞内の分子輸送動態を解明することを本研究の目的としている。このために我々が開発してきた新規蛍光相関・相互相関分光法(FCS・FCCS)に基づき、時間・空間分解能~1μs・100nmの多点FCSを実現し、これまでに開発してきたデータ解析法を応用することで異方性拡散をも検出しうる、空間情報を活かした顕微鏡法の構築と、非対称分裂の新規機構の解明を目指している。このためにまず取り組んだ内容としては多点FCSとして最も単純な2焦点のFCSの構築を行い、1本のレーザー光から2つの焦点への集光を確認した。観察対象のTetrahymenaの遺伝子導入の基礎的な技術導入を行い、本生物種のゲノムからのDNA抽出を行い、相同組み換えやイメージング、ノックイン細胞構築のためのプラスミドの構築を行った。さらに細胞内カルシウム動態をイメージングするために、細胞への色素導入を行い、顕微鏡観察するために微小ガラス基板領域への細胞捕捉技術を構築した。今後の方針としては、シングルフォトンディテクターへの蛍光の入射機構の作成により観察光学系を構築する。遺伝子銃を用いることで遺伝子導入効率の向上を図り、細胞極性形成における主要分子のFCS多点計測を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の多点FCSとして最も基礎的な2焦点顕微鏡を、汎用の共焦点顕微鏡システムであるFV1200と共存できるよう、OlympusIX83顕微鏡をベースに構築した。2焦点顕微鏡の照明光学系の構築に取り組み、4つのビームスプリッターキューブと多軸ステージを組み合わせることで、1本のレーザーから異なる2本のレーザー光をサンプル面に入射するためのシステムを構築した。これにより、同一時刻に別々の場所を同時照射することが可能となった。観察光学系は照明系の光路を流用し、ビームスプリッターから射出される蛍光をシングルフォトンディテクターにより検出することを想定し、集光のための光路とディテクタ面への照射系を構築している。観察サンプルである単細胞生物である繊毛虫テトラヒメナについては、遊走細胞であり、そのままでは細胞観察が困難であり、ガラス板にそのままはさむと細胞ストレスにより細胞死が起こる。このため、ガラス板の間にエポキシ樹脂により数マイクロメートルのスペースを作り、培地の粘性を種々試薬で制御することで、顕微鏡上での長時間の単一細胞観察が可能である実験系を構築した。顕微鏡観察を行うため、細胞内にエレクトロポレーションによりプラスミドDNAを導入することで、GFP発現株を構築した。細胞内小器官である食胞の自家蛍光が強く、GFP発現株の観察は細胞表層をターゲットとして行い、複雑な表層構造の観察が可能であることが明らかとなった。また細胞骨格系のアクチンの運動制御に必須となる、カルシウムのイメージングに取り組み、運動中のテトラヒメナ細胞表層における、カルシウム動態の観察が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
顕微鏡構築について: 2焦点FCSの構築を進めるため、観察光学系を組む。これまでの照明光学系の光路を逆にたどることで、照射により励起されたサンプルの蛍光等を検出器まで戻すことができる。シングルフォトンディテクターの光検出部は50マイクロメートル程度となるため、この領域に蛍光を集光させるための光学系を構築する。照射するレーザーは共焦点システムであるため、細胞の場所を同時に観察する必要がある。サンプル面での2つの焦点が細胞のどの点を照射しているかを確認するために、Widefieldの光学系を同時に構築する。広視野を検出するため、CCDカメラを用いて明視野による細胞観察と、レーザー光源の照射部位を同時に検出できるように工夫する。 細胞の観察方法の構築について: エレクトロポレーションによる遺伝子導入は効率が低く、実験を行う上で困難であった。このため遺伝子銃を用いた装置の導入により、遺伝子操作の効率を向上させることを考えている。本手法によりノックアウト・ノックイン細胞の作成が効率化できると期待され、本年度の本格稼働を目指す。繊毛虫のような遊走細胞はアガロースゲル中でも多数の繊毛により回転運動することが分かったため、顕微鏡観察にはさらなる工夫が必要となる。2枚のガラス版の上側をナノメートルオーダーの精度で機械的に押すことにより、細胞を一過的にトラップする装置を作成する。以上により細胞極性形成における細胞表層の特定の分子動態をFCSにより多点同時計測する実験系を構築する。
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