研究課題/領域番号 |
23K05782
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
下條 博美 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 助教 (40512306)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 細胞分化 / 幹細胞 / 着床前胚 / 遺伝子発現動態 / エピジェネティクス / ライブイメージング |
研究開始時の研究の概要 |
Nanogは着床前胚の内部細胞塊において細胞周期に伴った周期的な発現を示し、クロマチン構造変化や標的遺伝子の発現を誘導することでエピブラスト分化を制御している。しかしながらNanogの時期特異的な機能については不明な点も多く、エピブラスト分化の時間制御機構についてはよく分かっていない。そこで本研究では着床前胚発生過程におけるNanogの標的遺伝子とクロマチン構造の変遷を明らかにし、Nanogを時期特異的にノックダウンして遺伝子発現やクロマチン構造に現れる変化を解析することでNanogの時期特異的な機能を明らかにし、エピブラスト運命決定のタイミング制御機構を明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
マウス着床前胚発生過程において、多能性因子Nanogは標的遺伝子の発現制御だけではなく、クロマチン構造変化を制御することによって、内部細胞塊からエピブラスト分化を制御している。着床前胚の内部細胞塊においてNanogタンパクの発現をライブイメージングによって解析すると細胞周期に伴った周期的な変動を示していた。しかしながら、内部細胞塊からエピブラストの分化が起こる胚盤胞期においてNanogの時期特異的な機能は不明な点も多く、エピブラスト分化の時間制御機構についてはよくわかっていない。そこで本研究では、着床前胚発生過程におけるNanogの標的遺伝子とクロマチン構造の変遷を明らかにし、Nanogを時期特異的にノックダウンして遺伝子発現やクロマチン構造に現れる変化を解析することでNanogの時期特異的な機能を明らかにし、エピブラスト運命決定のタイミング制御機構を明らかにすることを目指す。 そこで着床前胚発生過程におけるNanogの時期特異的な標的遺伝子を明らかにするために、抗Nanog抗体を用いてChIL-seq解析を行う。着床前胚は細胞数が少なく、スタンダードなChIL-seq法で用いられる凍結切片作成が困難であるため、whole embryoでの免疫染色と、実績のある抗体である抗H3K4me3抗体を用いてChIL-seqが可能かどうかの検証を行った。その結果whole embryoを用いた場合、少なくとも20,000細胞以上が必要ということがわかった。また、胚盤胞期発生過程におけるクロマチン構造変化を明らかにするために、胚盤胞期の内部細胞塊を回収し、ATAC-seqができるかどうかも検証を行っている。着床前胚から取り出した細胞で調製されたATAC-seq解析に用いるライブラリの品質自体に大きな問題はなさそうだが、こちらについても解析に必要な細胞数を探索しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
着床前胚発生過程におけるNanogの時期特異的な標的遺伝子を明らかにするために、抗Nanog抗体を用いてChIL-seq解析を行う予定である。標準的なChIL-seq解析は組織の凍結切片を用いて抗体染色を行った後ライブラリ調製を行うが、着床前胚の場合、凍結切片の作製が困難であることから、whole embryoの免疫染色からライブラリ調製が可能かどうか検証し、解析のための必要な細胞数を明らかにするための予備実験を行った。実績のある抗体である抗H3K4me3抗体を用いて、whole embryoでの免疫染色を行いライブラリ調製をしたところ、胚盤胞期のどのステージにおいても少なくとも20,000細胞以上が必要になるということが明らかとなった。この結果をもとに、様々な発生段階の胚盤胞期について抗Nanog抗体を用いてwhole embryoでの免疫染色を行い、ChIL-seq解析を行う予定である。 さらに、胚盤胞期におけるクロマチン構造変化を明らかにするため、胚盤胞の内部細胞塊を回収し、ATAC-seqができるかどうかの検証も行っている。着床前胚から取り出した細胞で調製されたATAC-seq解析に用いるライブラリの品質自体に大きな問題はなさそうであったが、こちらについてもある程度の細胞数を確保する必要があることが明らかとなりつつある。今後、必要な細胞数を割り出し、胚盤胞期の異なるステージから取り出した内部細胞塊におけるクロマチン構造変化を明らかにすることを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
着床前胚発生過程におけるNanogの標的遺伝子の変遷については、初期、中期、後期胚盤胞期のwhole embryoにおいて、抗Nanog抗体を用いて免疫染色を行いライブラリ調製、シーケンス解析を行う予定である。どのステージでも少なくとも20,000細胞が必要であると考えられるため、サンプル回収を繰り返し必要な細胞数を確保する予定である。 胚盤胞期におけるクロマチン構造変化の解析については、これまで胚盤胞期の内部細胞塊から取り出した細胞で調製されたATAC-seq解析に用いるライブラリの品質に問題があるかどうか予備実験として数回解析を行った。その結果、ライブラリの品質自体に大きな問題はなさそうだが、こちらについてもある程度の細胞数を確保する必要があることが明らかとなりつつある。今後、まずは解析に必要な細胞数を割り出し、その後、胚盤胞期の異なるステージから取り出した内部細胞塊の細胞を用いたATAC-seq解析を行う予定である。 Nanogの時期特異的な機能を明らかにするため、これまでTet-onのシステムを用いたNanogの時期特異的ノックダウンができるトランスジェニックマウスの作製を試みたが、マウス作製のために樹立したトランスジェニックES細胞においてNanogのノックダウン効率を検証したところ、効率よくNanogの発現を抑えることが難しいことがわかったため、Nanogの時期特異的な発現制御を可能にする、別の系の導入を検討しているところである。
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